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ほしがほしいと ほえるいぬ

「あれが、デネブ・アルタイル・ベガ」
君は指差す 夏の大三角
覚えて 空を見る
ーsupercell「君の知らない物語」

微に入り細を穿つ親切。
こんなひと、点と線で構成される世界にしかいないと思ってた。

…ああ、やさしい人だね。
大尊敬する小説家さんとご縁のある、占い師さんは目を細めて。
…でも、この先ずっと一緒にいるひとがほしいなら。
そのあとはごにょごにょと濁された。ほんとははっきり仰ったのを、脳みそが受け入れなかっただけかもしれない。
母とひとつ違いの恋人と、お付き合いして6年目。まったく別の悩みごとで訪れたとき、思いがけず触れられる。
親と変わらない歳の人、最後は介護になるだろう。現実のことごとをまったく理解していないなりに、腹をくくっていた。それでそんなことを言われて、目がまるくなる。口元をゆがませて、なにかを答えたのだったと思う。
思えば、その頃にはもう特別なひとだった。

仕事場で、耐えられないようなことがあった。笑って、やり過ごした。
心配だから様子を見てきてあげてと、上司の上司に命ぜられた。事情もよくわからないのに、気の毒としか言いようがない。それを、全部正直に言って来てくれた。
問われることのひとつひとつに、ぶっきらぼうに答える。でなければ泣いてしまうと思った。知り合って間もない職場の人間に、泣かれても困ろう。
それに、このひとは信頼できるひとだから。ちゃんとしないと、これからタッグを組むにあたって、負い目ができてしまう。
ちゃんとこれから頼れるように、最初の線を引かないと。
そう思って歯を食いしばる。
それがはじまりだったなと、今思えば。

いつか誰かを好きになる。
ではその先は、どうすればいい。
たくさんのひとが、いろいろなことを書かれている。曰く、自分が相手の性だったら好きになるようなひとに、なればよい。曰く、これとこれとこれとこれはやめて、あれとあれとあれとあれをすればよい。
まだしも腑に落ちる前者の意見にさえ、なびくことができない。
計算も、対価を期待してこれからの行いを決めることも、ずるいと思う。
そうして、何もできないという今ここに立ちすくむ。
受け入れてほしい。好きになってほしい。
ねがいをねがうことを、この私が拒んでいる。
難儀なものであるなあと、すこし遠くに佇む私が眺めている。

ただひとつ変わらないのは、幸福であってほしいということ。

ロッカールームで、ぽかんとする。
待ち望んでいたことのひとつが、叶った。
このひと、偽物じゃないかしら。小さく口を開けたまま、真剣に、失礼に、疑う。
そうして、心はひとつも波立たない。まるで当然のことのように受け入れている。なんて傲慢なのだろうと、この私に向けて思う。
この先はどういう展開になるのだろう。
有り体に言えば、関係が進むか、終わる。どちらにしても予想がつかない。
すこし前までは、あとの選択肢を何よりも恐れていた。そこで考えすぎたのか、もう何も思わない。
星が欲しいと、望むことからが挑戦だった。
地上の犬は吠えつくしたので、目を閉じて眠ることにする。

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