作品「のほほん製作所 1」


のほほん製作所 1


 やる気 明るさ不要
 しずかな人歓迎
いっぷう変わった求人票に惹かれ
「のほほん製作所」の面接に行ってきた
猫しかいない露地の
長屋の一軒にたどりつき
うすいガラス板の戸を
われないように
こんこんとノックしてみた
けれど
誰もでてこない
朝顔のつるが狭い空に
指をのばしている
さすがにやる気がないね と
おもっていると
カラコロと戸が開いて
せのひくい
べっ甲めがねで
みるからにカツラのおじさんが
いきなり「さいようです」と言ったので
しんそこ驚いたのだった
わたしは気を取りなおして
「め、面接をうけにきたのですが」と言うと
「いいねん」とおじさんは笑い
「なかにお入りやす」と言ったのだった
その日から
わたしは
のほほんとしたグッズを
企画製造している
どうやら
カツラのオガタ所長の
考えによると
こちらの
やる気や明るさを
捨ててこそ
グッズを手にした人に
その良さが
すっと伝わるのだそうだ
何言ってるのかわかんない











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