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症例振り返り14 その高Ca血症はPHPT?SHPT?
また電解質の悩みです。高Ca血症について、VitDが測れるようになってそのアセスメントがよりややこしくなっているんだと思います。
Caの動態について
Caの99%は骨にある
血中Caの40%はアルブミンと結合している
Caの変動に関わるのは副甲状腺ホルモン(PTH)、VitD、カルシトニン
PTHの作用とフィードバック機構
PTHは基本的に血中のCaを上げて保つホルモン
作用は主にPを上げず(どちらかというと下げて)にCaを上げる
機序は
①骨からPとCaを血液に動員する
②腎からPを出して、Caを再吸収する
PTHの分泌を低下させる要因は
①Ca濃度の上昇
②25(OH)VitDの上昇
VitDの作用
VitDは骨を作るためにCaとPを上昇させる
VitDは肝臓で25(OH)VitDになり、その後腎臓でPTHの作用を借りて1,25(OH)2VitD=活性型VitDになる
25(OH)VitDはPTH分泌を抑制する。
カルシトニン
甲状腺から分泌され、Caを低下させる。
主に陸上の生物はCa欠乏になりやすいため骨に貯蓄しておりカルシトニン作用は弱い。海水中に住む魚類は高Caになりやすくカルシトニンで調整している。
症例:高齢者の微妙なCa高値
90台女性で補正Ca11程度の軽度の高Ca血症を認め、以前に診療していた医師がintactPTHと25(OH)VitDを測定していた。
intactPTHは高値で25(OH)VitDは5。これを見て、VitD欠乏による骨軟化症から2次性副甲状腺機能亢進症を来たしているとアセスメントされていた。
いやいや、違うでしょうよ。と思うわけです。
高Ca血症の鑑別のフローチャート
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高Ca血症の原因の90%はPHPTか腫瘍性。
あとは薬剤性のVitD過剰が多い
血液検査での鑑別のスタートはintact PTHの多寡から始める
というわけで高Ca血症の鑑別から入ったのだから、intact PTH上昇の時点でPHPTの診断でいいんです
原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)とVitD欠乏
じゃあ25(OH)VitD低下はどう説明するのかって話ですが、下記のasymptomatic PHPT とFHHの鑑別のフローチャートを見るとなんとなくその立ち位置がわかります。
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PHPTでは尿中へのCa排泄は増加する。(PHPTのCa再吸収作用よりも高Ca血症でホメオスターシスを保つ機能が勝るため)
PHPTでも尿中Ca排泄が少ないときはVitD欠乏の時だ。その時は補充しろ。
VitDが十分あるのに尿中Ca排泄が少なくintactPTHが上昇してるならFHHだ。
ってことをこのフローチャートは示しているわけですね。
またPHPTでVitD欠乏を来たしている場合にはVitDを補充(天然型>活性型)することがPHPTの進行を抑えるとされている。
PTHと25(OH)VitDの関係は?
VitD欠乏の側からみると、そもそもPTHと25(OH)VitDには負の相関があることは一般的に知られているらしい
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またPHPTでは25OHDが低値となるこ とは,古くから知られていた疫学的事象らしい。
その メカニズムとして,PTH作用による1α水酸化酵素のupregulationにより活性型ビタミンDの産生が亢進するため, 生体のネガティブフィードバック機構によって,活性型ビ タミンDを代謝する24水酸化酵素がupregulationされるこ とが主因と考えられている。この24水酸化酵素は基質特異 性が低いので,活性型ビタミンDだけではなく25OHDも代 謝してしまい,必然的に25OHDが低値となる[8]。また, 活性型ビタミンDの産生亢進により,皮膚でのビタミンD3 の産生が抑制され,これも25OHDの産生の抑制に関与す る.(文献1から引用)
手術しないPHPTへの対応は?
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参考文献1が詳しいが、手術しない場合の薬物療法としては
25(OH)VitD<20なら補充。(できれば天然型だが保険適応ない)
BP製剤は骨密度上昇効果あり、特にアレンドロン酸
プラリアはエビデンスがまだ少ないが骨密度上昇効果あり
注意点はエビデンスの根拠となる論文や推奨の量が日本で使用する量よりもかなり多いこと。
VitDの推奨量は600~1000IU/day。(デノタスは1回2錠で内服するが、2錠中には400IUが含有)
アレンドロン酸の量は10mg/dayの高容量(通常日本でのアレンドロン酸の容量は5mg/day)
参考文献
槙田紀子. "原発性副甲状腺機能亢進症への薬物治療介入のアウトカム―無症候性あるいは軽度の非手術症例を対象として." 日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 38.3 (2021): 141-146.
尾形悦郎. "カルシウム・リン代謝異常症: 診断と治療の進歩." 日本内科学会雑誌 96.4 (2007): 653-655.
岡野登志夫,他:高齢者を中心とする日本人女性のビタ ミンD栄養状態と骨代謝関連指標について.Osteoporosis Jpn 12 : 76―79, 2004.
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