人はそれをエレベーターという
手に入れた5坪の空間の中身の一切を解体してすっきりさせた。
その費用は2か月間、日本酒を売って捻出した。
いったいこれから先、僕はこの空間で何を得て何を失い何を残すのだろう。
そんな事を新小岩の名店『居酒屋 かど鈴』のカウンターで僕は考えていた。
そして僕はこの店で新たな問題に直面していた。
それは、このお店のお品書きである『エレベーター』の謎について。
ずっと気になっていた『エレベーター』というメニュー。
4回も通っていて答えが分からない以上、ここは人生最大の決断の時だ。
僕の敬愛する吉田松蔭ならこんな時、どんな覚悟でエレベーターを注文するのであろう。
かくして目の前に差し出されたエレベーター。
その正体は、お揚げ(上がる)に大根おろし(下がる)と生姜おろし(下がる)が添えられた一品であった。
しょーもな!と思った。
(美味しかったけど)
でも一番しょうもないのは、そこに膨大な葛藤の時間を費やし続けた自分自身なのであった。
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