作品「光の作りかた(老詩人の話 其の一)」
光の作りかた(老詩人の話 其の一)
先月
出会った老詩人は
次のようなことを
ぼくに語った
詩を作ることは
いくつもの言葉に光を与え
それらを星として空に眺め
未知の星座を見つけるようなものだ
なるほど と
ぼくは納得し
十日ほど
夜空を眺めてばかりいて
何も書けなくなった
今月
老詩人を訪れ
そのようなことを言うと
彼は
かすかに微笑み
まず言葉に光を与えなさい と
指摘した
その通り と
ぼくは思い
光の作りかたを空想して
三十日が経過した
『歩きながらはじまること』(七月堂)
『フタを開ける』(書肆山田)