【世界一愛おしいOPトーク】アフターシックスジャンクション【ラジオ感想】
先日、あるラジオ番組でアクシデントがありました。といっても本番トラブルや放送事故、というわけではなく、メインパーソナリティがインフルエンザに罹患してしまったため急きょお休み、という、まぁ、頻繁にあるわけではないけど、十分対応可能なアクシデントです。
ただ僕は、このアクシデントがきっかけで重要な出来事が起こったと感じ、それに対して勝手に「俺も負けてられねぇ!」と思わされたのです。
あまりに心を動かされたので、ちょっと書こうと思います。
※本記事で登場するアトロクについてご存知の方は、項目2からご覧になってください。
1.ラジオ番組「アフターシックスジャンクション」について
あるラジオ番組というのは、平日18時からTBSラジオをキーステーションとして放送されている「アフターシックスジャンクション(通称アトロク)」という番組です。メインパーソナリティは宇多丸さんという方で、RHYMESTERというラップグループのメンバーです、RHYMESTERについて語りだすとあっという間に文字数制限に到達してしまうので割愛しますが、ラップ以外にラジオパーソナリティとしても15年近く(FM時代含む)第一線で活躍されているベテランです。
個人的の宇多丸さんの魅力の一つとして、一つの話題に対してのコメントが的確かつフレッシュである、という点があります。時事問題やゲストの方の話題、果ては何気ない駄話の内容を瞬時に分解、再構築をし言い換えることで、我々リスナーは「なるほど、そういうことか」と納得したり、「その切り口は新しい」と感心したり笑わせられるのだと思っています。要は、宇多丸さんが話をしているだけで面白いんですよね。
他にも魅力はたくさんあるのですが、それについて語りだすと文字数制限(以下略)
この番組はメインパーソナリティの宇多丸さんのほかに、若きTBSアナウンサー男女5名が日替わりパートナーとして出演しています。
月曜日は熊崎風斗アナ、
火曜日は宇垣美里アナ、
水曜日は日比麻音子アナ、
金曜日は山本匠晃アナ、
そして、木曜日は宇内梨沙アナが務めています。
アナウンサー陣のお人柄も番組の見どころの一つになっています。熊崎アナは型を大切にするタイプだったり、宇垣アナは見た目と裏腹のパンチ力のある語彙を用いたトーク、日比アナはお酒好きだけど、番組いちの真面目さ(番組内のアナウンサーインタビューの内容による比較)が特徴、宇内アナは気合い勢い一発タイプ、山本アナは唯一の三十代で頼りになる……ところもあれば、闇を抱えていたり、とみなさん応援したくなる方々です。
このような魅力的な方々が三時間、カルチャー情報をてんこ盛りで紹介してくださっています。この番組は人間が一日に摂取すべき文化量の数倍の情報を日々放出しており、文化過多、ひいては幸福過多の原因となりかねない、大変危険な番組です。大好きです。
2.宇多丸さんインフルエンザになってしまった!
2019年2月8日。アトロクは、宇多丸さんインフルエンザにより不在という状況で始まります。この日は木曜日で、宇内梨沙アナが担当でした。OP(オープニング)トークから19時までの間は、月曜日パートナーの熊崎アナもヘルプで駆け付けてくださいました。
結論から言いますと、この日のOPトークは、僕が人生で聴いた中で最も愛おしいOPトークでした。
というのも、宇内アナ、熊崎アナの「これはやばい!なんとかしないと!」「がんばって盛り上げたい!」という心の声がダダ漏れのトークだったのです。
普段、アトロクのOPトークは台本上だと10分(と以前放送で話していた気がする)の尺で、だいたいしゃべり過ぎちゃって15分くらいなのですが……。具体的に言いますと、もう笑っちゃうんですけど、OPが始まって3分の時点で宇内アナと熊崎アナがこんなやりとりをなさるんですね。
宇内「……熊崎さん」
熊崎「はい」
宇内「まだ3分しか経っていないっす……」
熊崎「あら」
宇内「あら(笑)」
熊崎「宇多丸さんこの時間(OPトークのこと)、けっこう喋り倒して予定時間を大幅にオーバーして結構かつかつになるってもう、いつもの流れじゃないですか。逆にそれスゴイな、って感じしますよね」
宇内「スゴイですよね。今やっと4分です」
熊崎「4分」
(やや沈黙)
宇内・熊崎「あははははwwwwww」
この日は開始3分で宇内さんは、マラソンで言うところの「あと残り何キロだろう……」と考えたくなる状況になってしまったんですね。
その後、5分、7分の時点で宇内さんは経過時間を口にしていました。
ここからも宇内さんが準備していたトークのネタを披露したのですが、いつものようには盛り上がらず、眼鏡姿のスタッフを宇多丸さんと見間違えたりリスナーからのメールを1分間で3通紹介したりと、宇内さんと熊崎さんの脳みそがガリガリと異音を立てながら高速回転しているのが手に取るように伝わってくるわけです。
突然襲ってきたピンチ。経験不足という、どんなに努力していても超えられない難敵。これから3時間、番組をなんとかしなくてはならない。
と、考えたところで、思いました。
これ、俺じゃん!
