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「トリファイド加工の話」「最近のビックリ!!」

 「終活ギター アコギ庵」「アコギ弾き比べサロン アコギ庵」です。
 アコギ一筋54年。アコギの終活をやろうというオッサンが、《何かアコギ好きのためにできることはないか?》というところからスタートしました。アコギ好きのための”Support and Assist”を目標に、何かしらお役にたてることがあればいいなと思っています。
 そうそう簡単に弾くことができないと思われるギターも、何本か用意しています。初心者の方用、中級者用のギターもあります。とにかく来て弾いていただいて、そこから何かが始まることを期待しております。アコギ好きの皆様とお話しすることを楽しみに、お待ちしております。

「トリファイド加工の話」
 ギター用材のトリファイド加工(メーカーによって違うネーミングもあります。主にトップ材とブレイシングに対して行われる加工です。)が当たり前のようになってきました。MartinでもMODERN DELUXE SERIESというモデルが、レギュラーラインとして製作されています。
 これらのギターは新品の時から、かなり乾いたサウンドになっているようです。何本か弾かせてもらったことがありますが、音の面ではかなり良いのではないかなという印象です。
 たまたまですが、弾かせてもらったのは全てマーチン系(塩﨑雅亮さんの作品、プリウォーのD-45モデルが2本、リトップされたヴィンテージのD-35が1本)でした。しかも全てサイド・バックがハカランダのものばかり。これだけでエイジドの全てを語るのはどうか?とも思いましたが、今感じていることを書いて行きます。

 マーチンではV.T.S(Vintage Tone System)、ヤマハではA.E.R、他にもベイクド(baked)などと言われることもあります。(アメリカではよく見かけます。)中身としてはほとんど同じと考えても間違いではないでしょう。簡単に言えば「人工的に創り出された経年変化」といってもよいと思っています。

 ヴィンテージギターのサウンドの特徴は、何と言っても枯れていること、ヌケの良さだということは誰しも否定することのできない事実です。ヴィンテージギターを弾いてそのサウンドに慣れてしまうと、新品もしくはそれに近いギターはどうしても湿った音に感じてしまいます。言葉にしてうまく伝えることができるかどうかわかりませんが、個人的には「新品のギター=生乾きの音」という感覚を持っています。また、乾いて枯れていればよいのか?というのも難しい問題で、枯れ過ぎている音も自分は好きではありません。頃合いが難しいのですが、あまりに枯れ過ぎていると"木の持つ温もり"のようなものが感じられなくなってしまうからです。本当に良く鳴っていて適度に枯れたギターから感じるサウンドはまさに"木の音"のように思えます。
 たった3本弾いたことがあるだけなので強く言い切ることは出来ませんが、トリファイド加工された材を使ったギターのサウンドは本当のヴィンテージギターのサウンドとは少し違うのではないかなという感想を持っています。「最初からヌケの良い音で、普通の新品よりは輪郭がクッキリとしている。」という感じはします。が、現実に長い時間の流れの中で熟成されてきたサウンドとは少し違うような気がするのです。個体差は当然あるでしょうし、もっと多くの個体を弾くことができればまた自分の感想も変わってくるかもしれませんが。

弾かせてもらったことがある1968年製のMartin D-35
外観はほとんど新品だと言っても良いほどきれいな状態でした。
トリファイド加工されたシトカスプルースでリトップされています。
バックのハカランダはこんな感じです。

 トリファイド加工=人工的に経年変化を創り出したものであり、確かにそのサウンドには魅力があると感じています。が、自分の中には、マイナスの面もあるのではないか?そんな疑いも持っています。一つは、トリファイド加工がされていない普通のギターと比べて、完成後の変化は少ないであろうということです。
 トリファイド加工されたものとされていないもの、両方を相当数製作された経験のあるビルダーさんから聞いた話です。トップにブレイシングを接着する作業の際、接着剤が完全に機能するまで一定時間置いておくことになります。この際トリファイド加工がされていない場合は、時によっては板が動くことがあるらしいです。(それぞれの材がどれぐらいシーズニングされていたのか?であるとか、気温や湿度の影響もあると思います。)これに対してトリファイド加工された材の方は、ほぼ動くことがないとのことでした。安定しているということですね。これはある意味良いことではあるのですが、視点を変えると"完成後もあまり変化しない。"ということになります。木が変化しない=音も変化しない、ということになるのではないか?
そう思っています。よく言われている「弾きこんで鳴らして行く、育てる。」というような楽しみは感じられないかもしれません。そこはまあ、そのギターのサウンドに満足しているのであれば、それほど問題ではないのかもしれませんが。
 もう一つのマイナス面は耐久性です。数十年あるいはそれ以上の経年変化を短い時間で人工的にさせてしまうのですから、その寿命は短くなるのではないかということです。これはある程度時間が経過しなければわかりませんので、今のところなんとも言いようがないのですが・・・。まあ普通の使用頻度であれば(アマチュアの方の使い方ぐらいであれば)、心配ないだろうなとは思っていますが。

※参考:東京のギターショップ"Blue G"さんのホームページより

 トリファイド加工された材を使っているメーカーとしては、一番有名だと思われる Pre-War Guitars。リーズナブルな価格とは言えませんが、本物のヴィンテージを買うことを考えると間違いなくお買い得感があるように感じます。まだ弾いたことがないので、弾いてみたいと思っています。


「最近のビックリ!!」
 「ヴィンテージギターが高い!」またか!という声もあると思いますが、またです。ここ最近少しは落ち着いてきたのでは?という感じで見ていたヴィンタージギター市場。モノによっては、まだまだ行くかも?と思ってしまいました。

おそらく1970年代前半(ジャーマントップ)のD-41としては、世界一では?というほどの
コンディションです。が、値段が凄かったので、売れないだろうという予想をしていました。

 ジャーマントップのD-45はコンディションの良いものが多いですが、それと比べるとD-41は弾きこまれたものが多いのでは?という見方をしています。そんな中で、これほどきれいなD-41は無いかも?と思っていました。しかしD-41はD-45と比べると、明らかに人気の点で劣ります。「いくら何でも、この価格では売れないだろう。」そう思える価格で出ていました。
 「う、売れてる~!!」いやー、驚きました。自分が予想していたよりもはるかに早く売れてしまっていました。

 他のものと比べて格段にコンディションのよい個体は、特別なのでしょう。あらためてそう思わせられました。他のモデルでも、人気があってコンディションの良いものはまだまだ値上がりする余地があるのかも?


 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
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