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複数の遺言書が出てきたら・・・

長い闘病の末と言っても、やっぱり死は突然訪れます。

初七日(あるいは、四十九日)までは、心の整理もつかぬまま、なんだかんだとバタバタしてしまうものです。

そんな家族のことなぞお構いなしに、お役所は「準確定申告(4カ月以内)」「相続の承認・放棄(3カ月以内)」を要求します。

準確定申告も相続の承認・放棄も、故人の財産を把握しなければできません。必要な書類などを探しに個人の部屋を片付けていると・・・。

ありました。遺言書・・・。

「ないよりかは、ましか・・・」と思っていると、今度は仏壇の引き出しから。

数分後には今度は箪笥の引き出しから・・・。

「えっ?」「まさか・・・」

卓袱台の上の3通の自筆遺言書(後日、公証役場と法務局に問い合わせたところさらに2通)。

合計5通の遺言書。さて、どうしましょう・・・。

1.検認

遺言書は何通(何回)書いてもOKです。

ですので、当然このケースのように複数枚の遺言書が出てきてしまうこともあり得ます(さすがに5通は多過ぎですが)。

公正証書遺言もしく法務局での保管制度を利用した自筆証書遺言以外で、封のされている遺言書は、家庭裁判所での検認が必要となります。

2.自筆遺言 VS 公正証書遺言

公正証書は作成に数万円~の費用がかかります。

公証人への報酬というかたちになりますが、この公証人は元裁判官や検事が勤めているケースがほとんど。つまり、法律のプロが作成にかかわることで、法的に問題のない遺言書が作れます(裁判になったケースもありますが)。

なんだか、自筆証書遺言よりも強そうですね・・・。

しかし、遺言書のルールでは、日付の新しいものが優先されます。

ですので、作成の形式に関わらず、日付順に並べて、新しいものが最も効力を有します。

3.有効なのはどれ?

ここで、よく勘違いされる方がいらっしゃいます。

新しい遺言書が優先されるのは、先に書かれた遺言書の内容とぶつかるところだけです。

たとえば、

1通目に「自宅は長男。預金は全額妻に相続させる」

2通目に「自宅は次男に相続させる」

とあった場合、自宅は次男。預金は変わらず妻に行きます。つまり、最新の遺言書1通のみが有効とは限りません。

また、遺言書で言及されていない財産については、やはり相続人全員による遺産分割協議により誰が相続するかを決めることになります。

さいごに

遺言書を書く方へ

複数の遺言書を残すこと自体は、何ら問題ありません。

しかし、後日新しい遺言書が見つかることで生じるトラブルを考えると、あまりお勧めはしません。

書き直したい。付け加えたい。などのときは、①古いものは破棄する。あまり良い方法ではありませんが、②「これより古い遺言書はすべて無効とする」の文言を入れる方法があります。

ご家族(相続される方)へ

昨今の終活ブームのお陰(?)で、遺言書を書く方は確実に増えています。

財産目録作成や名義変更に必要な書類を探す際には、併せて遺言書も徹底的に探してみてください。また、それぞれの生活がお忙しいでしょうが、書類探しや部屋の片づけは、できれば相続人の方が複数人で行うことをお勧めします。

ご相談を受ける中で、「もしかしたら兄が遺言書を隠したかもしれない」とか、「母の大事にしていた指輪がない」とか耳にすることが少なからずあります。

円満相続には、我慢と面倒は避けられませんね・・・。

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