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【TENGA広報、TENGA社を退職します】「性」の取り扱われ方の変遷と、TENGA社の活動を振り返る

約8年間お世話になったTENGA社を、年内いっぱいで退職します。
たくさんの方のご助力を賜り、たくさんの面白い仕事に携わらせていただいた8年でした。同時に(特に女性の)「性」の社会における取り扱われ方、一人ひとりの考え方が変わっていく、大きな時代のうねりを肌で感じた8年でもありました。
「退職エントリ」を書くっていうのも何だか仰々しいし、かといってそれなりに長くセクシャル・ウェルネスの業界にいたので何の挨拶もなしっていうのも寂しいし、という気持ちです。
それならTENGAのPR活動を担っていた立場から、まだ記憶が残っているうちにTENGA社の活動と「性」意識の急激な変化を記録しておくのがいいかなと思って、このnoteを書いております。

携わってきた仕事と当時の社会風潮、その他裏話など時系列順に書いていたらずいぶん長く散漫になってしまいました。暇つぶし程度に読んでいただけたら幸いです。

2017年〜2018年頃

▼女性の性の語り手少なすぎ問題

偉大な先輩広報・工藤まおりさんとふたりで顔出し広報をやっていた時代です。
顔出ししていた理由は2つくらいありまして、1つは18禁という製品特性ゆえに限られたメディアにしか紹介してもらえない→広報という個人の切り口なら取り上げてもらえるメディアが広がるかも?という理由です。
もう1つは、この時期まだプレジャーアイテムについて積極的に発信している女性が非常に少なかったこと。TENGAはおかげさまでたくさんの男性タレントが話題にしてくださって、手に取るハードルが下がりつつあるけれど、irohaはまだ全然知られていなかったし、「女性がする性の話は、セックスはセーフだけどセルフプレジャーはアウト」という不文律を感じていました。そんな状況で世の女性たちがirohaを手に取るには、ハードルが高すぎる。
そこで社内の女性が顔を出して「こういう女性たちがirohaを世に送り出していますよ」と伝え、安心感を抱いてもらう必要があったのです。

そんな経緯で個人でSNSを始めたりして、たくさんの方にTENGA社や各ブランドのことを知っていただく機会は作れたものの、当時「性的な領域に積極参入する女性は珍しい」という事実から飛躍して、「そのような女性は一方的に、性的対象としてまなざしてよい」と思われることもたくさんありました。
つまりは「性の話をする女性=誰とでもOKなビッチ、何を言ってもOK」みたいな認識から、セクシャル・ハラスメントな言動をされることがたくさんありました。

TENGA社のミッション「性を表通りに、誰もが楽しめるものに変えていく」の「誰もが」には、性別や年齢、障害の有無にかかわらずありとあらゆる人が該当するのですが、このような偏見が存在する時点で少なくとも女性は性を楽しみづらく、ミッションは達成されないわけです。
したがってPRとしては、まずはお客様が安心して性的な欲求と向き合える、性を楽しめる情報環境づくりが特に必要な時期でした。

▼性=一部の好事家だけではなくみんなに関係あること

そんな状況の中、2018年頃からありがたいことに注目してくださるメディアが増え、TENGA社の目指す世界やビジョンについてご取材いただくことが多くなってきました。

特に印象深いのは、2018年1月放送のテレビ東京「おしゃべりオジサンと怒れる女」に、工藤さんとともに出演させていただいたことです。
「社会は男性器の名称には比較的寛容なのに、なぜ女性器の名称には厳しいのか」「性を楽しむのに性別は関係ないはずだ」といった問題提起に共感して、テレビというメディアで取り扱ってくださったこと、本当にありがたく思います。

余談ですが、今年8月にNHK Eテレで放送された番組『はなしちゃお!』で、ラランドのサーヤさんが「なんで、まんこって言っちゃいけないんだろうね?」と仰ったのを聞いた時、時代が変わったことをひしひしと感じました。
タブー視されているから知らない、知らないから怖い。そんな場所が自分の体にあるのって心地よくないですよね。性器の名称や形態って笑い話にされるか、さもなくば遠ざけられがちですが、こうやってメディアがフラットに発信してくれること、女性の自己受容という観点からとても大事だと思っています。


