銀河スリケン仮説【ニンジャ自由研究】
1.序論
夏を彩る行事は多い。またそれらには、しばしば神秘的な逸話がつきものである。夏祭り、神輿、ハナビ、オーボン…そして、七夕もその一つだ。私は一ヶ月ほど前に七夕について調査する機会があり、そこで天の川の星景写真に興味を持った。そして自分でも撮影してみたいと思い、それについて調べてみたのだ。
「夏の天の川」を撮影した写真群に写っているのは、正確には「天の川銀河の中心方向」だということだ。我々の太陽系は天の川銀河中心部から伸びる「腕」の途中に位置しており、中心部は直径で8万から10万光年、厚みが中心部1万5千光年、周縁部が1千光年ほどの「ディスク」状の構造となっている。私はWikipediaでそこまで調べ、その図を見て愕然とした。(Fig.1)
ご覧いただければ一目瞭然だろう。中心部のディスクと、伸びる腕。明らかにスリケンである。
2.天の川銀河の構造とスリケンの類似点
信じたくない、そのような反応は容易に予想できる。なぜなら、私もそうだったからだ。しかし我々は、現実を見据え、受け入れなければならないのだ。ここからは、その奇妙な符合、恐るべき暗示について、少しずつ見ていこうと思う。
まず見ての通り、中心部から伸びる腕は渦を巻いている(渦状腕)。なぜか。天の川銀河がスリケンであるという仮定の下であれば答えは自明である。スリケンは高速回転飛翔体であり、故に周辺部が渦巻き状になるのは当然だと考えられる。
また渦状腕は、現時点では、大きなもので以下の4本が観測されている。
3kpc腕 (3kpc arm)
じょうぎ腕 (Norma arm)
たて・ケンタウルス腕 (Scutum-Centaurus Arm)
いて・りゅうこつ腕 (Carina-Sagittarius Arm)
そう、4本だ。中心のディスクから突き出る4本の腕。これは明らかにスリケンを示唆している。
誤解を招かぬようここで話しておくが、私はこの渦状腕が、スリケンの刃そのものであると主張しているのではない。
まず、これらの渦状腕というのは、地球を含む太陽系のような、物理的な星々の集合体である。また、既に先行研究で示された[1]ように、強大なカラテはしばしばエーテルの流れにも影響を及ぼし、一種のジツめいた挙動を示す。中心部で回転するディスク、スリケンが内包するカラテがその刃部分で何らかのジツ的作用により星々を作り、それは慣性に従って外側へと放出され、緩やかな渦を作る。(Fig.2)これら4本の腕、星々は、中心部のスリケン刃のいわばカラテ残滓であるというのが私の持論である。
話を戻そう。先ほど渦状腕は4本だと示した。しかし謎めいた理由により、これらの腕のうちふたつは、位置によって違った名称が遺されている。以下に記す。
3kpc腕 あるいは ペルセウス腕 (Perseus Arm), 腕の外周側の部分である
じょうぎ腕 あるいは はくちょう腕 (Cygnus Arm), こちらも外側の部分だ
なぜこのような名称が遺されているのかについて、正確な所は、これからの研究を待つほかない。しかし合理的な想像はできる。この名前が定められた当時、古代の認識では、別々の名称を付ける必要があったということだ。つまり、これらは近い位置にあるというだけで、別の腕、別の発生源であるのだ。
では中心部の「ディスク」は6本の刃を持つスリケンなのか。その結論はまだ尚早である。大規模な渦状腕は先ほどの6つだが、小規模な腕が更に存在するのだ。オリオン腕、そしてもうひとつ、同様の小さな渦状腕の存在が示唆されている。腕の数は全部で8つ。つまり、銀河中心で回転するスリケンの刃の数は、同様に8つだということではないか。
これは真に恐るべき、名状しがたい暗示である。ニンジャ研究に携わる諸兄であれば、その意味が理解できるだろう。禍々しきかの魔導書にも示された[2]忌まわしき数字。大小さまざまな腕、それの由来たる刃を持つ、不揃いなハッポースリケン……おお、ブッダ……
