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平井駅に地酒専門店誕生!

【書けなかったこの2年間のこと⑨】

 一年前、日本酒と発酵を繋げる調理の基礎を学びたいと僕は考えていた。

 けれど体重はとことん落ちていたし、頻繁に起こる低血糖に振り回されて体調に自信もなかった。

 そんな折『平井駅前に地酒販売の専門店ができる!』そんなトピックをカラオケ酒場の友達“もとちゃん“が教えてくれた。

 内装工事を終えたばかりのそのお店は、本格的な酒肴を提供する日本酒バー&地酒販売店だった。

『角打ち立ち呑み』というより、本格的な日本酒パブという方が近いお店だった。

 僕はオープンから毎日のように店に通う。ここで働けば僕の頭にある理想がくっきりと形になると思える魅力があった。

 だがしかし。小林酒造や故郷の皆に迷惑をかけている療養中の僕が東京で他社のお酒を売る。

 果たしてそんな事が人として許されるのだろうか?僕はそれで窮屈な葛藤をし、痛く悩み続けた。

 結果、僕は『(店主以外の)誰にも絶対に身分を明かさずここで働く事』に決めた。

 どんな事があっても知り合いにさえ秘密にしようと強く誓った。

 けれど働き始めて数日後、開店祝いに来店した蔵元仲間にあっさりバレた。

 万引きGメンすら驚くような電光石火のバレ方だった。僕が指名手配されたら迷いなく自首しよう。

一番奥の立ち呑みスペースは、ごく自然に居合わせた見知らぬ同士が会話出来る心地よい空間だった。

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