作品「22 ポスト」
22 ポスト
ある日
ふたたび
耳の人の家を訪れたことがあった
いつもの喫茶店に
彼が顔を出さなくなったからだ
店主に訊いても
お見えになりませんねえ と
言うばかりだ
そして
緑のトンネルを
そっと
くぐったのだった
軒先に
如雨露(じょうろ)が
ころがっている
庭の隅には
水が
とろとろと
湧き出している
耳の人に
会うことは
かなわなかった
そこで
手紙を書いて
青いポストに
入れておくことにした
『耳の人』(BOOKLORE)
『歩きながらはじまること』(七月堂)
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