作品「誰もいない」
誰もいない
平日の昼間
小川ぞいのM公園には
誰もいない
少し古い
じいさんが
ほっとベンチに腰を下ろして
背中をまるめて
パンを食べている
今日という日は
すこしあたたかい
白いこぶしが
ほろほろと
咲いている
桜は
つぼみに
色を与えはじめた
すずめたちは
鳴き声を
空に響かせている
ここは
ぽっかりと
何もない感じがしていて
それが
どこか心地いい
じいさんは
ずっとさがしていた
銀色の光をみつけたように
公園から
また
誰もいなくなった
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