そして2018年8月には、大阪の大丸梅田店で女性向けブランド「iroha」初のポップアップストアが開催されました。

おかげさまでテレビや新聞でも紹介していただき、記事を読んだ人で連日ポップアップストアは大盛況。フェムテックブームもまだ到来していない日本でいきなりプレジャーアイテムを百貨店が売るのですから、今思えば時代を先取りしまくった取り組みでした。
irohaにお声がけいただき、粘り強く各所に働きかけて、実現までこぎつけてくださった大丸梅田店の皆さまには、本当に頭が上がりません。

ちなみにこの頃、TENGA社の中でもブランドの主力はやっぱり「TENGA」。「iroha」の存在感は今よりずっと小さくて、当たり前ですがTENGA社内以外では「セルフプレジャー」という言葉も伝わらないし、世間ではセルフプレジャーする女性=性的なことに著しく興味関心の高い、一部の限られた女性という見られ方をしていました。
しかしポップアップストアを訪れたのは、20〜70代という幅広い年齢層の、いわゆる “普通の” 女性たち
「この色かわいいね」「私これが好き」と楽しそうにアイテムを選ぶ女性たちの姿を見て、TENGA社が目指す世界を実現するための、大きな一歩が踏み出せたという手応えを感じました。
この後も2回ポップアップストアを開催し、2019年11月には同じく大丸梅田店5階に、irohaの常設店がオープンとなりました。

とはいえ、大きな一発で全てが変わるわけではありません。これまでエロの文脈で語られることがほとんどだった「性」が、もっと拡張された文脈で語られ、みんなに関係があるものだと思ってもらうために、irohaではトークイベントを地道に実施していきました。

iroha RIN発売記念「快楽解体新書~女性の身体のナカとソト~」

膣内への刺激で得るオーガズム、いわゆる“中イキ”について医学的な見地から解説しつつ、セルフプレジャーやパートナーとの性生活をどう楽しんでいくかを語りました。
“中イキ”というとエロ文脈で捉えられがちですが、「挿入でオーガズムを得られなくて、パートナーに『不感症じゃないか』と言われて自信をなくす女性はたくさんいる。医学的に女性の体を知り、パートナーと相互理解を深めながら性交渉を楽しもう」というと、これはもう女性の性的自立とコミュニケーションの話なんですよね。
そのような視点からライフスタイルメディアが取り上げてくださって、非常に楽しく感慨深いイベントでした。

iroha POPUP STORE 大丸梅田店 3回目開催記念
「女性の性をめぐる物語〜揺れ動いてきたセルフプレジャーの歴史〜」

「そもそもなんで女性のセルフプレジャーってタブーなの?」という疑問に対して、西欧と日本の歴史をたどりながら、その価値観が生まれた文化的・医学的背景について紐解きました。
世界初の電動バイブレーターは、女性のヒステリー治療のために生まれたとか。写真中央のスライドに表示しているのは、実際に開発されたバイブレーター(?)の絵。ヒステリー治療にバイブレーター??と思われるでしょうが、当時の(今からすればトンデモな)理論で大真面目に下された結論なんです。
こんな風に「性に関する“当たり前”は、時代とともに変化していく。その“当たり前”が作られる過程を学ぶことで、ひとつの価値観に囚われすぎず、自分の性をフラットに見られるのではないか」というメッセージを託したイベントでした。

2019年〜2020年頃

▼ファッション、そして性教育の領域へ

さて、ここまでirohaの話ばかりしていたのですが、他にもビッグニュースが目白押し!
2019年3月には、有楽町の阪急メンズ東京にTENGA初の常設店「TENGA STORE TOKYO」がオープンしました。

TENGAは(irohaも)おかげさまでたくさんの小売店様で販売いただいていますが、TENGAスタッフが直接接客するお店はこれまでありませんでした。
このお店ができて、TENGAについていきいきと話すスタッフを見て「TENGAの印象変わった!」と言ってくださるお客様もたくさんいらっしゃいます。
「性」がエロ文脈ではなく、ファッションやカルチャーの文脈として捉えられるようになったという点で、これもまたひとつの大きな一歩でした。

そして同年11月には、TENGAヘルスケアから10代向け性教育WEBメディア「セイシル」がオープン!

