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デザインリサーチの土台となる言語化力と論理的思考力について考えてみた

MIMIGURIのリサーチャーの座敷童子です。先日、Goodpatchさんの学生向けデザイナー就活サービスである、ReDesigner for Studentで、『デザインに活きるリサーチの技術』という講義をさせていただきました。

数多くデザインリサーチャーがいるにも関わらず、自分が担当して本当に良いのか分かりませんでしたが、田口さん(@kzm_tgc)が「ぜひとも学生にはリサーチを学んでもらった方がいい」と仰っていて、その情熱に乗る形で担当させていただきました。貴重な機会を頂き、ありがとうございました。

さて、講義の中で「リサーチを行う上では論理的思考力と言語化能力が重要であり、苦手ならば鍛える必要があると思う」という話をぽろっとしました。というのもリサーチとは、基本的には

  • 獲得した『データ(Deta)』を適切な言語表現によって『情報(Information)』にする

  • 複数の『情報』を論理的にとりまとめた『知識(Knowledge)』をレポーティングする

というプロセスで構成され、かつそれらのプロセスにはいずれも「論理的に言語化する能力」が関わるからです。しかし、今回の講座の中で、「どのように論理的思考能力と、言語化力を鍛えるとよいか」に関してしっかりと答えられなかったことは反省しています。

そこで今回は補講的な内容ですが、「学生であればこういう教科書や参考書を使ってトレーニングすると良いのではないか?」という仮説を提示します。これらは個人的な経験則だったり、塾講師としての指導経験など、色々なものがごった煮になっていて、確たる理論が存在するわけではありませんが、座敷童子はこういうこと実践してたんだ~と興味程度に見て頂けますと幸いです。

今回の記事は、おおよそこんな感じの記事です。

・この記事は、学部生が手に入るリソースで言語化力や論理的思考力を鍛えるなら?という観点の記事であり、社会人向けにはもっと別の方法があると考えています。
・またこれらはいずれも本質的な方法ではなく、突貫工事的であったり邪道な方法も含まれています。「浅学の自分」が「きっとこうするといいんじゃない?」という程度でコメントした程度のものです。ご了承ください。

①「読む」行為に苦手意識がある方へ

言語化する以前に、「読むことが苦手」という方がいらっしゃいます。この記事も少し長くなるので、もしそう感じる方には、少し辛い内容かもしれません(申し訳ありません)。

リサーチプロセス、特にデスクリサーチでは、多くの文献を読んだり、インタビューにおいても議事録を書き起こして読み進めたりすることがあります。「読むことが苦手」と感じることは、リサーチを進める大きなハードルになります。その苦手意識を克服しておくことは重要です。

私の個人的な見解ですが、「読むのが苦手」という方は、「読む=覚える」という意識が強いのではないでしょうか。例えば、本や教科書を読む際に、すべての内容を記憶しようとして、それが難しいと感じると苦手意識を持ってしまう。また、覚えるためには内容を正確に理解する必要があると考え、集中力が続かず辛く感じることもあるでしょう。

そんな方にお勧めしたいのは、「考えるために読む」という習慣です。「読む=覚える」と捉えていると理解できないものが出てきたら止まってしまいます。しかし、読んでいるうちに理解できない言葉やニュアンスが出てくることは自然なことです。そうした箇所はメモしておき、後で調べたり、「こういうことではないか」と考えてみる材料にすれば良いわけです。したがって読む=分からない部分を発見し、考え、深めていくためのものと位置付けてみることをお勧めします。

こうした本の読み方を学ぶのにおすすめな参考動画として、慶應義塾大学の井庭崇先生がSchooでレクチャーされている『Life with Reading 創造的読書のパターン・ランゲージ』がおすすめです。井庭先生は、読書を楽しみ、読書を創造的にするコツとしての簡単な「27のパターン」をまとめられています。考えるために読むというのは、井庭先生のいう「創造的読書」に該当しますが、そこに至るまでの道筋についても、是非ともこの動画から学んでみてください。

また、「自分は読むのが苦手だ」と思い込んでしまっている方もいるかもしれません。学生時代に現代文の成績が振るわなかったり、文章を誤読してしまった経験が積み重なって、自分に「読むのが苦手な人間」というラベルを勝手に貼ってしまうことがあります。その結果としてリサーチも諦めてしまっては才能が埋もれてしまい勿体無いです。こういった方には、荒療治が効果的かもしれません。つまり、「読むのが得意だ」という成功体験を積み重ねて、自己認識を上書きしていく方法です。

