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第8号 A look back at 2017

 2017年も気がつけば12月となっている。この月は私の生まれ月でもあり、本格的に上京した月も天草へ帰ってきたのも12月だ。この月には何かと起きがちである。今年の年末で故郷・天草での再生活は8年目だ。今年は、色々と新しいことが起きた年だった。本当の年の瀬までは、まだ半月ほどあるのだが、今年の自身の変化を手前勝手に振り返ってみようと思う。幾許かのご興味がございましたらお付合いいただきたい。こんなことを考えるようになったのも、帰郷してからずっと書き続けていたブログを今年の10月からとんと書かなくなったことが少し影響している。瑣末なことばかりだが、私の日常が少しづつ変わっていくのが顕著な年だった。

・姿勢の変化

 公開する日記を書かなくなったということは、他者からすれば特にどうでもよい変化だとは思う。7年間ではあるが毎日書き続けていると、有難いことに読んでくださる方々が多くはなっていた。だが今は、日々のことをとりとめもなく書き綴るよりも、現在追いかけている対象を優先しようと考えている。日記を書くというのは、早ければ10分ほどで終わる作業なのだが、電子版を始めてからは随分と心構えが変わっていった。忘れっぽい性分なので毎日書いてさえいれば自分の記憶を検索できて便利ではあったし、ある程度は考えを纏めて書くので自らの現状の整理にも少なからず役立っていた。人物を本格的に撮影するようになってからは、その人への興味について撮影以外の時間でも脳内で向き合い、自身の中から出てくる言葉を掴み取りたいと思っているのだろう。現在は、SNSの投稿をメモ代わりにしているが、その時になればまた日記を書くようになるだろう。日常を見つめることに日記ほど適したものはないと思っている。

・家族の変化

 日常の変化は家族にも勿論起きている。娘は3歳になり、以前とは比べ物にならないほど行動範囲が広くなっており、できることも増えていくので、その成長の場に居合わせること、その場が次のステージへ進んでいくことへ反応していくことがとても楽しみである。娘の成長とともに家族としての行動範囲も広がり県外も含めてあちこちへ出かけるようになった。妻の出身地が関西なので娘は生まれてすぐから大阪と天草を何度も往復している。18歳になるまで熊本の外へ出ることが稀だった私とは違う経験をしてほしい。早く家族3人で新宿ゴールデン街へと行きたいものだ。保育園の送り迎えの時に多いのだが、今までは見ることのなかった瞬間に出会えることがとても面白い。

・活動の変化

 2012年より仲間と発行していた写真誌「GRAF」を刊行することが12号をもって一旦終了となったことは私にとって大きな変化だ。この「GRAF」があったからこそ天草の生活を本格的に撮影し発表していこうと思うきっかけとなり、GRAFと一緒に様々な土地へ赴いたことが、天草を撮影することにとても良い効果をもたらしてくれた。10月にはGRAFのメンバーと九州で発表活動を続けている「写真同人誌 九州」のメンバーと私の写真の師匠・権泰完氏とともに新たに一冊の写真集「一路」を作り上げることができた。中野にある写真ギャラリー「gallery 街道」が発行している「街道マガジン」にも参加することとなった。この本でも天草と私の写真を紙に残していければと思っている。「GRAF」という写真誌の刊行は止まったが、各人の活動は続いていく。(撮影 写真1:永友啓一郎氏・写真2:尾仲浩二氏)

・動物事情の変化

 我が家の動物事情も変化があった。民宿開業以来より飼っている愛犬いぬじろうの変化といえば老けたことと朝早くに私を起こすこと。なんでもない日でも朝の五時台に起こされるのは中々堪える。段々と白髪が目立ってきたが中身はあまり変わっていない様子だ。そして、新たに家族に加わった迷い仔猫の「ネリゴ」が登場した。ある雨の日に、民宿の駐車場に突如現れたネリゴを保護し里親を探していたのだが、見つからずでそのまま我が家の一員となった。とても大人しいが愛嬌のある愉快な猫である。当初は痩せっぽちだったがみるみる膨らみ、今は獣医さんにダイエットをするように言われるほどとなった。現れた日に、ご近所さんからカンパチの若魚をいただいたのでその魚の呼び名であるネリゴと名付けたのだが、女の子にネリゴはあまりに酷いという妻は「ねりこ」と呼んでいる。

・車の変化

 春に車をジムニーに変えたことで今までとは違う毛色の仕事が入ってくるようになった。不思議なもので、この車が来てから以前乗っていた車では到底行くことができない場所での撮影依頼が多くなっている。山奥で行われる数年がかりのあるプロジェクトの撮影に参加することとなり、これからも活躍してもらうこととなりそうだ。20歳くらいの時分に乗りたいと漠然と思っていた車種なので移動が以前以上に楽しく感じる。早速フロントガラスを割ってしまったが、大事に付き合っていきたい相棒に出会えた。

・写真の変化

 昨年末より極端に縦位置写真を多く撮るようになったことが、自身のことながらとても気になっている。というのも写真学校に通っている頃から、ずっと縦位置を仕事以外で撮ることはなかったからだ。写真を始めてから15年ほどになるがこのようなことは初めてなので少し戸惑いながらもカメラを縦にしている。そして、28mmのレンズが私の中では標準的な広さだったが、段々と40mmの方がしっくりくるようになっている。深く考えず咄嗟に反応し撮ることが多かったが、以前よりも多少は落ち着いて考えるようになった。無意識に近かったものを、より意識的に捉えようとしているのではないかと自己分析中である。

・変わらぬ思い

 これからも故郷・天草での生活を通じて出会った光景や人々、そして時間を撮影していくことに変わりはない。今まで以上に入っていける場所が増えている上に、もっと撮りたい人々が続々と登場している。思いの外広くて奥深い天草を撮影することに当面終わりはなさそうだ。今号は最初から最後まで自分語りとなってしまったが電子版の発行も継続していく。2017年も残り僅か、撮影に応じてくださった皆さまと、この電子版を読んで応援してくださる方々へ厚く御礼を申し上げるとともに、慌ただしい年の暮れですが、どうぞお健やかにお過ごしください。本年もありがとうございました。少し気が早い気もしますが、来年もどうぞ宜しくお願い致します。

写真・文 / 錦戸 俊康

※こちらの特集記事は2017年12月15日に発行した
『天草生活原色図鑑 電子版』の再構成記事です。

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