エンディングノートから始める相続対策
エンディングノートは意味がない?
週刊誌やテレビの特集を見て、エンディングノートを作ってみようと書店などで購入してみたはいいけれど、意外に書くことがいっぱい・・・。
やっとすべてを埋めたころに目に飛び込んできたのは、「エンディングノート」には「法的効果(強制力)がない」という見出し・・・。
そうです。エンディングノートには法的効果(強制力)はありません。
ですので、エンディングノートを作成されたご本人がお亡くなりになった際、エンディングノートを金融機関や法務局にもっていっても、預貯金の引き出しや登記手続きはできません。
じゃあ、何のためにエンディングノート?
1.「意思表示」や「コミュニケーション」が困難になったときに備える
エンディングノートに書いた内容はすべて「希望」です。葬儀の希望、終末期の医療に関する希望。財産の分け方についても希望です。
ですが、遺言書に比べて比較的、作成に心理的なハードルが低いエンディングノートが作成されているだけで、例えば認知能力の衰えが顕著になってきたとき、ご病気あるいはお薬の影響でご本人の意思が真意なのか判断に悩むとき、ご家族(あるいは、医療従事者)にとってひとつの判断材料となります。
2.遺言書作成の準備
「相続対策」にせよ「相続税対策」(ここでは分けさせてください)にせよ、一番初めにすべきことは、①相続人の確定と②相続財産の確定です。
エンディングノートは相続対策のファーストステップ
ここで一つお尋ねします。
「なぜ、遺言書を作成するのですか?」(しかも、時にはお金を払ってまで!)
おそらくは、ご家族にもめてほしくないからですよね?
つまり、遺言書はご自身の死後に「生じるかもしれない争族に対応したもの」である必要があります。その「リスク」を洗い出すのにもエンディングノートは役に立ちます。
1.相続人を確定する
相続人がいったい誰なのか。このあたりは、週刊誌やエンディングノート、ネットなどで簡単にお調べいただけると思います。
①配偶者(必ず) ②直系卑属(子、孫)
③②がいなければ直系尊属(親) ④②も③もいなければ兄弟姉妹
2.財産目録を作成する
お手元のエンディングノートをもとに財産の一覧を作成してみてください。
【チェックポイント】
① 金融機関の口座の数は適切ですか?→口座の統合を進める
② 遠方に休眠不動産はありませんか?
(特に、地方のご実家や田畑)→相続人の中に活用できる方はいますか?
③ 趣味で集めた骨董品や絵画装飾品はどうですか?→動産の評価はもめる
財産目録の作成が済んだら、ぜひ相続財産の「断捨離」(スリム化)を検討してみてください。
また、使用していないSNSやネットサービスなどの整理も重要です。
口座を減らせば手続きは楽になるし、不動産や骨とう品などを現金化すれば分けやすくなります。
遺言書を作成するときは「奥様(配偶者)には自宅と生活資金を遺したい」など必要な人に必要なものを遺しましょう。これが最優先です。
「相続対策」とは、それを他の相続人に納得してもらうことです。
さいごに
エンディングノートには法的効果(強制力)は認められませんが、①あらかじめ重要な判断が必要な時に備える、②遺言書作成の準備、③死後の手続きへの負担を軽減する、そして、ご自身の人生を振り返ることでご自身にとって何が大切なのか、いわゆる「人生の棚卸」を行うことができます。
エンディングノートには決まった書式や、市販されているものに書かなければいけないわけではありません。「遺言書のように法的効果がないから意味がない」とおっしゃらずに、書いてみることをおすすめします。