具体的には、就職活動でよく出題されるSPIの言語パートをひたすら解き続けるのも一つの手段です。問題を解いていくうちにコツが掴めてきて、「もしかして、俺って読めてるのかも?」という自信を持てるようになることがあります。苦手意識の克服は実は「荒療治」が一番効果的な場合もあります。たぶんですけど。


②「文章を書く」行為に苦手意識がある方へ

絵や物を使って表現するのは得意でも、文章で表現することには苦手意識を持っている方も多いでしょう。そんな方に向けたお話をします。

(1)書き出すことまでが辛い方へ

まず文章を書く上で、大切な前提をお伝えします。それは文章とは誰かへのメッセージであるということです。自分から友人に向けた手紙は、友人に伝えたいメッセージがあるから書くものです。上司に向けた報告書は上司に対するメッセージです。

つまり「誰か」が想定されるから文章を書けるわけです。自分の研究の師匠も、論文指導の際には「西村くんはこの論文は誰に読んで欲しいと思って書いてるの?」と想定読者を意識するようにフィードバックをしてくださっていました。

自分の書く文章は知識であり情報です。その知識や情報を用いて相手に「こうなって欲しい、こうしてほしい」と願うから文章を書くものときえます。受験における記述式(たとえば現代文)の問題を解くということも「採点官に満点をつけてもらう」という行動を願って文章を書いているわけです。

文章は「誰」に向けて書いているのかを意識することから始めることが重要であると考えています。

(2)書き上げられずに止まってしまう方へ

ここまでで「誰に向けて」書くかが決まりました。ところで、文章を書くことに苦手意識を持つ人は、「文章は最初から一気に書き上げるもの」という誤解を持ちがちです。実際に世の中に出ている文章の多くは、何度も書き直しや推敲を重ねた結果生まれたものです。最初から完璧な文章を書ける人はほとんどおらず、最初は設計図を描くように下書きをしたり、箇条書きをベースに清書したりすることが一般的です。

そのため、文章が書き上げられないという苦手意識を持っている方は「まずは設計図を描き、それをもとに文章にする」というステップを習慣化することが重要です。

おすすめの練習方法として、テーマを決めて箇条書きでアイデアを出し、それを繋げて文章にするトレーニングがあります。テーマは自由です。たとえば「秋にやりたいこと」「就職活動への不安」「最近気になるニュース」「なぜ自分は文章が苦手なのか」など、どんな内容でも構いません。最初に2分間のタイマーをかけて、思いつく限り箇条書きに書き出し、タイマーが鳴ったらそれを400〜800字の文章にまとめてみましょう。その後、一度書いた文章を「誰か」に読まれることを意識して修正していき、文章を研ぎ澄ませていきます。

この方法は、私が大学時代に「文章嫌い」を克服するために試したものです。最初は日記のような簡単な内容から始めましたが、徐々に「箇条書きで中身をつくる→文章としてつなげる」という習慣がつき始めてからクオリティを求めるようになりました。

そこで「800字文学館」という企業OBペンクラブのページを参考にしながら、文章力を向上させるヒントを探しました。今回このnoteを書くために6、7年ぶりにそのサイトを見返したので、懐かしい気持ちになります。

ちゃんと本で学習したいという読書家の方もいるかもしれません。もしも「書く」ことへの苦手意識の克服に役立つ本を紹介するならば、梶谷真司先生の『書くとはどういうことか』と山田ズーニーさんの『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』の二冊を挙げます。


③「論理的に書く」ことに苦手意識がある方へ

このトピックには様々な立場の方がいらっしゃるため、正直書くのが少し怖い部分もあります。しかし、ここではあくまで私の持論であり、体験談に基づいた話だということをご了承ください。

文章を書くことはできるけれど、「論理的に書くのが苦手」という方もいらっしゃいます。リサーチャーは定性的で断片的な発見やデータを、論理的なつながりを持たせて情報としてまとめる能力が求められます。ですので、リサーチを実践したい方は、論理的に書く力を鍛えることが重要です。

