そして明るさ(ながめぐ論04)

ながめくらしつは暗い。と、何度となく言ってきたのだけれど、じつはながめくらしつは明るい。ラストはいつも明るい。堀の外のジャグリングで演じられたながめくらしつの第一作のラストは4人が椅子に並び、コミカルでリズミカルで、おさまりの良いチーム演技をして、きもちのいい終り方をする。

目黒陽介の作品づくりは慎重で地道だ。ながめくらしつで使われる様々なモチーフ、すなわち動きやジャグリングの技のほとんどは、それまでの作品での実験にもとづいていることが多い。天井からの吊り下げ、椅子や壁の上の移動、様々な技も。

光と影そして陰も長らく彼の興味の対象でいろんな研究の跡をみることができる。それは2007年堀の外のジャグリングで上演した Ombre から続いていて、壁に映ったジャグリングの動きを見せたり、後方投影で光の陰になったりしていた。

ながめくらしつの一連の作品は実のところほとんど同じ構成で作られている。中期作品では、机でまどろむ男は夢に誘われ雨のなか歩き出す。行先も知れず薄明るい林を通り抜け、はじめて出会うしかし見知った知人に会うのだ。よくよく見ればどうやら自分らしい。彼らと戯れ、彼らに遊ばれ、そしてふと気づけばまた自分一人。

この最後は、舞台中央を丸く照らしたライトのきわにそって、ぐるぐると回りながら追いかけるシーンで作られている。何人かでボールを投げあいながら走り、だんだんと回転速度が速くなる。ここまでは第一回の椅子のならびを動きながらやっている風情だ。すこし違うのは、いつしかボールを投げるのもやめてしまう。暗がりに一人、また一人消えていくのだ。

そして、最後に自分だけが残ってぐるぐる。周りを見回せばそこにいるのは自分だけ。動きを止めつつ、自分自身を振り返り、振り返りする。

そして、明るくなる。それは文字通り舞台後ろからの照明を使った明るさで。その光のなか、逆光のなか、最後の一人もゆっくりと影となり、そして消えていく。目覚めるように。

ながめくらしつ : 目黒陽介が主催する、ジャグリングを基点とした・音楽・パフォーミングアートなどからなる舞台創作集団。代表作は「ながめくらしつ」 http://nagamekurasitsu.com/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?