作品「扇風機同盟の夏」



扇風機同盟の夏


梅雨の明けた七月
友人Kから
 扇風機同盟結成せり
 いざ 来たるべし
といった葉書が届いた
冬は
こたつ主義で
夏は
扇風機同盟と
なかなか忙しいKを
ひなぎく荘に尋ねた
この夏
一番の暑さにもかかわらず
彼の部屋には
一台の扇風機だけが
カタカタと
音をたてながら首を振り
風を送っていた
(以前の猫はいなかった
おそらくもっと涼しいところを知っているのだ)
いつも
やる気がなく
怠け者ではあるものの
どこか
やさしいKと
ふたりで
ビールを飲みながら
扇風機と
その同盟の
行く末について
激論をたたかわせる
こともなく
しずかに時間を過ごしていた
帰り際
Kは
 はいよ と
水ようかんをくれた
僕は
つくづく
 下には上がいるなあ と
思ったのだった










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