しかし、「論理的」という言葉に対して、冷たい印象を持ち、抵抗感を感じる方もいるかもしれません。

個人的には、「論理的に書く」とは、著者と読者が同じ内容を共有できる、インクルーシブな情報伝達を実現する行為だと考えています。つまり、読者が文章を読んでいる際に、「内容についていけない」や「これで合っているか分からない」といった疎外感を抱かせないための配慮が、「論理的に書く」ということです。このようなポジティブな視点を持つことで、論理的に書くことへの抵抗感を和らげながら、トレーニングに取り組めるのではないかと考えます。

次に、具体的なトレーニング方法について説明します。実際のところ、「論理的に書く方法」に関する書籍は数多く存在するので、自分に合ったものを選ぶと良いでしょう。ここでは、私が学生時代に読んで実践した3冊を紹介します。

まずは、野矢茂樹先生の『大人のための国語ゼミ』です。この本は、いわゆるガチガチの論理思考の教科書というより、「伝えたいことが相手にちゃんと伝わっているか?」という日常的な観点から始まります。そのため、学生さんでも頭に入りやすい書籍だと思います。また、練習問題も含まれているので、実践を通して論理的に書く力を身につけたい方におすすめです。野矢先生は哲学者でありながら、一般向けに論理的思考に関する書籍を多く出されています。

次に紹介するのは、吉岡友治先生の『文章が一瞬でロジカルになる接続詞の使い方』です。論理的な文章を書く際に特に重要なのが「接続詞」です。接続詞は「だから」「しかし」「ところが」「また」といった、文と文をつなぐ役割を持つ品詞であり、文章全体の交通整理をしてくれる、いわば道路標識のような存在です。

接続詞が適切に使われていることで、文章の流れがスムーズになり、読者が迷うことなく内容を追うことができます。逆に、接続詞が不適切だったり、使われていなかったりすると、読者は誤読したり、重要な部分を見落としたりする「事故」を起こしてしまう可能性があります。つまり、接続詞は読者が文章を安全かつ確実に理解するための重要な道具なのです。

第三に『理科系の作文技術』です。木下是雄先生により1981年に書かれた名著であり、今でも大学の学部の導入授業などでは教科書指定されることの多い書籍です。自分の研究職の師匠もこの本をお勧めしていて、私自身も改めて論理的に説明するとはどういうことかを改めて理解する上でも有益でした。

「理科系」というタイトルを見て、自分は当てはまらないと思う方もいるかもしれませんが、理科系に限らず全ての方(特にビジネスマン)にも読んでいただきたい一冊になっています。

なぜなら、この本はいわゆる文学的な「美文」ではなく、論理的で首尾一貫した文章を書くことに特化した文章術を指南してくれるものであり、まさにビジネスに求められる文章にも一致するからです。2018年には漫画版も出ているみたいですので、深く理解したい方は新書版で、まずは全体像を把握したい方は漫画版でお読みください。


④「社会を考える」ことに苦手意識がある方へ

ここで取り上げるのは、「社会を考えて書く」ことに対する苦手意識についてです。日記のような個人的なことは書けるけれど、社会や世の中の広いテーマについて考えたり、論じたりしようとすると、急に手が止まってしまうという方がいます。例えば、次のような状況です。

【これはできる】
○あなたが普段触れているメディアについて書いてください。
→自分を主語として、日頃生活の中で触れているメディアを書けばいいので書ける

【これは苦手】
○日本のメディアの問題について書いてください。
→「日本のメディア」を主語として、メディアを論評しなければいけないので書けない

テーマによって難易度は跳ね上がる

デザインリサーチャーは、「個人に見られたエピソードを、社会や文化などの一般的課題へ接続して考察する」場面が多く存在します。そのため、リサーチをコアスキルにしたいと考える方には、社会を主語にして考察したり、書くことに対する苦手意識をぜひ克服してもらいたいところです。

例えば、株式会社コンセントさんが行っている「ひらくデザインリサーチ」でも、個々の経験やエピソードを起点にしながら、より広い社会的な視点で考察を深めていくアプローチが見られます。個人の体験を社会的な文脈に落とし込むことで、デザインリサーチは広範な視点で物事を理解し、解決策を見出す手法として機能します。

