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ホップソルトが出来るまで③「手作りのホップソルトと、お茶や料理への広がり」

2018年頃、畑の端っこで細々と育っているホップたちを、クラフトビールを作っている方々にちょこちょこ見てもらっていた時期があった。
上富良野町で、今も美味しいクラフトビールを作っているホップコタンさん。
そこで当時働いていた若い人達に畑に来てもらって、ホップを見てもらったり、品種について教えてもらったりしていた。

私はビールに全然詳しくないし、ビールよりは料理に使いたいなと思っていたところ、「ホップを塩と一緒に砕いてホップソルトというものがありますよ」と、手作りのホップソルトを頂いた。
ホップは中にルプリンという黄色い粉があって、それごと粉末にしているので、黄色っぽい塩だった。
それがとても面白くて、自分でもホップを乾燥させて、塩と混ぜて作ってみたりした。
作りたてを鶏肉の焼いたものに付けたら、爽やかな香りと苦みで、とても美味しい。

しかし、いわゆる「ハーブソルト」ほどのインパクトはなかなか出ない。
試作を当時色々とやってみてわかったことは、そもそもホップは乾燥が難しいし、保管も難しいし、品種によってはすごく苦いし、他のハーブと混ぜると意外と香りは弱い。
ホップは中に黄色いルプリンという粉が入っていて、それが香りや苦みの元と言われているけれど、これがまたベタベタするので、時間が経つと塩が固まってしまう。
ハーブなのだけれど、バジルやミントやローズマリーと違って、色々と難しい。
どうりで、ホップの商品がビール以外はなかなか無いわけだなと、やってみて納得した。

当時はまだ野菜の販売がメインの事業で、ホップは趣味の領域、私がいつか安眠枕を作ったり、オムレツを作るためのもの、というくらいの位置づけだったので、特に急いで商品を作ろうとはならずに、頭の片隅に置いたまま、日々は忙しく過ぎていった。

そこから2022年までは、特に大きな変化はないまま、畑の端っこでひっそりと、ホップは伸び伸びと育っていったが、面白いからとりあえず品種は増やしてみようということで、さらに5品種(センテニアル、ゴールディング、ウィラメット、パール、ティーメイカー)を増やし、そちらも伸び伸びと育っていった。
品種が増えれば、さらに違いがわかってくる。
香りや苦みの違いだけではなく、ホップそのものの形や大きさの違い、開き具合の違い、育てやすさや収量など、それぞれが特性を持っていることがわかってきた。
さらに、ティーメイカーという苦みの少ない、お茶用の品種に出会ったことで、ホップを安眠のハーブティーとして活用するという海外の文化に触れることが出来たり、
ホップの料理を検索していて(ほとんどないが)、ようやく海外のホップ料理の本に出合うことが出来たりして、可能性だけは、どんどん膨らんでいった。

ホップの料理ばかりが載っている本。
著者のホップへの愛情が感じられる。


ホップソルトも載っていた。


ホップの加工品を作ることはまだ考えていなかったけれど、毎年、試行錯誤を重ね、食品加工研究センターの方々にご指導いただいたりもして、ホップの香りや色をそのまま残して、ドライにして保管することも可能になった。

ある日、東京の青山にある、とあるお洒落なお茶屋さんから連絡を頂き、そのお店でホップを使ったお茶を作ってくれたことが、私の心の中での大きな転機となったと思う。
そのお茶は、ホップと、蕗の薹と、柑橘の皮と、紅茶のブレンドだった。
野草のように使われているホップは、私が10年前から萩尾エリ子さんの本の中でずっと見ていた、ホップの姿だった。

ホップがハーブとして生かされたお茶。
ホップ、蕗の薹、柑橘皮、紅茶。
とても嬉しかった。


その後も数種類、お茶を出してもらっている。
ホップ、苺、紅茶のブレンド。



そうするうちに、ホップをハーブとして料理に使ってくれるレストランのシェフが現れたり、チョコレートに使ってくれるチョコレート屋さんが現れたり、酵母に使ってくれるパン屋さんが現れたり、少しづつビール以外のホップの楽しさを見せてもらえることが増えてきた。

ホップの繊細な香りと強い苦みは、使うことが難しい。
でも、この香りの魅力を、なんとかもっと手軽に使ってもらえるようにしたいと、この時から強く思うようになった。


上富良野にあるクラフトチョコレートのお店
ウルブズトラックスさんによる、
ソラチエース×ホワイトチョコレート










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