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普通自動二輪車免許(運転免許センター編)

その前に身だしなみを整えよう!

晴れて普通自動二輪車免許の卒業検定に合格した。もう3週間も前の話である。行くこと自体もそうだが、行く前の準備が実に面倒くさい。

写真を撮るなら髪を切って身だしなみを整えなくっちゃ。俺にとって運転免許証の写真って「自分代表」みたいな位置付けなんだよ。誰に見せる訳じゃないけど、ベストアルバム的な名刺代わりの1枚。だいたいこういう感じの作風なんだねって確認するための写真。

写真の中の自分が嫌いである。何度見ても慣れない。「うわっ」ってなる。俺が古くなっちゃうじゃない。別に免許証に限った話ではない。よくもまぁこんなマヌケフェイスを晒して平気で生きられるもんだと思う。鏡の中の自分と、写真の中の自分の差を正面から受け止める勇気がない。極力、写真に写らないように生きてきた。故に、友人とイベントごとに参加しても俺の写真は少ない。撮らせないのだから。それでいい。

私と免許センター

※見るだけで「ウッ」となる禍々しいフォルム!

大学のとき原付免許試験に落ちた。地元でニートやってたとき免許更新忘れて失効させた。「なにかを失敗する施設」である。

免許センターってほんと田舎オブ田舎にあるよなぁ。とはいえ、今住んでるとこはまだマシ。地元のは山の上にあった。

自動車学校でもらった案内をざっと眺めたあと、一応補足でHPも確認した。うわぁ。なんちゅう不親切さ。なんにもわからんぞ。

UXもUIもクソくらえな平成真っ只中のお役所仕事感がほんと好き。風情を感じる。「分かんないことは電話して聞いてね」と書いてあった。恐らく、聞いたところでたらい回しを受けるのだろう。

下調べまで終わるとやんなきゃって気持ちになるね。

I'm late.I'm late.

当日朝、信用している理髪店の大将のところに駆け込むことにした。聞かれもしないのにバイク免許を取得した流れで免許センターにいくからいっちょ男前にしてくれと頼んだ。

仕上がりは完璧。It's fuckin' so cool.

いつもどおり「気ぃつけてね」と言って送り出してくれた。うれしい。この理髪店の大将は俺の話をよく聞いていないフシがあるが別に彼に限った話ではない。俺の口からそんな重要な情報は出てこない。せいぜい「あそこのラーメンおいしいですよ」ぐらいである。

(理髪店に向かう途中で財布を忘れたことに気付いた。ベタベタすぎて自分が愛らしい。受付時間に間に合うか一気に不安になったけどギリセーフだった)

運転免許センターに着いた。すげー。人でごった返してる。平日朝の公的機関に集まった人間特有のよりどりみどり感。いいね。高齢者教習もやってんのね。死臭がする。

入り口付近でキョロキョロしているの姿を不憫に思ったのか、いかにもなおっさんの係員が俺に近づいてきた。

「え?なに?なんの用事?」(マジでこんな感じ)

「あ、えっと、バイクのへ、併記です!」

「いや、それは隣!隣の運転免許試験場!ここは免許センター!それは隣!」

「ありがとうございます。(オッチャンホンマニアリガトウ!)」

久しぶりに発声と心の中の声がリンクした。掛け値なしに助かった。受付時間終了まであと10分ぐらいしかねぇじゃんちくしょう。走れ走れ。バイク教習のためにはじめたランニングの効果がここでも出た。つうかスニーカーってほんと走りづらい。たかだか300mぐらいだけどここで遅れて受付不可になるとさすがに嫌すぎる。ぜんぶ自分のせいだけど!

最終試験(Last Dance)

いちばんの敵はいちばん身近にいるということやね。(目)

なんと5分前到着。素晴らしいダッシュ。

しかしまぁ分かりにくい館内案内ですこと。どこに並んでいいのか大体でしか分からん。窓口の上に数字が書いてあるのでそういうことか?