10代の方から届いた「性のモヤモヤ」に、たくさんの専門家が回答するというこれまでになかった仕組みです。おかげさまでオープン時から今に至るまで、たくさんの反響をいただきました。
5周年を迎えた今では年間約600万PVのメディアに成長し、こうやってポップに、かつ信頼できる情報を得られる場所が切実に求められていることを実感します。

ちなみに10代の方だけではなく、大人の方もセイシルをたくさん閲覧されています。
大人には大人の知識が必要だ…!ということで、つい最近「おとなセイシル」もオープンしました。かゆいところに手が届く、面白くて学びがたっぷりの素敵なメディアなので、ぜひご覧になってみてください。

そして2019年の思い出深いイベントといえばこちら。TENGAイチ舞踏会です。

ソロあり、同性同士のペアあり、異性装ありというジェンダーフリーな社交ダンス競技会をスポンサードさせていただきました。
ちょうどこの頃、「社交ダンスは男女のペアで踊るもの」というこれまでの考え方に対して違った見方をしてみよう、というムーブメントが起こっていました。
そんな時期にお声がけいただいて実現したこの会は、参加者の皆さんがとっても楽しんでくださって、おかげさまで大盛況となりました。楽しいことを通してビジョンを伝えるという意味でも、非常にTENGAらしいイベントだったと思います。

▼コロナ禍での思わぬ変化

この頃はまだオフラインイベントも多く開催していましたが、2020年にはコロナ禍が到来。
フェムテックブームの盛り上がりと、「おうち時間を充実させよう」というメディア各社の特集が重なり、irohaが「セルフプレジャーで自分の心身とじっくり向き合い、心地よく過ごすためのフェムテックアイテム」として女性誌に取り上げられるようになっていきます。

エロでもなく、真面目に語るかんじでもなく、あくまでナチュラルに、生活の一部としてセルフプレジャーが語られる。この語り口の変化というのは、まさしく「女性の性」に関する時代の変化を表していると感じます。

これまで挙げてきたのは製品やブランドに紐づく情報発信ですが、TENGA社は必ずしも会社のやっていることと関係ない、硬軟さまざまな性の情報をお届けしてきました。
メディア関係者向けニュースレター「月刊TENGA」です。

コロナ禍で人々の生活様式が変われば、性に関する領域にも変化があるはず。ということで、2020年8月には「新型コロナとセックス・マスターベーション調査報告」を発表しました。

この記事の冒頭で「性を楽しめる情報環境づくりが重要」という話をしましたが、まさしくそれを実現する大事な手法のひとつで、PR会社さんと二人三脚で長年作り上げてきたのが「月刊TENGA」でした。
※月刊TENGAにもたくさん思い入れがあるのですが、語りすぎると長くなるので……詳しく知りたい方は、Markezineさんにインタビューしていただいたこちらの記事をご覧ください。


そしてこの年、他にも新たなプロジェクトが生まれました。株式会社JobRainbowさんと一緒に取り組んだ、LGBTQ当事者が自分らしい働き方を見つけるためのオンラインキャンパス「PRIDE SCHOOL」です。

TENGA社は創業当初からゲイコミュニティとも深い繋がりがあり、セクシャル・マイノリティサポートの一環として寄付活動やレインボープライド出展をしていたのですが、コロナ禍によってさまざまなイベントが中止に。
これを機に「より当事者の役に立てる仕組みがないものか」と考えていたところ、JobRainbowさんからお声がけいただいて実現しました(詳しい経緯や理念はこちらをご覧ください)。
自分に自信のなかった受講者の方が、最終グループ発表の頃には表情豊かにいきいきとご自身の考えをお話されていて、開催してよかったなぁ…としみじみ思ったプロジェクトです。

2021年〜2022年頃

この頃から西野が国内マーケティング部の部長になり、いよいよ管理職業の比重が増えてくるのでちょっと記憶が曖昧なところもありますが行ってみましょう。

コロナ禍がまだ収束する気配を見せなかった2021年、オンラインの情報発信がますます重要になる中、irohaは他業務に手を取られて公式SNSやオウンドメディアをうまく活用できないでいました。
そんな時に新たなメンバーが次々joinしてくれて、irohaに関わるスタッフの組織体制も徐々に充実してきました。

