
アートでつくりだすみんなの居場所
【プロフィール】
▼NPO法人CORUNUM代表理事 桐原 知希 氏(写真右)
きりはら・ともき。2002年生まれ、埼玉県朝霞市出身。ボランティアを若者主体にするため、2021年に学生団体CORUNUMへ参画。後に代表理事に就任し、企業連携や「メンバーのやりたいことを実現させる」想いで、団体のNPO法人化を実現。多世代交流会を全国へ普及させ、100年続くボランティア団体にするべく勤しむ大学4年生。
▼同 子ども部部長 相田 咲音 氏(写真中)
あいた・さのん。神奈川県逗子市出身。2003年生まれの大学3年生。多世代交流会の企画から運営まで、子ども部部長として全体をマネジメントし、同交流会の開催施設数を3倍に拡大。誰かにとってひとつの居場所となるような交流会をめざしつつ、それがチームメンバーにとっての居場所となることも目標に活動中。
▼日本青年団協議会会長 中園 謙二(写真左)
なかぞの・けんじ。1980年生まれ。岡山県倉敷市在住。2008年、岡山県青年団協議会に入会。日本青年団協議会役員を経て、2020年より同会長。
YouthPost2024年8月号6p「リーダーと語る」
社会の最前線で活躍する方と語り合い、あらゆる角度から地域をみつめる
本企画。今回は東京都内でアートを通じて多文化共生社会の実現をめざすNPO法人CORUNUMの2名と対談した。普段は出会わない者同士を結びつける若者たちの活動に迫る。
◆アートでつながる
(中園)活動目的を教えてください。
(桐原)当初は学生団体 として2021年に誕生しました。アートを通じたコミュニケーションをテーマに人と人とがつながり合う共生社会の実現をめざしています。国籍などの背景や価値観が違う者同士が同じ言葉を話しても、異なる意味やニュアンスで使われ、受け取られることがあるので、アートを切り口に根底の部分同士でつながれたらと考えています。
(中園)どのような活動なのですか。
(桐原)一つ目は、マイノリティアートの普及活動です。以前から障害者アートが広まりつつありますが、逆に世界を狭めていないかと課題感を持っています。障害者だけ、または健常者だけが輝くのではなく、色々な価値観や考え方、伝えたい想いを色々な形で発信できる社会をめざし、障害者の方や海外の子どもなど多様な背景をもつ人たちが描いた絵の展覧会を開催しています。またその絵から商品デザインを企画し、興味のない人にもアートを通じて障害者との共生という社会課題へ携わってもらおうとしています。
もう一つは各地域の方と連携し、増え続ける高齢者の福祉施設などで、反対に減り続ける子どもが遊べる場所をつくり、普段関わることの無い人たちが世代間交流する事業です。これらは運営のほとんどを学生が担っています。
(相田)この多世代交流会では、2歳から90歳までの幅広い年代が福祉施設に集まって、一緒に絵を描くほか塗り絵やゲームをして「これは何を描いたの」など対話を図りつつ交流しました。企画は私たちが考えますが、幅広い年代が楽しめるものになるよう、毎回模索中です。普段口数の少ない高齢者の方が、前回の交流会でつくった塗り絵カードを大切にお持ちいただいたことには嬉しくなり、やりがいを感じました。
(中園)みなさんはデジタルネイティブ世代だと思っていましたが、つながりや対話が大事と伺い、心強く思います。また多様な背景の人を巻き込んでいくのも、青年団と近いですね。
◆SNSと対面の良さ
(中園)新しいメンバーの勧誘方法は。
(桐原)立ち上がった時期がコロナ禍だったので、SNSを活用して勧誘してきました。最初は5人でしたが、私が入る頃には50人くらいになり今では約150人です。
(中園)青年団も後継者問題には悩まされます、SNSで規模を拡大できているのはすごいことですね。
(桐原)やりたいこと、やってみたいことを持つ学生がオンライン上で集まっています。私たちはその一つひとつを実現することで団体をつくっています。
(相田)オンラインの強みは、海外など遠くの人たちとつながれることです。定期的にオンラインでミーティングを開催していますが、昨日は対面で開催しました。いざ対面すると、会ってみたから話せることや新たに知ることも多く、良いよねと定期的に対面開催しています。
(中園)若者が社会に関わるのが嫌だとか、対面はダメでオンラインを好む、という固定観念は間違いと思わされますね。
◆幅広い対話が学びに
(中園)今後に向けて一言お願いします。
(桐原)自分と共通部分が多い人だけでなく、背景が異なる人とのコミュニケーションが大切と感じます。それを通じて学生がやりたいことを提案し、実現できる団体にしていきたいですね。
(相田)私は元々アートが好きだったのですが、交流会や展覧会事業を通じて人とのかかわりが暖かいものと学び、実感できました。今後は、活動・年齢・地域の幅、参加者の背景などを広げていきたいと思います。
(中園)背景が違う者同士の交流の意味を再確認できました。アートを通じて色々なことに興味がわいて変わっていくことは私たちがめざす社会教育そのものと感じます。