薬剤師による起業への挑戦 #6 「がん治療と補完代替医療」
がんの治療には「三大治療」と言われる、手術治療、放射線治療、薬物治療があり、その中でも薬物治療は日進月歩で急速に発展し、細分化が進んでいた。
がんの治療薬の市場規模は、2022年に1706.3憶米ドルから2030年末までに3159.5憶米ドルに拡大すると予測され、多くの製薬会社が研究開発に注力していた。
がん薬物療法の進歩に伴って、その治療効果は飛躍的に向上していた。
またこれらの治療は「標準治療」と言われ、日本では国民皆保険制度、高額療養費制度を利用することができる保険診療だった。
そのためがんの治療は、科学的根拠に基づく質の高い医療を、少ない負担額で享受することができた。
-補完代替医療-
しかし、がんの治療における標準治療の発展とは別に、補完代替医療(いわゆる民間療法)も根強い人気があった。
厚生労働省の調査結果によると、がん患者の45%が1種類以上の補完代替医療を行っており、平均して月に57,000円の出費があるとの報告があった。
補完代替医療は保険診療外、つまり全額自己負担で行われる治療であり、その価格設定は事業者に委ねられていた。
その中には患者の健康上の利益を無視し、虚偽または誇大な表現を使用した広告宣伝を行って多額の料金を要求する事業者も存在した。
このような事業者は薬機法違反の取り締まり対象となり、度々ニュースを賑わしていた。(資料8)
また補完代替医療には、がんに有効と示された科学的根拠のあるものは存在しなかった。