1番窓口に書類を渡した。

「あっ、すみません。まずはあちらの窓口で受付ですねー。」

|窓口|   λ............トボトボ

「向こうの窓口で印紙を購入して、隣の窓口にお願いします。」

|印紙売場| λ............トボトボ

死ぬかと思うぐらい不親切な館内案内に従って受付をした。別の窓口で印紙を買った。それを持ってすぐ隣の窓口へ行って印紙で料金を支払った。サンドウィッチマンのコントみたいだ。縦割りがすぎるだろ。

途中、現在の運転免許証と、窓口に来た人間が同一人物か目視で確認する令和の首実験みたいなイベントがあった。アクリル板に挟まれた向こう側のおっさんが俺の顔と免許証とを「んっ?んっ?」と見比べていた。AIが発達しなくてもこのおっさんは職を失ってしまう。広瀬すずの名言「なんでこの仕事?」を思い出す。

ラスボスは「はい。ようこそ。」みたいな雰囲気を出して視力検査機の横に座っていた。警官の制服を着ている。正義感に燃えてた時期もあったのだろう。

言われるがまま、検査機を覗く。

「どっちの方向向いてるか口で言ってくださいね」

「みぎ!うえ!した!うえ!ひだり!」

「はい。問題ありません。これで試験は終わりです。あとはまぁ、気を付けて運転してねってことで。」

…なんか不思議に感慨深かった。ああこれでこの出来事は終わりなんだって思った。ニクい演出。俺が勝手にメッセージ性ある言葉に変換しているだけなのは否定できない。ハタから見ればだいぶ投げやりな言い方だった。毎日のことだからいちいち感情を動かしていられないのだろう。

「そっちの出口からNo.5の部屋に行ってね。写真撮ります。」

ウス…。

無表情をつくろう!

無表情と無意識は近い。意図的に無表情を作ることのなんと難しいことか。なので、ぜんぜん興味ない女の子が目の前にいる時の顔をすることにした。

窓口で用紙を提出すると、まるでやる気のないお姉さんがいそいそと出てきた。俺より年上だと思う。ていうかお姉さんが履いてるスニーカーのサイドに「H」って書いてあった。なんだそれ。ホーキンス?

そんなことより問題なのは、お姉さんが割とタイプだったこと。細目のボブカットに弱い。大体のことは叶えてあげたい。

カメラの前のイスに腰掛ける。

「はいじゃあ赤いとこみてくださーい」

(無表情無表情無表…)

「はいありがとうございましたー。6番の部屋に移動してください。」

出来栄えがめっちゃくちゃ気になるんですけど。俺おっさんだけどすごい気になるんですけど。別に誰に見せる訳じゃないし、ビジュアル売りしたことないけどめっちゃくちゃ気になるんですけど。

交通安全協会への加入勧誘

同志は10人ほどいた。全員男。どいつもこいつも薄汚れた格好した安っぽい茶髪だった。年齢層が全体的に高かったのだが、なんか事情があるんだろうか。

しばらく待っていると、家で妻を介護してそうな「疲れ」を感じさせるビジュアルをした白髪混じり小太りの警官があらわれた。肌は浅黒く、メガネの奥から意気地無しな目を覗かせている。

彼の話の要点は下記である。

・運転に気を付けろ
・交通安全協会に入れ
・帰りは部屋の後ろから退出しろ
・交通安全協会に入ってくれ
・それでは免許を配ります

名前を呼び、記載事項に間違いがないことを確認しながらひとりひとり免許証を渡していく。配給のようだ。

受け取って「普自ニ」の記載も確認した。うれしい。暗くなる前におうちに帰ろう。

クルッと振り返ると、部屋の後ろには満面の営業スマイルをした交通安全協会勧誘員がいた。

俺の手から運転免許証をヒョイと取り上げこう述べた。

「はーいそれでは運転免許証の最終確認をお願いしますねー氏名住所生年月日に間違いはありませんか?はい!ありませんね!今回はバイクですね!種別に間違いないですね?はいもんだいないですね!裏側にシール貼ってるんですけど、帰るときに剥がしてください!(意味不明)ところで交通安全協会への加入をお願いしています!500円なんですけど厳しい感じですよね?」

ものすごい早口だった。

「あ、はい…。」といかにも厳しそうな顔をして断った。子供たちのランドセルカバーだとか通学路の注意喚起の旗だとかに使うってさっき言ってたもんな。使い道の紹介が公益性高いっぽいのやめてよ。断りづらいよ。

部屋を出て一息ついた。なんだかバタバタして慌ただしかった。間に合ってよかった。恐る恐る、出来上がった写真を見た。うん。うすらハゲのウーパールーパーだ。自分の運転免許証史上ベストの出来。素晴らしい。どこに出しても恥ずかしくない魚類っぷり。ピチピチしてらぁ!

ようやく名実ともにバイクに乗る資格を手に入れた。あとは思いっきり楽しむだけ。ラーメン食べながらgooバイクでも見よう。

遂に免許を手に入れたうすらハゲの男性に思わぬ障害が立ちはだかる!