「人間関係・対人関係の悩み!まずは自分を知ること(交流分析)」#3
「人間関係・対人関係の悩み!まずは自分を知ること」#3
前回・前々回と2回に渡って「エゴグラムテスト」のご紹介とその読み方について簡単に述べてきました、その中で交流分析では人は誰でも「3つの私(自我状態)」(親の私・大人の私・子供の私)を持っているとも説明しました。
今回はこの「3つの私」がどの様に働く時「対人関係」がスムーズに行われ、どの様に働くと「対人関係」が悩み多きものになってしまうのかを考えてみたいと思います。
交流分析の創始者E・バーンは「対人関係」とは人と人の間で交わされるやりとり(交流)であると考え、個々人が自分と他者とのやりとりを分析することで「対人関係」の傾向を理解し、悩み多き関係からの脱却に役立てようと考えました。E・バーンはこのやりとりにはそれぞれに特徴的な3つの基本パターンがあると述べています。
それは…
1.相補的やりとり
2.交差的やりとり
3.隠されたやりとり の3つです。
まず相補的やりとりについて考えてみましょう。
相補的やりとりとは、一つの自我状態から発信されたメッセージ(刺激)が発信側の予測する相手の自我状態から予測した反応が返ってくる状態です。これは「コミュニケーションがスムーズで、健全な人間関係の自然な秩序にしたがっている」状態でE・バーンはコミュニケーションの第一の法則と言いました。
具体的には、以下の様な感じです。
「部下」→「課長、時計を忘れてしまったので、時間を教えてもらえませんか?」
「上司」→「今ちょうど2時だよ、時計が無いのは大変だね、また遠慮なく聞いてくれ」
これは「部下」のA(大人の私)から発信されたメッセージが、「上司の」Aから反応が帰ってきたやりとりです。
「息子」→「今から宿題をやるよ」 息子のAから母親のPに発信したメッセージ
「母親」→「頑張ってね」 母親のP(親の私)から息子のAに帰ってきた反応
簡単な例ですがこの様に相補的なやりとりが行われると、二人の間のコミュニケーションはスムーズに進行します。相補的やりとりが行われることと、その対話そのものが生産的であることは必ずしもイコールではありませんが、少なくとも二人の間に気まずい空気が流れる事は無いでしょう。
続いて交差的やりとりについて見てみましょう。
「部下」→「課長、時計を忘れてしまったので、時間を教えてもらえませんか?」
「上司」→「仕事に時計を忘れるなんて、君は社会人失格だ!!」
これは部下のAから上司のAに向かって発信したメッセージに対して、上司のPから部下のCに向かって反応が返ってきた例です。
「夫」→「もう少し綺麗に掃除をしてくれたら気持ちいいのに!」
「妻」→「だったらあなたが掃除すればいいじゃないの!!」
これは夫のCから妻のPへ向かって発信したメッセージに対して、妻のCから夫のPに向かって反応が返っています。
部下 上司 夫 妻
この様に発信側の期待する自我状態とは異なった自我状態から予測しない反応が返ってくると、そのやりとりは交差し、混乱したり失望したり相手を非難する気持ちが起こったりしてコミュニケーションは中断してしまします。
隠されたやりとりについては、少し長くなるので次の機会に書きたいと思います。
さてこの相補的やりとりと交差的やりとりは、皆さんも日常の中で思い当たる所があるのではないでしょうか、我々が「対人関係」の中でいやな思いをしたり関係がギクシャクしたりしてしまうのは、主に交差的やりとりが行われた時でしょう。
「対人関係」において大切なことは相手から発信された言葉や行動が、相手のどの自我状態から自分のどの自我状態に向けて発せられたのかを理解し相補的な反応を返すこと、平たく言えば相手の発した言葉を相手の立場に立って受け止め、相手が予測可能な反応を返すこと、そしてメッセージを発する側は、相手のどの自我状態に向けて発信すれば自分の想いを受け止めてもらえるのかを考えて言葉を発することでしょうか。
しかし言葉で書くと簡単そうですが、実際の「対人関係」の中でこれを瞬時に行うことはとても難しい事です。前々回のコラムに書いたように、エゴグラムテストの高得点の自我状態がやりとりの中では真っ先に反応してしまうので、それ以外の自我状態に向けられたメッセージに対しては交差的な反応を返してしまいがちです。また互いの関係が近いほど相手は自分を受け入れてくれるという予測(甘え)が働き、言葉足らずになってしまい結果として予測しない反応にさらされるのです。
まずは自分自身の「対人関係」の傾向を正確に理解し、また相手が自分にとって大切な相手であればあるほど相手の傾向を受け入れて、思いやりを持った反応を返すことを心掛けてみましょう。