アコギ回顧録 Vol.26 「アコースティックギターと向き合い始める」「対決」「セットアップ」
ギターを道具(弾くもの、使うもの)として捉え、プレイヤーの視点から見た良いギターとはどのようなものか?その答えを追い求めて50年余り。所有したギター本数も3桁に届くぐらい?!
その答えと言えるかどうかわかりませんが、過去~現在を振り返って自分なりの考え方をまとめてみようと思いました。アコギ好きの方、興味のある方にとって、少しでもお役に立つことができれば幸いです。
「ギターと向き合い始める」
セットアップの大切さの本当の意味も知らず、ましてやオールドギターのほんの一部分しか知らない自分でしたが、この日から真剣に楽器としてのギターというもの、アコースティックギターとその音について考え始めました。
少しずつ、本当に少しずつですがアコースティックギターの音(鳴り方)、それに関係するすべての事柄について考え始めました。
スチールストリングスのフラットトップがどのように進化してきたのか?これについてはマーチンの歴史がそのまま当てはまるのではないかと思いますが、ギブソンの存在もまた同様に非常に大きなものだったと思います。しかし飛躍的にそれぞれのメーカーが進歩したのは、バックグラウンドにあったその時代の音楽の存在ではなかったでしょうか?このあたりのことはマーチンについて書いてあるものなら少しは触れられていると思います。
材料として使用されている木材にはどのようなものがあるのか?それぞれの特徴はどのようなことなのか?それによってどのようなジャンルに使い分けられているのか?
ボディの大きさや形状、木材との兼ね合い、プレイヤビリティ、スケールなど主にハード面。
オールド、ヴィンテージについてのプレイヤーサイドの考え方、コレクターサイドの考え方、それぞれから見たオリジナルの意味など。
“鳴る”ということの意味、音量の壁(鳴ること=音量が大きいことではない)。音質・音色。
セットアップ及びメンテナンス、リペアーについて。
だいたいこんなところでしょうか、他に細かいことはたくさんあると思いますが、概ねこんなところで。
「対決」
ターニングポイントとなった神戸のギターショップ(ヒロコーポレーション)に、暇を見つけては足しげく通い、これらのことをすべて思いつくまま質問していきました。自分もアコギに関してはかなり自信を持っていましたから、半ば喧嘩を売りに行っていたと言っても過言ではありません。あくまでも向こうの言い分はセールストークだと思っていました。なので、いつかぎゃふんと言わせてやる!ずっとそんな思いで通い続けていました。
そして・・・。
かなり時間はかかりましたが、それまで自分の中にあると思っていた“答え”はことごとく崩れていきました。というより自分の底の浅さを思い知らされたと言った方が正しいかもしれません。この神戸のギターショップのオーナーは本当のプロでした。ギター本体の構造や鳴りについてのこともそうですが、木材のことに関しても相当な知識を持っている方でした。
そんなこんなで、自分の底の浅さを思い知り「参りました!」と思い始めた頃には1年半ほどの月日が過ぎていました。今思い返せば、自分もなかなか強情なヤツやったんだなと思います。
後日そのギターショップのオーナーからも言われました。「お前ほど難儀な客はおらんかった!おかげでこっちもよう勉強させてもろたわ。」
ヒロコーポレーションの現在の入り口
ヒロコーポレーションの以前の入り口(今はストックルームになっていて、使用されていません。矢印のシールはありませんでした。)、とてもギター屋さんの入り口とは思えない分に起きですよね。ここまで来て、入れずに帰ってしまったお客様もかなりおられたみたいです。
「セットアップ」
自分の中で大きく考えが変わっていった原因の一つにセットアップがあります。マーチンのオールドもちろんのこと、新品でもほとんどセットアップしなければ使えないということでした。「えっ、なんで?新品のうちからなんでセットアップが必要なん?」と思いましたが、何度も話をしているうちに何となくその意味がわかってきました。そのことが決定的にわかったのはそのギターショップでギターを買ってからです。 完璧にセットアップされたギターを使い慣れてしまうと、セットアップされていないギターのアラが気になって仕方がありません。ギターの本質を見極めるためには、まずきちんとセットアップされていなければだめだと思います。
余談ですが、このショップでは以前(70年代の初期)新品のマーチンを扱っていたことがあるそうです。当時のマーチンはそのまま使える状態のものはなく(ピッチが全く合わないものがほとんどでした。)、かなり苦労して(費用をかけて)セットアップしていたとのことでした。そのおかげで経費がかさみ、定価よりも高い価格に設定しなければならなかったそうです。いかに新品と言えども、定価より高いマーチンを買う人はほとんどいなかった。(当然そうなりますよね。)それでもプロのギタリストは購入してくれたらしいです。残念ながら一般の方には売れなかったので、新品のマーチンを扱うのはやめたということです。
最後に、このショップは他の店と何が違ったのか?
応えはシンプルでした。ギターを楽器として見ること、すなわち“弾くこと”“使うこと”を第一に考えるということでした。そのためのベストなリペア、調整をしたギターをプレーヤーに提供する。これに尽きると思います。
そういう観点から言えば、ヴィンテージの最も価値があることとされている“オリジナルを保つ”(触らない=リペアやパーツの交換等をしない)ということを否定することになります。ギターは常に変化しています。その変化のほとんどが楽器にとって良くないことです。オリジナルを保つということは、良くない状態を保つということでもあります。
長くなるので、オリジナルの価値云々についてはまた別に番外編で書いて行きたいと思います。
ヒロ・コーポレーションのホームページはこちら
https://www.hirocorporation.com/
You Tubeチャンネルもあります。
https://www.youtube.com/channel/UCeZwOmJlmpTp-7WTsPGqRKQ
ヒロコーポレーションのオリジナルギター
The Fields MD-SC BRW(2008年製)
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