見出し画像

新規事業で1人目のデザイナーを採用する前にすべきこと

rootを創業して8年が経過しました。

これまで、様々なスタートアップ、大手企業の新規事業に外部パートナーとして関わりながらサービスや事業の成長に向き合ってきた経験から、1人目のデザイナー採用における観点をまとめてみました。

「なぜデザイナーが必要なのか?」を問う

「なぜデザイナーが必要なのか?」

その答えによって誰を採用すべきかが変わります。

事業におけるサービスやプロダクト全体の体験やユーザー評価を上げたいと考えるのであれば、答えは1人のデザイナーを採用することではありません。なぜならば、その目標は1人のデザイナーで解決するにはあまりにも大きな課題だからです。

まず必要なのは、デザイナーを採用する前に現状のプロダクト開発チームや意思決定を行う責任者がデザインまたは、サービス体験を向上させると言う行為が、どういうものであるか理解を高め認識を揃えること。

また、プロダクトやサービスは一度開発して終わりではなく、持続的かつ常に変化し成長していく生き物です。その変化に向き合い地道な開発サイクルを続けていくことが、チームの中で共通認識として持たれているかを確かめる必要があります。

この前提認識がずれている時点で、デザイナーを採用してもその効果は半減しパフォーマンスせず、すぐに組織を離れる結果になるケースが多いのが実態ではないでしょうか。重要なのは、前提を揃える活動なくしてデザイナーが組織に根付くことはあり得ないと言うことです。

デザイン組織は人をただ採用すれば実現できるものではない

経営者がデザイナーを採用すればサービス体験やプロダクト品質が上がると捉えているならば、その時点でデザインは組織に取り込めないことが明白です。デザイナーの活動はサービス体験向上をするための1要素でしかなく、重要なのはメンバーやプロダクトチーム全体にその前提が共通理解として根付いているかにかかっています。

組織において、デザインが活用される状態とデザイナーが活躍している状態は必ずしもイコールではないのが実態です。後者はよく見かけますが、前者においては組織やチーム全体でデザイン活用ができているか?と問われると、うまく行っているケースはまだまだ少ないでしょう。

その要因には、デザイナー自身よりもデザインを活用する事業サイドや開発サイドのメンバーのデザインに対する前提知識のズレが大きいことにあります。

デザイナーを迎える組織の素地をつくる

採用したデザイナーのパフォーマンスを最大化するためにも、組織における素地を作る役割を担う人材が必要です。

トップが理解を示さないのであれば、組織のカルチャーや背景を理解している意思決定者に近い役割を持った人物(COOやCTO等)の動きが重要になります。COOやCTOが、プロダクト開発や企画段階におけるサービス体験・ユーザーと向き合うことの重要性とデザイナーがそこに入ることで、どういった変化が期待されるのかをしつこく訴求していくことが必要です。

とは言ってもデザイナーと一緒に仕事をしたことのない人、または今までアウトソース式での開発しかしておらず作って終わりになるケースが多いのも実態です。

そんな組織が行うべき一歩目としては、小さいスコープの中で、まずサービス改善やユーザーと向き合う取り組みを外部デザイナーを巻き込んで一緒にやってみることです。

弊社では、外部からデザインパートナーとしてクライアントに関わることが多く、過去にデザイナーのいない組織においてデザイン支援を行い、小さい成功体験をクライアントとつくってきました。

外部にデザインを依頼する際も、成果物をベースとした納品をゴールとするのではなく、あくまでもプロセスを重視しデザインが組織のプロセスへ入ることでどういった変化が生まれるのか? 生まれた変化によってどのような成果物への影響や違いが生まれたのかを意識すること。それが組織にデザインを受け入れる素地をつくることの始まりです。

組織として前提が整備されると、事業の拡大に応じて発生する事業課題、組織課題においてデザインやデザイナーの活躍を促進することが、より大きなインパクトを与えることにつながります。

デザインは投資と言う言葉を最近聞くようになってきましたが、これは組織において前提が理解された上で得られる成果です。

1人目のデザイナーに合う人物像と採用するタイミング

組織で前提を共有できたら、1人目のデザイナーを採用しましょう。では、いつがそのタイミングなのか。

企業がデザインに取り組む際は、企画から開発、リリースまでのプロセスにデザインを取り込み小さく回す経験を積むことから始めます。そのプロセスを広げて内部で自走しながら開発サイクルを回せる状態にする段階が1人目のデザイナーを採用するタイミングです。

デザイナーの採用条件に上記の前提を揃える要件と、デザイナーとしての専門性の両方のスキルを持ったスーパーマンを求める会社が後を立ちません。ですが、そんな人材はすでに成長する優秀なベンチャーに在籍しており存在しないのが実態です。

1人目に採用するデザイナーとしては、どのような人物がよいのかも触れておくと、制作するスキルは前提として、組織やチームに対してデザイン意図や設計プロセスを丁寧に開示し、事業や開発に対してデザインの言語ではなく、共通言語を作りコミュニケーションを取ろうする人物は非常にフィットしやすいと考えます。

デザイン以外の職種から見ると、デザイナーはなんだかわからないけど、綺麗なアウトプットを作ってくれる存在と捉えられがちです。これはデザイナー自身のスタンスによる影響もあり、設計や制作のプロセスを開示せずデザイナー自身の内にそのプロセスを閉ざすことが、結果的にデザインが理解し難く難易度の高いものに見せる要因となっています。

デザインを組織で活用するということは、そういった設計プロセスを開示しプロダクト開発メンバー間で共に検討や設計を行うことが重要となります。

デザイナーの中には、制作過程や設計プロセスを開示せず制作物で評価や提案をしたいデザイナーも存在します。必ずしもすべてのデザイナーがオープンである必要はないのですが、そういったデザイナーを活かすには、それを依頼する組織やチームのデザイン理解が高まらないとデザイナーが孤軍奮闘するケースをよく見かけます。

デザインは事業と組織を効果的に拡大する手段となる

デザインの本来の役割は、表面に見える形やスタイルではなく、そこへ至るまでの設計プロセスにあります。事業においてもその設計プロセスを活かすことが、ユーザーを中心とした人に焦点をあて、課題やニーズに寄り添った成果物を生み出すことにつながります。

重要なのはその向き合う活動をデザイナー1人で行っているのか、組織で行っているのかと言う違いにあるように思います。

これまで様々な事業やイベントを通じてデザイナーと向き合ってきて見てた答えは、デザインを活用できる組織がデザイナーを活かすと言うことです。そして、デザインを活用できる組織とはデザイナーが作るものではなく、デザインを活かしたいと考える熱量と行動力を持った人によって生み出される。

重要なのは、フレームワークや手法論に依存した幻想としてのデザインに頼ることではなく、地道に熱量を伝え小さな成功体験を積み上げながらその輪を組織に広げることにあるのではないでしょうか?その結果、経営や意思決定においてデザイン活用が重要視されるようになっていくのではないでしょうか。

rootでは、外部パートナーとしてデザインを活用できる組織を支援する取り組みも行っています。こういった課題意識に興味がある方はぜひお話しましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?