不正事件を防ぐためのガバナンスとは
三菱電機で不正が長期間にわたり行われていたことが報道された。日本の大企業のコーポレートガバナンスはなぜ機能していないのか、企業の品質問題や不正の隠蔽行為を防ぐためには何が必要なのか、この機にコーポレートガバナンスの観点から考えねばならない。
今日、企業役員は、コーポレートガバナンスの基本の鑑として、常に『コーポレートガバナンス・コード(コード)』に立ち返らねばならない。
コードの原則4-3:取締役会の役割・責務(3)と、原則4-4:監査役及び監査役会の役割・責務、は今回の事件のような場合特に重要である。また、補充原則4-3④では「内部統制や先を見越した全社的リスク管理体制の整備は適切なコンプライアンスの確保」が重要で「取締役会は・・体制を適切に構築し、内部監査部門を活用しつつその運用状況を監督」としている。そして、原則4-4は「能動的・積極的に権限を行使し、・・経営陣に対して適切に意見を述べるべき」とも明記している。
企業の不祥事の多くに表されるいわゆるガバナンス問題は、コードの上記原則に照らせば、取締役(会)および監査役(会)(併せて「役会」)が、コードのとおり機能していないことを意味する。
企業の根本存在意義である「PURPOSE STATEMENT」を規定しようという動きも最近あるが、役会が株主等に対して機能せず不正隠蔽問題等を起こしてしまう根源は、企業としての根本存在意義に立脚し、コードに則した行動をしていないことにある。三菱電機にはPURPOSEに代わるものとして長く「価値観」規定があった。「三菱電機価値観」は「信頼・品質・技術・倫理遵法・人・環境」と定めている。今回の事件は、この価値観の全てを裏切った事象内容である。本来、三菱電機の役会と組織が、「価値観」に則ってその機能を発揮すれば、価値観に悖る検査不正の隠蔽問題は、そもそも起こるはずがない。コードに沿えば、役会は内部監査機能を活用し「価値観」に照らして能動的に経営陣の行動を監督し意見を述べるべきであった。しかし、三菱電機の役会は、これを行わず看過してきたのだろう。
また「能動的」な監査役会となるためには内部監査の専門性向上も必要だ。しかし、通常、監査役会は単に手続的報告会と化し監査部門はいわゆる窓際族的扱いを受けている例は世に多い。コード記載のとおりガバナンスが機能するためには、内部監査部門に資格保有者等を配属して高い専門性を持たせることが基本である。そして、内部監査部門はCOSOフレームワーク等に準拠して内部統制を構築することが必要である。監査役(会)は、このような高い専門能力水準の内部監査部門を積極的に活用し、組織の現状をCOSOフレームワークと常に参照しながら、組織的隠蔽や不正防止に努める。すなわち、組織統制があるべきフレームワークに基づいて確立してこそ、役会機能が実質的に発揮できるのである。
コーポレートガバナンスを機能させるためには、企業本来の根本存在意義(PURPOSE)に基づいて組織統制のフレームワークを確立し、その上で、コードに則って役会の機能を発揮していくことが重要である。