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普通自動二輪車免許(2段階編②)

今日は広いところで運転してみよう!

教官A「今日は車が練習しているコースを走ってみましょう。」

車とバイクの教習場はだだっ広い敷地内に完全に分離・併設されている。そして自動車学校だからということなのか、それぞれが検定コースをも兼ねている。狭いバイク教習場から飛び出して、だだっ広い自動車教習場をいっちょ走り回ってみましょうのコーナーです。よりリアルなストリートを感じられて効果はバツグン◎

基本的には先導する教官についていくのだけど、これがまぁ楽しい楽しい。
バイク運転のなんと楽しいことか。珍しく夜間教習なのもムーディーで◎

なんていうか、イイ。

公道に似た広さの箱庭で感じたこと

道が広いとそれだけで気分が変わる。そこまでスピードを感じなくなる。我が母校のバイク教習ゾーンはほんと箱庭だもんな。Youtubeで教習動画見るの好きなんだけど「車もバイクも同じ場所で同時教習」してるところの方が多いっぽい。教官はストレスフルだろうけど実践的でいいね。

バイクって意外と信号そのものを見逃しそうになる。運転中の目線が下がっているということか?そして道路の余白というか、空いてる部分がちょっと怖い。車線の真ん中を走ると特に感じる。両サイドの余白から車だのバイクだのチャリだのが「ヌッ」と侵入してくるイメージ。おっかなびっくりで右左折もしどろもどろ。そんなことをしている最中にも当然自動車の教習は行ってるわけで、そのリアルな邪魔くささもよい。

ときたまなんだかいやになる

ところで、おぼつかない運転をする教習車を眺めていると「バイクって遊びなんだよね」と言い放った教官Xの言葉を思い出した。車の教習は必要に迫られて行うわけで、バイク免許なんて無くたってまったく不自由しない。各々事情はあろうが、少なくとも俺は趣味…というか独身病の末期症状である。

コケりゃ大怪我間違いなし。常にヘヴンズドライブでドライバーズハイになってSAでソフトクリーム舐めてる未来がそんなに輝かしいか。

されど不必要なことを「楽しそうだから」って理由で取り組めるのは幸せなこと。いや、不必要だから楽しいのか?せっかく自分で選んで始めたことだから長く付き合いたい。俺は「自分で選んだもの」にすごく執着するタイプらしい。

教官Aのテールランプを追いかけて40km/hを出した。
風が、身を切っていた。

教官A「今日はぜんっぜんエンストしないですね。1段階のみきわめもこんぐらいでやって欲しかったですね。」

そんときから比べてぼくは成長したのです。やっぱりバイクは楽しい。

卒検前日のダブルヘッダー

教習はみきわめ含めてラスト2回。待合室で、同じ状況のバンアパの原さん似の教習生と「あっという間でしたよね」「なんかちょっと寂しいっすよね」「分かる分かる」などと話した。

教官Aに呼び出される。

「なるべくなら本日以降、最速で卒検まで持っていきたいです。お2人とも、それぞれ空いてる日程を教えてください。」

結果、その日から数えて2日後に連続教習を行って2段階のみきわめまで終え、その翌日には卒検を受けることとなった。1988年のプロ野球パリーグのペナントレース最終日に行われた近鉄バファローズvsロッテオリオンズのダブルヘッダーを思わせる日程である。(ミラクルバファローズと呼ばれた。優勝できなかった。)

ああそうか。これからの時期は高校生で混むのか。そう考えると合点がついた。「後がつかえてるし、早いとこ卒業して頂かないとならないですもんね。」と述べると珍しく教官Aも「フハハ!」と笑っていた。原さんも笑っていた。

ダブルヘッダー 1戦目

初めてみる教習生だった。見るからに最近の若者って感じのセンター分けだった。当世流でカッコいいじゃないの。JSBと呼ぶことにする。彼も俺と同じ日程らしい。

なんとなく緊張する。ひとつひとつ確かめるように行う。

いつも通り待機場から所定の位置までバイクを押して運ぶ。

ハンドルをまっすぐにして、車体を起こして、サイドスタンドをはらう。

バイクに跨って、ミラーを調整したら、キーを捻る。

Nに入ってることを確認したら、セルスイッチを押して、エンジンをかける。右足をついて左足で1速に入れる。

半クラの位置を確かめる。車体ごとに微妙に違う。

暖気?というのか何回かアクセルをふかしてみた。
アクセルをあおってクラッチを開けていく。

…というような行程を丁寧にやった結果、無事エンストした。
「チクショウッ」みたいな音を立ててバイクが気絶した。

教官Aも「幸先悪ぃな…」と呟いていた。

検定コース走っていいですか?ダメ?

こんなんじゃ卒検どころかみきわめも危ういぜと思いつつ教習をこなす。
踏切・S字・8の字…とこなす。少なくとも検定課題はノーミスなんだから自信を持とう。

とかなんとかやってると教官Aから「坂道に来てください」と無線が飛んだ。なんで?と思いつつ向かうと「坂道の途中でバイクを安定させてください」と来た。

なんて頼もしい背中。吉野家に向かう際の父親のようだ。

…?

坂道の途中で停止させたバイクを、アクセルと半クラの調整で同じ場所に留めるという練習である。(もちろん両足は地面に着けてOK)

教官Aのデモンストレーションが始まった。お上手ですこと。
教習所で教官の職に就くといいんじゃないかしら。

え?今やんの?これ今やんの?検定コース走らせてよ。「なにゆえ?」が消えない。しかし、ここでの俺は軍人である。役割を演じなくてはならない。「ハイッ」と返事をして取り組む。

いや、これクソ難しい…!助けてママ…!

