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「マーチンを超えるマーチン Part 2」

 「終活ギター アコギ庵」「アコギ弾き比べサロン アコギ庵」です。
 アコギ一筋54年。アコギの終活をやろうというオッサンが、《何かアコギ好きのためにできることはないか?》というところからスタートしました。アコギ好きのための”Support and Assist”を目標に、何かしらお役にたてることがあればいいなと思っています。
 そうそう簡単に弾くことができないと思われるギターも、何本か用意しています。初心者の方用、中級者用のギターもあります。とにかく来て弾いていただいて、そこから何かが始まることを期待しております。アコギ好きの皆様とお話しすることを楽しみに、お待ちしております。

「マーチンを超えるマーチン Part 2」
 日本を代表するアコースティックギタービルダーであり、マーチンギターの研究者(探究者)でもある塩﨑雅亮さん。

塩﨑さんのざっくりとしたプロフィール
 CSN&Yのマーティン・サウンドに魅了され、ギター製作に目覚めた塩﨑 雅亮氏は、1982年*シーガル弦楽器工房を設立。(*現、エム・シオザキ弦楽器工房)中島 馨さん (Kaoru Acoustic Craft)、日高 雅樹さん (HIDAKA GUITARS)、高崎 和義さん (Fellow)など、日本を代表するギター製作家が工房には門下生として名を連ねる。ギター製作における知識と技術は当時から既にトップ・クラスであり、現在も日本屈指の製作家として、非常に高い次元でのギターを輩出し続けている。
ヴィンテージ・マーティンの研究にも余念がなく、その第一人者としても広く知られている。

工房で作業中の塩﨑さん

 その塩﨑さんに、1950年製のマーチンD-28をD-45にコンバートするお願いをしたのが昨年の9月でした。あれから1年と1ヶ月、待ちに待ったギターがついに出来上がりました。当初は今年の春ごろに完成する予定でしたが、諸々の事情で遅れていました。その理由の一つがトップ材の選定です。過去に何本もコンバージョンの製作をされて来た塩﨑さんですが、トップは全てアディロンダックスプルースだったそうです。今回はジャーマンスプルースでお願いしたので、「これだっ!」という材を見つけるまで時間がかかってしまいました。塩﨑さんが「これで行きましょう。」というジャーマンが見つかったのが今年の1月でした。他にも塩﨑さんしかできないリペアの依頼があったりと、どんどん当初の予定から遅れて行きました。こちらとしては急かすつもりはありませんでしたので、常に「自分のペースで、じっくりやってください。」と伝えていました。

 そうしてやっと出来上がったコンバージョンのD-45、予想を超える素晴らしい出来でした。ざっくりとしたスペックは下記のとおりです。
トップ:ジャーマンスプルース(40年もの)
サイド・バック:1950年製のマーチンD-28のものを使用
ネック:ホンジュラスマホガニーで新たに作成
その他:サイド・バックにかかるネックブロック、ライニング、割れ止めなどは、元のD-28のものを再利用。

ばらした状態のサイドと関連するパーツです。ライニングや割れ止めまであります。
これらのパーツをすべてニカワで再接着して、一から組み上げなおしたとのことです。
出来立てのほやほや、新品の塗装の匂いがプンプンしてます。

 装飾に使用されているアバロンは、すべてラミネートではない本物のアバロン。(おそらくですが、今現在ラミネートのアバロンではなく本物を使って製作しているのは世界中で塩﨑さんだけでしょう)

40年物のジャーマンスプルース、高音がメッチャ綺麗に響きます。
バックのハカランダ、きれいな柾目です。
サイドもメッチャ綺麗な柾目です。薄いピンクのアバロンも綺麗です!

 最高の材と、塩﨑さんの熟練の技術が生まれ変わらせたコンバージョンD-45。ブレイシングパターンはフォワードシフテッドとリアシフテッドのちょうど真ん中、塩﨑さんのオリジナルブレイシングです。(2つのブレイシングのええとこ取り、とい言ってもいいです。)結果、素晴らしいサウンドのギターが出来上がりました。古き良き時代のマーチンのハカランダと、選び抜かれた40年物のジャーマンスプルース。これほどの組み合わせは、今後なかなかできないと自負しています。その材の良さを、しっかり引き出すことができる塩﨑さんの技術も凄いです!
 弾いた瞬間、ゴージャスなスキャロップの響きが飛び出してきます。音の芯も太く、低音から高音までのバランスもバッチリ!予想どおり、いや予想以上のギターになってくれました。

 プリウォーのMartin D-45、D-28を何本か弾いたことがありますが、フォワードシフテッドとリアシフテッドの明確なサウンドの差は実感したことがありません。同時に弾き比べるということの経験が無いからです。個人的には、個体差による違いとあまり変わらないのでは?という考えを持っています。(正直に言うと、個体差の方が大きいと思っています。)またどちらが良いとか悪いとかではなく、それぞれのサウンドキャラクターということでしかないと思っています。
 今回のD-45と以前コンバートしたD-28、どちらもブレイシングパターンは塩﨑さんのオリジナルブレイシングでした。2本とも素晴らしいサウンドです。ある意味"マーチンにはない音"と言えますし、自信を持ってマーチンに勝るとも劣らないと言えるサウンドです。(あくまでも個人の感想です。)
 新品(そういってもよい状態です。)で、これほど音のヌケが良いギターはそうそうないでしょう。しかも音の芯がしっかりあり、低音から高音までのバランスもばっちり。ジャーマンスプルースの持ち味である高音の澄んだきらびやかさは、他のギターにはないと言ってもよいほどです。プリウォーのD-45を含め、過去に自分が弾いてきたD-45の中でも最高かもしれません。


「今(最近)のマーチンて、どうなの?」
 前述の話と関連しますが、正直な疑問として"今(最近)のマーチンて、どうなの?"という思いを持っています。確かに"昔のマーチン"は凄かった!これは誰もが認めるところでしょう。そこに異論はありませんが、それがそのまま今のマーチンに当てはまらないんじゃないかと思っています。
 昔のマーチンは、小さな町工場で職人のおっちゃん達が手作業でコツコツギターを造っている。そんなイメージです。これに対して最近のマーチンは、大企業が大きな工場で流れ作業で淡々とギターを量産している。そんなイメージです。製作本数も桁が変わるほど増えていますし、トラブルが多いということもよく聞きます。自分の中に、最近のマーチンに関する良いイメージはありません。時代が違うと言ってしまえばそうなのかもしれませんが、自分の中では「マーチンは、もはやマーチンではない!」そんな気持ちです。

 ピックアップや音響機材の発達(進化)によってアコースティックギターのサウンドを増幅させる技術は以前に比べると、かなりレベルアップしています。偏見と言ってよいかもしれませんが、これは見方を変えるとギターの本体が鳴っていなくても他でカバーできるということではないのか?そんな疑問をずっと持っています。
 資源の枯渇によって良質の材を確保できなくなってきたために、様々な仕様変更をしてクオリティを下げない努力をしていることは認めます。しかし材の質が落ちているのは確かで、仕様変更はそれによって全体的なクオリティが下がったことをごまかすためにやっているというふうにも受け取ることができます。こんなことを言っていると、業界の方々からのお怒りが来そうですが・・・。これを認めてしまうと、新品のギターは売れなくなってしまうからです。絶対にそうだと言わないはずです。

 拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
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