3.天の川銀河の中心部とそれにまつわる神話
天の川銀河、中心部であるディスク。それでは、さらにその中心、銀河の真の中心部にはなにがあるのだろうか。
我々の天の川銀河に限らず、表向きの科学では、銀河の中心には超質量のブラックホールが存在するとされている。天の川銀河の場合、それはいて座Aスターと呼ばれる、太陽の430万倍の質量を持つとされる天体である。これは、プロジェクト:イベントホライズンテレスコープという非常に格好良い名称の国際プロジェクトにより直接観測されており、画像も公開されている。ここに引用はできないが画像検索をしていただきたい。カラテ値の高い中央部が特に明るく表示され、薄くではあるが周縁部にいくつかの不揃いな刃が見えるはずだ。中心部が暗くなっているのは、真ん中に穴が開いているタイプのスリケンだからだと考えられる。
いて座Aスターはその名の通り、いて座の領域に存在する天体の一つである。なお、星座というものは現在、国際天文学連合により制定されていて、その数は88となっている。
いて座は半人半獣の弓の射手の姿であり、メソポタミア神話の戦争と狩猟の神、「パ・ビル・サグ(PA.BIL.SAG:8文字だ)」が原型とされる。そしてこれまでの議論で示された通り、これこそが、畏れ多き原初のニンジャ、カツ・ワンソーをモチーフとしたものなのだ。
ニンジャとはカラテを極めんとする戦士である。その祖であり師でもあるワンソーは、戦争の神と呼んで不足はないだろう。また、ワンソー派リアルニンジャ集団「ダークカラテ・エンパイア」が奉げた儀式が「ストラグル・オブ・カリュドーン」と呼ばれる狩りであったことも、私に強烈な確信を抱かせる一因となっている。
またこのいて座のモチーフであるが、実は時代によってその正体が安定せず、度々議論になっていたようだ。半人半馬、翼を持つサソリ、単に弓を持った者、四つ足でマントを羽織った者…… なぜ姿が定まらないのか、我々は既に、マスラダ・カイのイクサを通してその答えを知っている。つまりこれらは全て、ワンソーの様々なアヴァターをモータルが語り継いだ結果、生じたものなのだ。
最後に七夕伝説にも触れておきたい。天の川が重要な要素として謳われる物語であるが、私はここまでの知見を得る前後で、この儀式の意味が全く変わってしまったことに気が付いたのだ。
とかくこの行事は7にまつわるものが多い。まず日付は7月7日、織姫は七仙女と同一視され、地域によっては7本の針に糸を通す行事が存在したり、北斗七星を拝むこともあるようだ。
これらの7へのこだわりは、7で堰き止めて8へと至らせぬ為の、呪術的神事なのだろうか。あるいは、8を待ち焦がれ、早く迎えるための、悍ましきサバトであるのだろうか…… 私には、その意味を図ることはできなかった。
4.訪れ得る未来の展望
ここに至って、あなたがたもこの仮説を信じざるを得なくなっているだろう。奇妙な符合はあまりにも多く、論理の果てはこの地平に繋がっている。
いずれ来たる、宇宙に再びエテルとカラテが満ち、星辰が正しき位置へと揃う時。歪なハッポースリケンは真の形を成し、大いなる父祖が再臨し、銀河すべてに再びの暗黒時代が訪れる。
文字通りの天文学的な力の差に我々は為す術なく、ただこの身を任せ、全てを受け入れるほかに道はないのだ。
いつか後世の英明なニンジャ学者によってこの仮説が完全に否定され、我々の安寧が脅かされぬ未来がくることを、私は、切に願っている。
5.参考文献
[1] ディスカバリー・オブ・ミスティック・ニンジャ・アーツ(4):ジツ、カラテ、およびモータルの関連性について https://diehardtales.com/n/n5d13a81b6191
[2] カラテノミコン断章(18世紀ラテン語版) https://diehardtales.com/n/n56ed84696fa6