ていうかなんの練習なんだよこれ。発進ならストップアンドゴーをさせてくれればいいじゃん。言うの2回目だけど今させないでよこれ。頭皮から脂汗がジュワァ…と吹きでる。恐らく共用のヘルメットはもう使い物にならない。

その間もJSBは悠々と検定コース練習をしている。羨ましいぞおおお。

結局、1回も上手くできなかった。これが検定課題にあったらヤバかった。ていうか教官Aから目的の説明が無かったけどなんだったんだ?

特に補講になるということもなく、みきわめに続く。

「いいえ、よく分かりません。」

10分間の休憩後、教習は続く。今回は2段階のみきわめということになる。気合入れなくっちゃ。引き続きJSBと教習を受ける。

当然だが、検定コースは予め定まっている。

「ここでこう!」「ここはこう!」と、その場その場で求められる動きをせねばならない。まるで劇団四季のようである。

しかるべきタイミングでしかるべきことをしろということなのだが、これがなかなか難しい。お参りの際の二拝二拍手一拝を行う際の「ええとこうだっけ」という脳みその揺れに近い。余計なことをせず、予め決められた動作をスムーズに行うにはそれ相応の練習が必要である。

俺がよく分かんないまましていた箇所がある。後方目視からの位置変更である。結果「№○の立て札で後方目視して、№〇の立て札までに中央線に寄せる」みたいなことになる。少林寺拳法の演舞じゃないんだから。

件の後方確認について教官Aが「どこで後方確認するか分かってんの?」というので「いいえ、よく分かってません。」と返した。実に素直で無駄のない回答である。素晴らしい。

この後の展開は予想が着く。

「分からない」と正直に言うと、相手がヒートアップする。案の定「いや、だからさぁ~」と、ダラダラダラダラ説明し始めた。こういうとき、相手の説明を絶対に覚えられない自信がある。自分の頭の中にある認識を自分の言葉で覆さないと分からない状態。これはまずい。

その場では分かったフリをして、JSBがどうやっているかを盗み見た。
そしたら1発で分かった。なーんだ簡単じゃん。
その後は注意を受けなくなった。

観察力とセンスと想像力と自分とのギャップ

「無意識レベルで行われる連続する動作」をどう捉えて理解するかが車やバイク教習のポイントのように思う。例えば「野菜炒めを作る」という行為を言葉だけで説明されたらピンと来ないだろう。

見よう見まねで実際に野菜を切ったりフライパンを振ったりするのだが、そこにセンスや観察力が出る。野菜の切り方が汚いだとか、油入れすぎだとか、具材を入れるタイミングがおかしいだとか…という話。

ラストだしちょっとぐらいいいかなって。

突然、教官Aからの無線が飛んだ。

「止まって止まってー。笑 ここで何に気を付けたらいいかわかるー?笑」

…うるせぇなこいつ。

「え?この位置で何を気をつけるか?ですか?」

思わず口調が荒くなった。これまで軍人のように「はい!」としか返事してなかったが、この時ばかりは頭に来た。人が真剣にやってる途中でクイズ出して流れ止めて楽しんでんじゃねぇよこのクソ野郎。

教官Aは知る由もないだろうけど、この出来事には前触れがあった。
1戦目が終わった直後の休憩時間のときである。

教官Aが俺に「さっきの坂道のやつ難しかった?」と聞くので
「はい。これまでで1番難しかったです。」と元気よく述べた。

そうすると教官Aは「フン」と鼻で笑ったのである。

なんじゃこいつと思ったが、態度に出してはならない。その場はしれっとしておいた。されど何故か妙にモヤモヤする。仕方ないので教習に集中した。
だって今回はみきわめだもんな。補講になったらだるいもんな。集中集中。と、思った矢先である。

普段軍人のように返事をする俺が初めて感情っぽいものを出して返事したことに面を食らったのか、教官Aは「ほほう…。」みたいな反応の後「〇〇地点から抜けてくるバイクです」と述べていた。そうですか。すみませんね。期待に添えなくて。

発着点に戻り、一旦バイクを降りた俺に教官Aがなにやら言っている。「はい。そうですか。」と、空返事をした。このときばかりはほんとに腹が立ったんだよ。事実を指摘するだけならいいけど、バカにする態度を取るなら許さん。

けど、こんな気持ちを長続きさせたところで何かを失うばっかりなのでやめた。これのおかげでこれまでたくさん損してきただろ。そんなにイラつくことかとセルフマインドコントロールが成功した。ナイスアンガーマネジメント。充分大人気ないがここらが潮時だろう。

とりあえず心を落ち着かせて「次はBコースを回ればよいでしょうか」と尋ねた。

「いや、Aコース。残りの時間はAコースだけでいい。大きな声で言えないけど、明日はAコース…じゃないかなーと思ってる。」

…あ、そういうシステム?笑
ていうか明日の話する時点で、みきわめに問題はなかったのね。笑

じゃあ気合い入れてAコースを走るっす。卒検前のラスト教習だけど不安は消えない。とりあえずやるっきゃない。「先程はすみませんでした」と心の中でつぶやいた後、エンストにビビりながら発進した。

明日は晴れてくれるといい。

次は卒検!ブウウウウウウン!