ちなみに、私の入社とほぼ同時期の2017年3月にデリケートゾーンケアブランド「iroha INTIMATE CARE」ができたのですが、当時は広告出稿先が非常に限られていました。プレジャーアイテムではなく、デリケートゾーンケアですらそんな状態なのですから、広告手法はほとんど使えませんでした。
それが今では大手コスメメディアでも盛んにデリケートゾーンケア特集が組まれ、女性向けの一般的なカテゴリとして広く浸透しています。
またプレジャーアイテムのirohaもさまざまな女性が自発的におすすめしてくれて、広告出稿先の幅も広がりました。これだけでも、「女性の性」が社会に受け入れられてきたことを実感します。
※irohaのPR戦略については、こちらもMarkezineさんのインタビューで詳しくお話させていただきました。


▼仕事、楽し〜〜!(白目を剥きながら)

さて、この頃のビッグニュースといえばなんと言ってもTENGAロケットプロジェクト。ロケット開発・打ち上げを民間で行うインターステラテクノロジズ社のロケットメインスポンサーとなり、TENGAの小型ロケットを打ち上げました。

FM大阪のラジオ番組「TENGA茶屋」にゲスト出演させてもらった時、ケンコバさんに「社長がTENGAロケット打ち上げる〜言うた時、社員の皆さんみんな白目剥いてたんちゃいますか」と言われて「なんで分かるんですか…?」と素で答えたことを覚えています。
プレジャーアイテムの会社に入ってロケット打ち上げに関わること、誰が予想していた??
しかしこういう予想もしない新たな挑戦が飛び込んでくるのが、TENGA社の面白いところ。分からないなりに記者発表会などみんなで頑張りまして、ロケット打ち上げめちゃくちゃ感動しました。あれは現場にいる人にしか分からない凄まじさがあります。
インターステラテクノロジズ社の皆さまには、二社三脚で本当に貴重な体験をさせていただきました。ロケット初心者の我々をたくさんサポートくださってありがとうございました…!
ちなみにTENGAスタッフ的には、ロケット発射のYoutube中継や発射直後の記者会見をすべて内製で実施するなど、おそらく過去最高難易度の仕事でした。これだけの内容を自社だけで行う会社は、あんまりないのではと思います。

そして同じく2021年には、Amazonプライムビデオ配信の水原希子さんプロデュース番組「キコキカク」にTENGA、irohaが登場!

iroha製品に詳しく、TENGA社オフィスを歩きながら「あっこれ知ってる!」「この色かわいいですよね」と居合わせたスタッフとお話される水原さん。その後会議室に移動して、広報3人とともに「女性の性」についてディスカッションしてくれる水原さん。 楽しくお話させてもらいながら、「これってめちゃめちゃ革新的なことなのでは??」と頭の中は大興奮でした。本当に光栄で、楽しい思い出のひとつです。

この出会いが、まさかのちにこんなに大きなプロジェクトに繋がっていくとは……。

2023年〜2024年頃

ということで2023年、ついにあのプロジェクトが始まりました。

▼iroha10周年アンバサダーに水原希子さんが就任!

3月3日、読売新聞朝刊に全面広告を掲載。
プレジャーアイテムブランドとして新聞広告が掲載されるのは日本初のことでした。

そして同日、水原希子さんをお招きしたiroha10周年記者発表会を実施しました。

これってめちゃめちゃ革新的なことなのでは??(2回目)」と思いながらお話していたら、あっという間に時間が過ぎていきました。まさか、カメラの前で水原希子さんとセルフプレジャーについてお話する機会が2回もあるとは。人生とは本当に愉快なものです。

過去にTENGA社が行った記者発表会のうち、この会は参加者数が最多となりました。
モデル、俳優として国際的に活躍されている水原さんがアンバサダーに就任され、残念ながら放送に至らずでしたがテレビ局のカメラが入り、多くの方に見守られて記者発表会を実施できたというのは、まさしく「性を表通りに」そのもの
参加されたメディアの皆さんもまた、「女性にとって性は大事なテーマだ」という気持ちでフェムテックやirohaを取り上げてきてくださった方々です。もちろんビジネスの場なのですが、根底の部分でポジティブな共感を寄せてくださっているのを感じました。
おそらくロケットプロジェクトと同等の極限状態だった準備期間の疲労が吹っ飛ぶくらい、心に残る1日でした。

