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「ヴィンテージアコギ 楽器としての価値」「弦鳴りって?、木の音って?」
「終活ギター アコギ庵」「アコギ弾き比べサロン アコギ庵」です。
アコギ一筋54年。アコギの終活をやろうというオッサンが、《何かアコギ好きのためにできることはないか?》というところからスタートしました。アコギ好きのための”Support and Assist”を目標に、何かしらお役にたてることがあればいいなと思っています。
そうそう簡単に弾くことができないと思われるギターも、何本か用意しています。初心者の方用、中級者用のギターもあります。とにかく来て弾いていただいて、そこから何かが始まることを期待しております。アコギ好きの皆様とお話しすることを楽しみに、お待ちしております。
「ヴィンテージアコギ 楽器としての価値」
前回、前々回と続けて、M-factory 三好さんのMartin O-42 1921 Employee modelのことを書かせていただきました。
ごみ処理場に行く可能性が高かったギターが、
50年近く、そして仕事柄2000本近くギターを弾いてきましたが、ギターに対する概念が変わりました。絶対に手放さないし、最後に手元に残す1本は間違い無くこの個体になると思います。
と、三好さんに言わしめるほどのギターになったお話でした。
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実際に実物を弾かせてもらって、あらためてリペアやセットアップの大切さを痛感しました。アコギやエレキのヴィンテージの世界では、過去にリペアやパーツの交換等があればその価値は下がることになっています。オリジナルの状態ではないということですね。リペアやパーツの交換等は、楽器としてのコンディションをより良くするために行われるのは間違いないことなのに・・・です。(リペア・セットアップをする人の技術によっては、天と地ほどの差がありますが・・・。)つまり楽器としての価値を上げれば、ヴィンテージとしての価値を下げてしまうことになります。
過去に何度も書いてきた内容なので今さらというツッコミもあると思いますが、またまた言わせていただきます。
「それって、おかしくないですか?!」
ヴィンテージの価値を下げない=リペアやパーツの交換をせずに、オリジナルの状態を保つということです。具体的な最良の方法は、使わずに保管しておくことになります。ヴィンテージギターが評価されている大きな要素の一つに,〝枯れた鳴り”というのがあります。が、オリジナル状態のヴィンテージギターの場合、楽器としてそのまま使えるものはほとんどありません。(ひょっとしたら、100%と言ってもよいかもしれません。)そう、そんな状態で本当の鳴りはわからないのに!、良い音ということにされています。
サドルやナット、フレットも等も、自分の中では消耗品として扱っています。極端に言ってしまえば、弦と同じように時期が来れば交換するのが当たり前のパーツです。(リフレットを何度も繰り返した場合、指板の交換も必要になります。)弦はいくら張り替えてもギターの価値は下がりませんが、サドルやナット、フレットは交換すれば価値を下げてしまうようです。それはおそらく(個人的な意見です)弦はギターの機能に変化を起こさないけれども、サドルやナット、フレットの交換はギターに機能的な変化をもたらしてしまうからだということかもしれません。しかし、消耗してしまったサドルやナット、フレットを交換すれば、楽器としてのクオリティは間違いなく上がります。場合によっては全く使えなかったギターが、素晴らしいプレイヤビリティを持ったギターに生まれ変わることもあります。
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最高の材料で最高の仕事をしていただきました。サウンドもかなりタイトになりました。
業界では‴オリジナルの状態=最高の状態‴ということになってしまっています。(そういうことにされている?)つまり、新品の時の状態をキープしていれば、それが最高の状態ということになります。何度も言ってきましたが、それは「経費をかけずに最もギター高く売るための方法」でしかないと思っています。
新品の時が最高の状態、本当にそうでしょうか?
中にはそう言えるギターもあるのかもしれませんが、ほとんどの場合そうではありません。どんなギターでも、使う人のプレイスタイルによって多少のカスタマイズは必要になってきます。それこそコンマ1mm、コンマ2mmの話ですが、それがプレイヤビリティにものすごく大きく影響します。新品でも使う人それぞれの使い方や好みに、バッチリ合うということはほぼ無いです。100%にするためには、何らかの調整が必要になります。新品の場合そのような調整やパーツの交換をしても、価値を下げることにはならないようです。ヴィンテージと何が違うのでしょうか?同じギターなのに!?
おそらくですが、ヴィンテージの場合は相反する2つの観点(楽器としての価値と骨董品としての価値)で捉えられていて、新品の場合は楽器としての価値でしか見ていないということでしょう。このヴィンテージの世界だけのダブルスタンダードをうまく使われて、業界の思うツボにはまっていませんか?
「弦鳴りって?、木の音って?」
業界ではどう捉えられているのか?また、どう表現されているのか?よく知らないのですが、"弦鳴り"について考えてみました。
自分なりの勝手な考えですので、お読みいただいている皆さんに100%理解してもらうのは難しいかもしれません。アコースティックギターの鳴りに関する一つの見方として、参考にしていただければと思います。
弦鳴り=ボデイがちゃんと鳴っていない鳴り方、ということになるのですが、文字どおり弦だけが鳴っている感じです。アタック(弦をはじくこと)したときのエネルギーが効率よくボディに伝わって行かず、やたら金属的な音になってしまう鳴り方と言えばよいでしょうか。安価なギターではこのような傾向が顕著に出ますし、わかりやすいと思います。ジャパンヴィンテージと呼ばれている古い国産のギターでは、ほとんどこの"弦鳴り"を感じます。おそらく音響設計がまだまだ未熟だったせいでしょう。仕方のないことだと思っています。
よく鳴るギターの特徴として、大まかにですが①ボディの振動がスムーズ、② 良質な木材を使用している、③ ネックやブリッジの剛性が高い、④ セットアップが最適等の理由があります。これらの逆が鳴らないギターの特徴ということになりますが、私の言う弦鳴りは、相当高額なギター(当然材料のクオリティも高いです)でもありました。それはつまり、材料のクオリティとは関係なく起こりえるものだということです。ということは、弦鳴りの原因=音響設計のミスということになるのかもしれません。また、音響設計にミスがなかったとしても、工作精度が未熟(失敗)だったということも考えられます。
この弦鳴りに対して逆の表現で、ちゃんとボディが鳴っている時"木の音"がするという言い方をしています。金属的な音を感じない鳴り方、音がするということです。ギターの音の話なので、言葉で伝えるのは難しいと思っています。なんとなく「そうかな?」ぐらいの感じで考えてもらったほうが良いのではないでしょうか。アコギ庵にあるギターを弾きに来ていただければ、実際に音を聞きながらそういうお話ができるんですけど・・・。
あくまでも個人の勝手な表現に過ぎないのですが、共感していただける方が自分の周りには何人かおられます。(業界の方で、本当に良いアコギの音を知っている方が多いです。)ありがたいことです。この表現が、もっともっと一般的になったらいいなと思っています。
本編のお話とはまったく関係ありませんが、つい最近プロギタリストの方にこのギターを絶賛していただきました。嬉しいのでアップします。
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拙い文章をお読みいただき、誠に有難うございます。皆様の感想、ご意見をお聞かせください。 またアコギに関する相談等がございましたら、どんなことでもOKです。遠慮なくお尋ねください。
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