っていうか、誰もが通る「あの時」じゃん!
3.世界一愛おしいオープニングトーク
今更なのですが、ここからちょっと偉そうな上から目線風なことを書いてしまいます。お気を悪くする方がいらっしゃったら申し訳ないです。もちろん、文章の内容はポジティブです。
僕はもちろんラジオパーソナリティとしての経験なんてないです。ですが、この放送を聴いて「これ、俺じゃん!」と思ったのです。
「自分が頼りにしていた人が突然いなくなる」
「俺がどうにかしなくてはならない」
「それは俺にしかできない」
このようなある種の極限状態が、自分にも20代の頃にありましたし、組織に属して生活してきた多くの人が、一度は体験することだと思います。
そしてそれは前もって準備されたもの(例えば引継ぎが事前にあるといった)ではなく、突然降りかかったアクシデントであればあるほど、後々の人生に大きな影響を及ぼす「あの時」として心に刻まれるんじゃないかなぁ、なんて考えているわけです。
もちろん、一人の人生の中でもそう何度も起こる出来事でもないです。何度も起きたら「あ~はいはいまたこのパターンね」となりますからね。
☆彡
そんな出来事が、誰かの人生のターニングポイントになりかねない瞬間が、先日のアトロクの生放送中に起こったのです。
☆彡
ああ、今、この若きアナウンサーたちの中に、とってもとっても大切なことが起きている。今お二人は、自分の実力以上のことを要求され(しかも実力以上のことを要求されたことに、その瞬間に改めて気づかされ)、必死で戦っている。
僕はこんなにOPトークを愛しく思い、誰かを応援したくなったのは初めてのことでした。感動しました。
ちょっと意地悪なことを書いてしまうんですけど、この日が木曜日だったことも、感動の要因だった気がします。
もし火曜日だったら、宇垣アナお一人でした。これまでの放送出の宇垣さんから想像するに、たぶんOPトークは出来てしまうと思うんですね。また、もし水曜日だったら。日比さんも相当混乱されるでしょうが、日比さんなりのOPトークを作り上げられそうな気がします。ただ、アクシデントに対応出来る、これはすなわち、それは普通の放送なんですね。もし火曜日や水曜日だったら、今回のような心に刺ささるOPトークはなかったんじゃないかな、と思います。
※金曜日については宇多丸さんがいない状況のOPトークを聞くことが出来ます。にわかに信じ難い狂気のOPトークでした(笑)
この日の宇内アナと熊崎アナのやりとりで、以下のようなものがありました。
熊崎「我々はだからこう、普段ちょっと過信していたというか、宇多丸さんありきでやっていますから」
宇内「いやぁ、本当そうですね」
熊崎「なんか面白い番組を提供できているんじゃないかという」
宇内「うん、そうそうそう!そう!」
熊崎「その一助になっているんじゃないかという、僕ら過信があったと思うんですよ」
宇内「すごく過信していた、自分を」
こんな切ない、しかし明らかな成長である心情の吐露が聴けることなんて、ありますでしょうか。
これは、演劇で例えるなら、セリフではない、舞台裏の言葉だと思うんです。だからこそ、僕はこのOPトークは感動し、「がんばれ!」と心から言いたくなったのです。
まぁこの話の後、宇内アナが「でもやっぱりパーソナリティ経験者ですから、熊崎さんは」とご自身の責任を軽くしようとしたり、熊崎アナは「先輩後輩とかじゃないんですよ」「宇内さんのこと後輩と思っていないですし」と言いつつ宇内さんにタメ口で話していたり、ほほえましくも笑いがこらえきれない場面が多々あるのですが(笑)最高でした。
宇内アナと熊崎アナのご両名は、これから番組に接する姿勢が間違いなく変わってくると思います。「私が、俺が、番組を盛り上げるんだ」という熱意が、直接目に見える形で現れるのか、あるいは表面的にはわからない形でじわじわと溜まっていくのかわかりませんが、いつの日か爆発する時が来るのでしょう。
自分が取り組むことに対して「俺がやるんだ」という姿勢になった人ほど成長するものはないと思います。
宇内アナと熊崎アナ。2019年は飛躍の年になるのかも……!期待しています!素晴らしい放送をありがとうございました。
……。
大変偉そうなことを言ってしまいました。「じゃあ俺はどうだ。この二人のように頑張れているか」と背筋が伸びる思いです。
最後に、一番重要なことを書きます。上記の文中、「☆彡」に囲まれた部分、すなわち宇内アナと熊崎アナお二人の番組中の心情は、完全に僕の予想です(笑)
事実とは異なっている可能性もあります。
言ってしまえば、僕はお二人の心情を勝手に想像して、その勝手に想像した心情に一人で感動しているんですね。バカなんですかね。(でも、もしかしたら本当にそうなんじゃないかな、結構当たってるんじゃないかなとは思っています)
くれぐれも「この文章中に書かれたことはすべて事実である」と誤解なさらぬよう、お願いします。
上記の放送は期間内であればradikoで、またはラジオクラウドでも視聴可能です。PC、スマホアプリに対応していますので、ぜひ聴いてみてください。