見出し画像

ホップソルトが出来るまで④「六次化コーディネーターの萬谷さん」

一流のシェフやお店にホップを使ってもらって、その反応をいただくうちに、やはりこのハーブは素晴らしいハーブなのだと感じるようになった。
ビールのガツンとしたイメージが強いけれど、それだけじゃない、爽やかで繊細な香りを、もっと手軽に料理に使ってもらいたい。

そんな気持ちがどんどん大きくなって、やはり自分自身でも加工品を作りたいと思い始めた。
しかし、どのように取り掛かればよいのかわからない。

ホップに興味があるという人や、加工品を作りたいという人に、サンプルを渡したりしていた時期もあった。
しかし、皆一様に、「難しいですね・・」と言う。
ホップはそのまま食べると、想像以上に苦い。そして保管の環境によっては、劣化が早い。香りは良いのだけれど、いざ試作してみたら、思っていたようにならないという。
でも、この苦みって料理に使ったら美味しい苦みだし、香りも料理によっては生かせるような気がするんだよな・・・と、モヤモヤと思っていた。

そんな日々を過ごす中、とあるイベントで、萬谷さんと知り合った。
萬谷さんは、食の六次化コーディネーターだ。
主に北海道の生産者が加工品を作ることのお手伝いをされていて、あちこちを(時には北海道外にも)飛び回り、食というもの全体を扱っているような方だ。

そのイベントは料理とは全く関係のないものだったけれど、お話しているうちに食に関するお仕事をされていると聞いて、ホップの加工品を作りたいと思っている話をしたら、とても興味を持ってくださった。
その後、好きなもののお話をしていく中で、私が好きなお店や、ブランドや、料理本たちなど、色々な共有できる価値観があることがわかってきた。
萬谷さんは、六次化の支援のみではなく、ご自身の興味としてカクテルの勉強をされていたり、ハーブの勉強をされていたり、香りや、そのブレンド、効能についても勉強されていて、そこの部分もとても面白いと感じた。


私は小さな時から料理が好きで、家にはたくさんの料理本がある。
好きな料理家さんたちもたくさん。
細川亜衣さん、長尾智子さん、内田真美さん、サルボ恭子さん、高山なおみさん、などなど、挙げていったらキリがないが、大好きな世界だ。
でも、農業の世界に入ってからは、意外にも、その価値観を共有できる人に出会える機会がなかった。同じ食の世界ではあるが、やはり色々なジャンルがあるということなのだろう。
念願の、好きな料理家さんや食材の話や、ハーブや香りの話で盛り上げれる機会を得た私は、ホップそっちのけで、萬谷さんとの時間を満喫した。

好きな料理本を一緒に眺めた時間は
至福の時だった。


萬谷さんと一緒に商品を作っていて驚くのは、萬谷さんの「諦めない力」だ。
そもそも、色々な人に「難しい」と言われてきたホップの商品を、一緒にやろうと言ってくれるというだけでも心意気のある方なのだけれども、
なんとか良い商品を作るため、私のやりたいことが形になるために、事前にホップや料理について色々調べたことがびっしり書かれたノートを持参している姿を見て、いつも感動した。
会うたびに、いつも新しい発見をくれる人だ。

そこから半年後に、ソルトコーディネーターの青山さん(次回登場)による最初のホップソルトの試作品が出来てから、さらにその1年半後の完成まで、ずっと萬谷さんに伴走してもらってきた。
塩を選ぶ時には、北海道の塩の味比べを、舌が痛くなるまで何種類もした。
ホップそのものの味比べのために、苦い苦いと言いながら、生のホップのフリットも食べ比べした。
数えきれないくらい作ったホップソルトの試作品を、色々な料理にかけて食べてみた。
どんな料理に合うのだろうかと、普段は行かないような素敵なレストランに一緒に食べに行った。

ホップソルトはフレンチにあうのではないか?
ということで、萬谷さんオススメの
フレンチレストランへ。

フレッシュホップを扱っていただいている、
ススキノの浪花亭さんも萬谷さんと。
食べながら食材の解説をしてくれた。


イコロの森で、憧れのMITOSAYAさんの
ポップアップイベントが。
迷わずカクテル好きな萬谷さんをお誘いして参加。
ハーブとお酒と料理の楽しさを体験。


このジャンルの料理だったら合うね、このシーンで使ってもらいたいよね、こんなお店に置いてもらいたい、こんな人たちにお届けしたい、だからこんなトーンのデザインで作りたいよね。と、一人で考えるのではなくて、一緒に同じ視線で考えてくれる人がいることの安心、心強さ、世界が広がっていく楽しさを経験した。

ちょっと話は飛ぶけれど、ホップソルトを作る終盤で、昆布を使うことになり、その生産地の羅臼(北海道の一番東側で、世界遺産にもなっているくらいに自然の奥深い地域)に急遽行くことになった。
いつもは1人でどこへでも行く私だが、さすがに心細くて萬谷さんにもお声を掛けたら、北海道の西側から、二つ返事で飛行機で駆けつけてくれたことは忘れられない。およそ600kmの距離を、別の出張先から、文字通り、飛んできてくれた。
一緒に羅臼昆布の生産者さんたちに会い、生産現場を見させてもらい、色々な昆布を食べて触って、お祭りにも参加し、昆布ラーメンを食べた。


羅臼で一緒に食べた昆布ラーメン。
疲れた身体に染み渡る。



世の中のたくさんの商品には、それぞれのストーリーがあるのだろうなと、自分で一から商品を作ってみて初めてちゃんと実感している。
私のホップソルトも、たくさんの人たちのアイデアや想いや時間の塊だ。







いいなと思ったら応援しよう!