水原希子さんの本当にスペシャルで素敵なところは、「セルフプレジャーって世の中に認められてきてますよね」ではなく「私にとってセルフプレジャーはこういう存在です、irohaのこういうところが好きです」と、ご自身を主語に本音かつ自然体で語ってくださるところです。
その語り口が、世の女性たちのセルフプレジャーに対するハードルをどれだけ低くしてくれたかは計り知れません。
実際、この会見を終えてから展示会に出展すると「水原希子さんのニュースで知りました!」というお客様が本当に多く、また「希子ちゃんが出てたから安心して買いに来ました」と言ってくださる方も。女性の性において、またひとつフェーズが変わったことを感じます。

▼「TENGA LAND」オープン、アパレルアイテムの広がり

そして翌年には、原宿の新名所「ハラカド」に「TENGA LAND」がオープン!

なんといってもこちらの回るTENGAが有名ですが、取材に来てくださったメディアの方に「こちらはなんで回ってるんですか?」と聞かれて「さあ……なんで回ってるんでしょう……」と広報失格な回答をし、隣にいた社長に聞いたら「なんでって聞かれると困っちゃうな……」と非常に直感的な答えをもらったことも印象的です。
感性を刺激する場所、TENGA LANDにぜひ皆さんもお越しください

TENGA LANDではアーティストコラボプロジェクト「TXA -TENGA by Artist-」のアパレルのほか、TENGAブランドのオリジナルアパレルも多数販売しており、どれも非常に人気です。

こちらは今年10月に開催した「超都市伝説 山口敏太郎の不思議びんびん展」の記念アイテム。こちらも実にTENGAらしい、何が起こるか分からない奇想天外イベントでした。レポートも上がっているので、よろしければぜひご覧ください。

TENGAブランドとしても、音楽やストリートカルチャー、さまざまな分野の人やブランドとコラボしています。
特に原宿のど真ん中にあり、ユースカルチャーとの関係が深いハラカドにTENGA LANDがオープンしたことで、TENGA STORE TOKYOともまた違った客層の方が来店されることとなりました。
「女性の性」について真正面から語るiroha、性教育や妊活をキーに性の大切さを語るTENGAヘルスケアとは異なる観点から、TENGAブランドもまた「性を表通りに」を体現しています。

終わりに

女性誌でセルフプレジャー特集が次々に組まれ、性教育に関する話題がテレビで取り上げられ、有楽町や原宿にTENGAの店舗がオープンする。水原希子さんプロデュースのirohaと、渡辺直美さんプロデュースのウーマナイザーが並んで販売されるなんて、入社当時はまったく想像できませんでした。

それもこれも、「性に関する悩みをもっとオープンに解決していこう」「性のポジティブな面をもっと世の中に広げていこう」と考えるたくさんの方がいらしたからこそ実現した世界です。
メディアの方々や小売店の皆さま、医師や性教育に関わる皆さま、インフルエンサーの方々や「iroha部」のように自ら情報発信してくださる皆さま、製品を使ってくださる皆さま……そしてTENGA社のみんな。
業界やメーカー/ユーザーの垣根を超え、さまざまな方と活動をともにして来られたこと、心から幸せに思います。

PRは「Public Relations」の略です。これは単なる広報活動だけではなく、Public、つまり世間の色々な方と関係を築き、自社の持てるリソースでよりよい社会を志向することです。
その仕事の奥深さを、8年間でありったけ学ばせていただきました。本当にありがとうございました。

ちなみにTENGA社の男女比率もだいぶ変わりました。入社当時は女性3割だったのが、現在は女性が4.5割とほぼ半数。女性スタッフのインタビューや関連記事を読んで入社を志してくれる人も多く、「女性は性の客体ばかりではなく主体にだってなるんだ」「みんながそれぞれ性を楽しめたらハッピーだよね」という大変ポジティブなバイブスを感じます。こういった変化を見て、「ある地点まで仕事をやりきったな」と思ったのが、いくつかあるTENGA社退職理由のうちの大きなひとつです。

年明けからは、まったくの別業界でまた広報を担っていく予定です。その一般的な企業広報活動とは別に、個人として書き物もしていこうかな〜とぼんやり考えているので、もしまたお目に掛かれたら嬉しいです。ここまでお読みくださってありがとうございました!


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