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「サクマ&ピース」は普通の街ぶらバラエティではない

高校卒業後、福島を離れて活躍する、テレビプロデューサーの佐久間宣行、アルコ&ピースの平子祐希

大人になったふたりが、福島を改めて見つめたら…
福島には何もない?もしかしたら何でもあるのかもしれない…?

愛ある地元いじりをしながらふるさと・いわきを旅して、福島が誇る日本を代表するヒト、モノに出会い全国に広まるようにプロデュースする街ぶらバラエティです!
ロケ10時間で4本撮りという過酷なロケの中、続々と登場するいわきのすごい人、怪しい人?、ぶっ飛んだ人?にさすがの2人もタジタジになりながらも、次々とプロデュース!

公式サイト引用の番組紹介)

芸能人が30分番組で地元の縁ある3つの場所をまわる街ぶらバラエティ。

お昼の番組でよくあるものだし、だいたいそういう番組は画面にかじりついて見たり録画してみるものではなく、なんとなくテレビをつけていたら流れてくるようなイメージがある。
誰が出ていても内容に差異はなく、日常生活のBGMのような印象。
それが悪いとは言ってないが、そんなイメージを持っていた。

しかしサクマ&ピースを見ている私は、一言もコメントを聞き逃すまいという気概で30分間ずっと画面にかじりついていた。

私的「サクマ&ピース」の面白かったポイント

1.映えを求めていない

画面にうつるのは終始、180cm越えの40代男性ふたり。
巡る場所も観光地ではなく、地元のスーパーや母校という決して絵的に映えるところではない。

だからこそ、フットサル場でアゴのせしているカラーコーンが印象に残り、それを抱えて駐車場を歩く人は切なく見える。

人気の二人が出るから、Tverで全国に見られるからといって気どらないローカルさがとても心地良い。

2.演者目線と裏方目線がはっきり分かれている

お笑い芸人の平子さん、テレビプロデューサーのサクマさん。
ただの肩書きではなく、番組内でずっとその立ち位置を貫いている。

普段見ている風景が違う2人が街ぶらをすると、普通なら何事もなくクリアしそうな場面でも突っかかりが生まれ、それは番組の構成上必要なフリというわけでもなく、ただただ面白いラリーが増えているだけなのがまた良い。

例えば冒頭で服装をいじる場面。どこかのロケだと誰かの風変りな恰好をいじる時間が、「プロデューサーがスタイリストをつけている」という新鮮ないじりに。

食リポのくだりでも、ただの食リポの初心者と上手い人ではなく、演者代表の平子さんが佐久間さんに「プロの食リポ」を見せつけるという1つの面白いシーンになっている。

この関係性が終始つづき、ある場面ではプロデューサーが演者を体験してそのすごさに気付き、またある場面ではプロデューサーが「プロデュース」という本業を少し発揮することになり、全体的に平子さんは「演者代表」として振舞うというのが、立場がはっきりしていて見ている側も笑いやすい。

3.視聴者に近い感覚で展開する

出演者が完全に番組制作側にいて、スタッフと一緒に番組を成功させよう!という雰囲気は、現場にとっては必要で重要だとは思うが、どこかこちら側と一線を引かれているような感じがして親近感を持ちづらい。

この番組のはじめでは、ロケのスケジュールのハードさや企画段階の話など、がっつり番組制作側の話が出ており、それが少し「水曜どうでしょう」のような雰囲気を感じさせたりもする。

水曜どうでしょうの3つのモットー「低予算」「低姿勢」「低カロリー」にもあるような、裏側をがっつり見せて、出演者が制作側と同じ目線で話し、全体としてゆる~く進む感じが好きなのだが、「サクマ&ピース」からはそれと同じような空気が出ているのは東北のローカル番組というのも関係があるのだろうか。

4本撮りを感じさせないようなプロ意識も勿論素晴らしいと思うが、裏側を視聴者に共有して同じ目線で楽しめるタイプの番組はとても愛着が湧いて好きだ。

ローカルな〇〇は、触れるきっかけが必要

私が「サクマ&ピース」を見ようと思ったきっかけは、「佐久間宜行のオールナイトニッポン」で佐久間さんが番組が出来上がる経緯をこまかくお話していたのを聞いたことだった。

物事の背景を知ると、自然とそれに関心が湧く。
この番組の場合だと、(急に福島中央テレビからメールがきてプロデューサー側もしてくれと言われたけど出演するなら違う人にしないと面白くないし作家を誘って、、)といったもの。

番組が見れるまでの背景を聞いたことで、この番組の制作スタッフには福田さんというANNの構成作家もしている方がいて、撮った映像を見てみたらめっちゃ面白くて、という佐久間フィルターをガンガンに通した面白そうな番組のイメージが自分のなかで出来ていて、そうなるともう現物も見るしかないという気持ちにさせてくれる。

私自身も大学時代から滋賀県の〇〇を発信!といったローカルな魅力発信を考える機会が多くあったのだが、その際も一番の悩みの種は「そもそも興味を持ってもらえない」「知ってもらうきっかけがない」ことだった。

知名度のある人を仲間にするというのは、考え易い解決策ではある。
しかし、有名人というのは一つのツールでしかなく、その有名人のもつ発信力のポテンシャルを引き出そうとすると、その本人が「発信したい」と思うように努力するしかない。

番組制作の序盤で佐久間さんを制作側にいれようとした福島中央テレビの方々は、本当にプロデューサーをしてもらおうとしたのではなく、佐久間さんにこの番組を「じぶんごと」として捉えてもらうための策略だったのかもしれない。

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