(1)社会に関する情報収集が不足している

「個人」について考え書くことには抵抗がないものの、「社会」について書くことに苦手意識を感じる一つの理由として「社会に関する情報収集が不足している」ことが挙げられます。つまり、考えるための材料が手元にない状態です。このため、社会的対象を論理的に考察して書けるようになるには、まずは日頃から社会に関する情報を集める習慣が求められます。

情報収集には様々なアプローチがあり、一概にこれがベストという方法はありませんが、いくつかの方法を紹介します。すべての方法を実践する必要はありませんので、自分にとって手軽に始められそうなものを試してみてください。

第一に、新聞に触れる習慣をつけることです。実家暮らしの方は家で新聞をとっていたりするかもしれません。一人暮らしの方も新聞をとっている方はいらっしゃいますが、わざわざ新規で契約はしなくても良いと考えています。例えば自分は学校に少し早く登校して、大学図書館に新聞が置いてあるのを読むようにしていました(注)。

また、大学によっては「日経テレコン(日経新聞)」「ヨミダス(読売新聞)」「朝日新聞クロスサーチ(朝日新聞)」「毎索(毎日新聞)」といった新聞データベースを導入している場合があります。これらを利用すれば、自分が気になるニュースを網羅的に調べることができます。

(注)なぜそんなことをしていたかというと、私自身が法学部出身で、授業中に新聞に出ていた時事情報が突然話題に上がることがよくあったからです。その時に、時事知識がないと話についていけなかったり、時には「君、これ知ってるかい?」と時事クイズに指名されることもありました。数百人いる教室で恥をかきたくないという消極的な理由から、自然と新聞を読む習慣が身につきました。

第二に、『速攻の時事』『日経キーワード』といった時事を解説してくれる書籍を購入して読んでみることです。これらの書籍の特徴は、公務員試験などの対策に広く用いられているものですが、リアルタイムに起きている時事をわかりやすく、体系的に解説してくれている点にあります。自分の関心を広げるための「索引」として使ってみると良いかもしれません。高校時代に社会の授業に興味を持てなかった方や、歴史よりも現在を知りたいという方はお勧めです。

第三に、自分が大学時代から現在にかけて実践している方法ですが、国立国会図書館の『調査と情報』を読むという方法もあります。初めて聞いたという方もいらっしゃるかもしれません。国立国会図書館には国会議員の活動を日々サポートしているリサーチャー(調査及び立法考査局)がおり、そんな彼らが国家や社会の課題をまとめて、国民にわかりやすく解説してくれる資料が『調査と情報』です。

この『調査と情報』はフリーでダウンロードできるようになっており、「能登半島地震への対応」「学校給食における有機農産物等の活用」「国家プロジェクトとしてのスパコン開発」など幅広いテーマで書かれています。社会を知り、考えていく為の情報源として読むだけでなく、国家の意思決定に適切な情報を提供するリサーチャーはどのように「社会」を分析して伝えているのかという「プロの技」に触れる上でもお勧めです。

(2)複数の資料をもとに統合的な見解を導く情報処理能力が不足している

「社会」について書くことに苦手意識を感じる理由の一つに、「複数の資料をもとに統合的な見解を導く情報処理能力の不足」が挙げられます。たとえ一見単純に見える問題でも、その背後には複数の要因が絡み合っています。社会的な課題について有益な洞察を得るためには、その問題が構成されている要因を多角的に検討することが求められます。

先日のReDesigner for Studentの講義でも触れた内容ですが、例えば、「なぜ日本の書店が減少しているのか」という問いについて、講義内では「書店以外の代替手段の拡充」「テクノロジーやデジタル化の影響」「書店経営の変化」「書籍市場や産業構造の要因」といった様々な視点から問題を検討しました。大切なのは、問題を取り巻く多様な要因を把握し、それらがどのように関連しているのかを「自分の頭で」理解することです。

そのために必要なのは情報処理能力です。ここで言う情報処理能力とは、「複数の資料を統合して見解を導く力」と定義できます。具体的には、さまざまな立場から書かれた資料を丁寧に読み込んだ上で、「これとこれは関連があるのではないか」「この知見とあの知見に共通性があるのではないか」「事例間の差異はこの要因が関係しているのではないか」といった仮説を、自分なりに論理的に組み立てる力を指します。

