作品「そぼく」


そぼく
 
 
いつからか
素朴に
暮らしていきたいと
思うようになりました
 
飾らず
あるがままを
大切にしたいと
思うようになりました
 
そうすると
 
雲を眺めるようになりました
 
猫がなつくようになりました
 
静けさを好むようになりました
 
鳥の声は森に響くことを知りました
 
けもの道が分かるようになりました
 
野草の名前を覚えるようになりました
 
朝の光は祝福であることを知りました
 
人から道を尋ねられるようになりました
 
月の満ち欠けを気にするようになりました
 
遅さの価値を知る人たちに出会いました
 
一日いちにちが違うことを知りました
 
ゆっくり生きていくようになりました
 
鹿の言葉が分かるようになりました
 
雨音が優しいことを知りました
 
損得では動かなくなりました
 
わたしはわたしになりました
 
 
 
 
 
 
 
 
 



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『歩きながらはじまること』(七月堂)

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