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あいうえお作文【くけ】

「クケケケケケ」

ー士郎のわらい方は独特である。ー


「見た目は格好いいのに笑い方が悪魔だぞ」

治郎がお猪口の酒で口の渇きを癒しながら言った。


「俺ら英雄なんだから、治した方が良いって。」

自称、不死身の藤三は楽しそうに注意をした。

「人気が出れば『キモカッコイイ』とか言われるってクケケケケケ」

二人に言われても士郎は気にしていない。

「…。」

「いや、やっぱりキモいって。」



ー 三人のおっさん達による月に一度の正義活動報告の宴席である。ー

※英雄と思っているのは、今はまだ本人達だけ。

変な笑い方をする黙ってさえいれば
イケメンちょい悪オヤジの喜次士郎。

通称『きじ』

温和しく、いつも冷静で自分の嗅覚を信じて判断する三人の中では一番長身の犬養治郎。

通称『いぬ』

いつもノリだけはいい小柄な木下藤三は
豊臣秀吉が好きで自ら
『さる』と呼んでくれと言っている。


ー 英雄になる夢を持ち続ける三人である。ー



ー遅れて来た『きじ』が左目の眉から頬にかけて三本の切り傷を負っているので訳を聞くと突然笑い出したのである。ー

「よくぞ聞いてくれた。俺様の武勇伝をお聞かせしよう!クケケケケ」

「だから…笑い方」

ー昔から笑い方については、注意されている。
笑い方が生理的に受け付けられないとフラれた事も一度や二度ではない。
しかし本人に治す気持ちはなさそうである。ー

「まさに死闘と言っていいだろう。
ここに来る少し前、辺りが少し暗くなりかけた時・・・」



『きじ』は傷を負った経緯を語り始めた…


女性の悲鳴を聞くと『きじ』は声の聞こえた方角へ走った。

立ちすくむ中年女性を見つけて声を掛ける。

「どうしました?お嬢さん?」

突然、声を掛けられ驚いたが、声を掛けたのがイケメンだったため女性はポッと思わず頬を赤らめた。

恥ずかしそうに話すので聞き辛かったが、
どうやら強盗が入り、目の前で強引に大切な物を盗まれたようだ。

勇気を出して追いかけたが泥棒は塀に跳び登り細い塀を凄いスピードで走って逃げた。

その姿はまるで妖怪のようだったと言うの



泥棒を捕まえれば英雄っぽい。
不謹慎だが『きじ』は少し嬉しくなった。


「そんな、自分で追いかけるなんて危険ですよ。クケケ。私が見つけ出し、奪われた物を取り返してみせます!クケケケ。」

「いえ、大丈夫です…。」女性はかなり怯えている。

「私が来たからには安心して下さい。クケケケケ。」

「いえ、すみません。ありがとうございました。では。」

女性は後ずさりしながら去っていった。

「よっぽど恐ろしくて気が動転してしまったのだろう。だが、犯罪者を正義の味方が見逃す訳にはいかない。泥棒猫野郎を探さねば。クケケケケケ。」

ー『きじ』の嬉しそうな笑い。
それこそが女性が逃げた本当の理由だと、
彼はこれからも一生気づくことはないのだろうー





「それからどうした?」

『さる』は興味深そうに、『いぬ』は興味なさそうに『きじ』の話の続きを待った。


「見つけたさ。身の軽い奴だった、
屋根の上で俺を待っていたかのように、こちらを睨んでいた。それは見た者を目で殺すような鋭い眼光だったよ。」



「やり合ったのか?」

「勿論。何の為に追いかけたか分からないじゃないか!」

「ほう」 

ー『いぬ』が初めて反応を示した。ー

「そ・そりゃそうだな。俺だってそこにいたら闘って宝を取り返すさ」


ー『さる』が言う。ー

「俺は相手の土俵で勝負してやる事にした。」

「どうしたんだ?」

「塀をジャンプ台にして屋根の上に登ったさ」

「すげ、いや俺もそれくらいはどうって事ねぇ。」

「俺が屋根に登るなり、奴は攻撃して来た。
鉄爪を隠してやがった。」

「それはやばいな」



「いつもなら難なく躱す所だが、
屋根の上では足場が悪い、一撃を喰らってしまったよ。」

「なるほど、その時の傷か・・。」


「勿論、怯まず奪われた物は奪い返したよ。
俺の反撃に奴もかなりビビってたから、逃がしてはしまったが、しばらくはおとなしくしてるんじゃないかな。」

「ひとつ、悪を懲らしめたな」

ーさるが興奮して言った。ー

「奪われた魚はどうした?」

ーいぬが言った。ー

「う、まあ。被害者の彼女もいないから、その辺に…え?何故?」

「手が生臭い。そして傷を見れば何となく分かる。」

「???」
さるは二人を交互に見た。



ーその時、いぬが想像した犯人像がこれであるー





そして、実際の犯人である。


「ま、それはともかくだ、さっきの話だがな猿」

興味をなくしたいぬは、きじが来る前にさると話していた会話に戻す。

「あー、エコ活動の話だろ、環境や世の中に優しい活動なんだ。世界のためだ、やるしかないだろう」

「それだがな、考え方は素晴らしく反対する事もないが、どうもその名の通り『依怙』の臭い・金の臭いがプンプンする。」

「そうか?」

「ま、いいが、数字だけには騙されるなよ。
数字は操る者の思惑ひとつでどんな姿にも見せる事も出来き、不思議と説得力を持っている。聞く側が慎重に数字が示す真の意味を見極めなければいけない。」

「分かった。気を付けるよ。」

「クケケケケケ、ところで俺の武勇伝は?」

「それは、分かったからもういい」


ーエコの話は時代の流れなので、ある程度知識が貯まるまで書きますまい。ー

【けこ】に続く


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