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ビュースクリーム:withコロナ時代のLARP

まずお伝えしておきますが、『ビュースクリーム』はマーダーミステリーではありません。まったく別ジャンルのゲームになります(このnoteでマーダーミステリー以外について触れることもあるんです)。


『ビュースクリーム』はロールプレイに特化したゲームで、Zoomなどのビデオチャットツールを使ってプレイするオンラインLARPです。
プレイヤー同士がアドリブでどのような関係を構築するのか、どのような物語を紡ぐのかを楽しむ作品です。
一般的なゲームと違って得点を競ったり、勝利条件を目指すといった目標はありません。そもそも得点も勝利条件も用意されておらず、いかにロールプレイとそこから生まれるストーリーを楽しむかという、結果ではなく過程に全力でフォーカスした作品です。
「演じる過程に注力したゲーム」なので、面白いと思える人はかなり限られています。
プレイ人数は3~5人、プレイ時間は60分~90分程度で、ほかのアナログゲームと比べると気軽にプレイできます。

LARPは「ライブアクションロールプレイングゲーム」の略で、TRPGから派生したプレイヤー自身がキャラクターになりきって遊ぶゲームです。TRPGでもプレイヤーはキャラクターを演じますが、テーブルトークという名前の通り、机を取り囲んで椅子に座ったままプレイしますし、キャラクターに合わせた衣装を着ることもありません。あくまで「キャラクターとして発言する」という意味において演じて(ロールプレイして)います。
LARPでは「プレイヤー=キャラクター」で、プレイヤーは全身でキャラクターを演じます。本格的なLARPでは衣装もファンタジーやSFなどの世界観に合わせたものを用意します。即興劇の役者のようなものです。ただし戦闘やスキルの使用などに関してルールがあって判定がある点は、あくまでも演劇ではなくゲームです。
対面型のマーダーミステリーも、プレイヤーがキャラクターを全身で演じるという点では広義のLARPといえるでしょう。最初期のマーダーミステリー『ミスカトニック大学に潜む者』はLARP団体が制作しています。
『ビュースクリーム』もZoomなどオンラインビデオチャットを通してではありますが、ゲーム中はプレイヤー自身がキャラクターになりきってプレイします。

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『ビュースクリーム』ではSFやホラーなどさまざまな世界観のシナリオが用意されていて、各回ごとにまったく別の世界観や設定、ストーリーをプレイします。同一のTRPGのシステムで遊んでも、シナリオによって内容が異なるのと同じです。
ただし基本的な構造はどのシナリオでも変わりません。プレイヤーキャラクターたち全員が何らかの緊急事態に直面し、孤立していて、その事態を解決して生還を目指します。
たとえば「エンジン制御室に閉じ込められていて、タキオン対消滅エンジンが暴走し始めている」、「第三貨物室にいるが、扉の外にいる未来からやってきた殺人機械が部屋へ押し入ろうとしている」などです。
お互いに会話はできるものの、直接ほかのキャラクターの元へ行くことはできません。そしてそれぞれがほかのキャラクターの緊急事態に対処できる解決策を持っています。
自分で自分の緊急事態を解決することはできず、互いに相手の協力が不可欠です。
また各キャラクターにはお互いの関係性(AはBを尊敬している、BはCを軽蔑している、AはCを愚か者だと考えている)が設定されていて、危機に関連した秘密を抱えています(殺人機械が出現するきっかけを作ったのが、実は自分であるなど)。
関係性と秘密はキャラクターをどのように演じ、ほかのプレイヤーキャラクターとどうコミュニケートするか、どのような物語を展開するかの補助ツールです。

解決策はそれっぽい内容ではあるもののそれらしいだけです。たとえば「EPR相関による対称性の破れで光子回路をオーバードライブすることができる」、「陽電子ロボットを再稼働させて圧搾マシンを操作させよう」といった解決法です。
ほかのキャラクターが抱えている緊急事態と提示される解決策は、ゲームが始まってそのプレイヤーが開示するまではわかりませんから、プレイヤーはアドリブでもっともらしい説明をひねり出す必要があります。そしてどんな緊急事態にも適用できるように、科学的な整合性や厳密さがぼやかされています。
「光子回路をオーバードライブすれば、殺人機械の演算ユニットを停止させることができるはずだ」といった具合です。誰も光子回路がどういったものか、殺人機械がどのような原理で動いているかなんて知りませんから、プレイヤーの創造性に委ねられています。
例を見ると科学知識やSFの知識が無いとプレイできないと感じるかもしれませんが、そんなことはまったくありません。解決策の内容はキャラクター設定に書かれているので、それをただほかのプレイヤーへ伝えるだけでかまいません。
それにもともと科学的でも具体的でもないので、間違っていると言われる心配はありません。

それぞれが問題を抱えていて、問題を解消させる解決策をそれぞれが持っているとなると、緊急事態に適した解決策を適用する、みんなが納得するもっともらしい説明を行うといったことで成功率が上がり、ダイスなどを使って成否を判定する……というのが一般的なゲームシステムとして考えられるでしょう。
しかし『ビュースクリーム』はまったく違っています。
解決策が成功するか、失敗するかはあらかじめ決まっているのです。どれに適用させるとか、どういう解決手法を説明できたかは成否に関係ありません。
そして成功する解決策の数はキャラクターたちが直面している緊急事態の数より常に少ないため、必ず生還できないキャラクターが発生します。単純な加減算でそこに不確定性は存在しません。

この点は『ビュースクリーム』がもっとも『ビュースクリーム』らしい要素です。
"キャラクター"は自分の生還、そしてできれば全員の生還を目指しますし、そのように演じるべきですが、"プレイヤー"の目的は必ずしもそうではありません。
ほかのキャラクターを生還させて、自分は船と運命をともにする……自キャラが死ぬことになったとしても、その方がドラマを楽しむには"おいしい"役回りかもしれません。

勝敗や目標がないという意味では『ビュースクリーム』は、狭義にはゲームではなく"遊び"です。TRPGやマーダーミステリーでキャラクターを演じることよりも得点や目標を目指す人にとっては、なにをすればよいかわからないでしょうし、なにが面白いのかはわからないでしょう。
ただ『マインクラフト』や『シムズ』がゲームであるならば『ビュースクリーム』もゲームです。現実からは切り離されていて、ルールも結末もあります。面白さをどこに見出すのか、いかに面白くするかがプレイヤーに任されています。

アナログゲームの醍醐味の1つはほかのプレイヤーとコミュニケートすることです。しかしいまは対面で集まって、TRPGやLARP、マーダーミステリーといったアナログゲームを楽しむのは難しい状況です。
競争や競技と捉えるとゲームではないため、楽しめる人を選ぶ作品ではありますが、気軽にオンラインでLARPを体験できるという意味で、ハマる人は本当にハマる作品でしょう。
また即興劇にかなり近いので、観るゲームとしても十分に成立するはずです。

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