この情報処理能力を養うためにお勧めしたいのが、教育学者・苅谷剛彦先生の『知的複眼思考法』です。この本では、単一の視点に頼らず、複数の視点から物事を捉える方法や、データや情報を鵜呑みにせず批判的に分析する力の育て方が解説されています。「自分の頭で考えろ」と言われたものの、どうすれば「考えた」ことになるのか分からないと不安に感じる方には、ぜひとも一度手に取っていただきたい一冊です。

(3)そもそも社会について考えたり書いたりする機会がない

社会を考えることへの苦手意識を生むもう一つの要因として、「そもそも社会について考えたり書いたりする機会がない」という点も挙げられます。つまり演習がなかなか積めないという問題です。そこでここからは荒療治的なアプローチになりますが、「社会について考えたり書いたりする機会」はこう作ると良いのではないかという四つの提案をします。

第一に、公務員の就職活動でよく課される論作文試験を解いてみるというものです。「少子高齢化対策」や「観光振興」「新型コロナウイルス」などの社会的テーマに対して、800字くらいの分量で書くという試験となっています。自分が学生時代に中央省庁や市役所の志願者が多くいたので、彼らの話を聞いたり、サークルの部室に先輩の書いた論作文が転がっているところも見ていましたが、非常に「社会のことを考えて書く」ことの練習に向いていると感じていました。参考書を一冊買って「こんな風に考えればいいんだ~」と勉強してみるだけでもアリだと考えます。

第二に、政策立案コンテストやビジネスコンテストに出てみるということです。ある特定の社会課題に対して政策立案コンテストであれば「政策」の観点から、ビジネスコンテストであれば「ビジネス」の観点から解決を試みるという内容となっていて、出場すれば強制的に社会的な事柄を考えて書く機会がやってきます。またこれらのコンテストはチーム戦であることが多く、特にデザイナー志望の美術系・工学系の学生さんでこういうコンテストに参加する層も少ないので、皆さんだからこそ発揮できる価値がそこにはあるかもしれません。有名なのはGEILとかOVALなど。

第三に、懸賞論文コンテストに挑戦してみるというものです。出題者(主に企業)が掲示する課題に関係する論文を執筆して、優秀賞を獲得すると賞金を獲得できるものになっています。論文を書くこと自体がハードですし、授賞を目指すのも大変だとは思いますが、一つのテーマに対して様々な資料を調べてロジックを構成する練習を積む機会としては非常に有益であると考えています。「登竜門」という各種コンテスト情報が掲載されているサイトにコンペ情報が掲載されていますので是非ともチャレンジしてみてください。

第四に、書評を書いてみるというものです。書評とは、書籍の内容を紹介しつつも自分なりに解釈したり、価値付けをするものであり、社会科学系の学生は、特に学部1年~2年の間に様々なレポート課題として課せられがちです。特に「自分なりに解釈をする」上では、課題図書を読むだけでなく、他の文献にあたって類比・対比する必要があったり、また考察した内容を論理的にまとめる能力も求められるのでハードです。

MIMIGURIの運営するメディアCULTIBASEでは、「古今東南アノテート」というコーナーがあります。こちらも書籍や論文などの文献の中身を紹介しつつ、登壇者の東南裕美さんが注釈をつける(解釈をする)書評コンテンツとなっています。イメージを深めるためにもぜひともご覧ください。


とはいえ、あまり気にしなくても良い

今回の記事は、ReDesigner for Studentの『デザインに活きるリサーチの技術』という講義を受講された学生さん向けに書いてきました。テクニックやTipsの話というよりは、能力的な話になりましたが、意外にリサーチを能力的な観点から論じたものは少ないのではないかと考えます。

最後に元も子もないことを言いますが、「これらの能力は+α程度の話なので、あまり気にしなくていい」です。リサーチ能力や、それを支える論理的思考力、言語化力は、デザイナーにとって必須のスキルではなく、あったら便利だなぁという程度です。私は「リサーチャー」という肩書があったり、社会科学系の大学で学生生活を送ってきたことから、これらの能力を意図的に鍛えてきただけにすぎません。

ただ、鍛えていて無駄な能力はないと考えています。リサーチを自身の強みの一つにしたいと考えている方にとっては、いつかこの記事で書いたことが役立つ場面が出てきて、より充実したリサーチが可能になっていくはずです。たぶんですけど。

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