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自分の8bit時代の作曲法はほぼ「紙の上」

noteにも様々な方の作曲のやり方が記事として上がってますが、自分の方法も書いてみます。

ベースになるもの

仕事としてはゲーム音楽。といっても昔々8ビットというものがありまして…的な時代と、その後の16ビットの世界。

和音数が少ない(8ビット3音16ビット8音)
音色バリエーションが少ない(8ビット)
できる表現が少ない(8ビット)
突然メイン側から割り当てが減らされる

といった環境です。

最初はコード+メロディ

和音数が少なくても、基本になるのはメロディ。

3音程度なら頭の中で組み上げられます。

自分はメロディ→コード進行、かその逆か、ミックスした感じで作ります。

頭の中の音を紙に残す

頭の中で音を鳴らしても、自分は流れるまま派なのですぐに消えていきます。

なので五線紙と鉛筆。今ならフリクションボールペン。

頭の中で浮かんだ音で紙に書いていきますが、ここで最初のポイントは、楽器を最初は使わない、ということです。

頭の中の音だけでまずはメロディ+コードを紙に書いてしまいます。

音を使わない理由

ピアノが目の前にあると、弾いてしまい、作曲どころじゃなくなるというアホっぽい理由もありますが、もう一つ。こっちが重要です。

頭の中で完結しておくと、既存の引き出しの範囲で一旦曲が出来上がります。その後、音を出しながらの作業で、新しい形が生まれれば、それは新しい引き出しになります。

なんとなく新しい音が書けた!のではなくて、明らかにこのときにできた!と分かることで、より引き出しというかたちがハッキリするのです。

まずは自分の引き出し「だけ」で作ってあるので、それを越える音は全部新しい引き出しになります。

紙ができたら

3音の時は大して作業量もないので、まずはコードを五線譜に書きまして、そこにメロディだけを書いておく。

そこからは割と単純。

①シンプルにベースラインを書く
②内声部を書く
③隙間を厚くする
④あれこれ組み替える

①②は問題ないと思いますのでそれ以降の作業を解説します。

③隙間を厚くする

例えば吹奏楽の楽譜。四拍子の曲でチューバが1拍目と3拍目に音を出し、ホルンが裏打ちで2拍目、4拍目に音を出すとします。2パートで4つの音。

でも、同時発音数が少ないマシンなので、これを一つのトラックで音色を切り替えながらやるのです。

チューバ、ホルン、チューバ、ホルン、みたいに。人間なら大変です。

これが隙間を埋めること。メロディもちょっとした隙間があれば、そこに内声を担当させる音符を入れます。

ベースは時に裏拍に1オクターブ上の同じ音を重ねることも。ド ↑ド ド ↑ド ソ ↑ソ ソ ↑ソ、みたいな感じ。これで、低音の弱いベース音も聴感上、音程がはっきりして、コードの動きが分かりやすくなります。隙間も埋められるし。

働け働け、という感じで音のない空間を埋めます。

④あれこれ組み替える

これでできた音は、やっぱり「良くある編成の音が少ない版」です。

なので、裏打ちみたいな形を崩して、カウンターメロディで聴感上、ひきつけてしまいます。

リズミカルに作業っぽいシーンは裏打ち風も問題ありません。でも、壮大な世界観を作りたいときは、④の方法。

埋めた音を間引いてスッキリさせるのもこの段階。

8ビットの打ち込み

といっても、便利なツールもありません。元々音数も少ないから、いきなりプログラム。楽譜データをプログラムのデータで書いていきます。四分音符でドレミなら、

c2 24 d2 24 e2 24

みたいにアセンブラで直接コード書き。24は四分音符は24単位、という意味で、8分音符だと12になる書き方です。24は共通なので1回目に書いたらあとは長さが変わるまで書かない、などしてデータ量を節約したりもします。ここは各社、さらにタイトルごとに変えます。

ちょっとしたジングルなら、そもそも紙に何も書かず、こんな感じでコードを直接書いてました。

16ビットの打ち込み

とメニュー分けてみたけど、初期はあんまり8ビットと変わりませんね。

しかし、使っていたプラットフォームがPCMシンセで波形はオリジナルで作れたため、トラック数削減のため、5度で重ねた音のループを作ったり、バスドラムにベース音を重ねた音を作ったり、と色んなことが作曲の後には発生します。

その結果でまた音符は書き換えが行われます。

16ビットと書きましたが16同時発音じゃありません。8音。しかも、ゲームの効果音もここから出るので、作業の便宜上、先に6音を音楽、2音は効果音、と取られてしまうことも。

でも、かつて3音で作ってましたから、それでも「やったー増えたー」です。

そんな数値なので、そんなに変わらないわけです。

産まれたワザ

三音時代はそれこそ工夫の連続。良く使われたワザを思い出してみます。

①ベースのオクターブ打ち

これを得意にするメーカーもありましたが、ベースラインを八分音符で叩き、裏拍にオクターブ上の音を入れます。

隙間埋めの効果もあり、さらに聴感上音程が感じにくい低音部に音程感を裏打ち部分で付け加えられます。

そうなると内声に乏しくても、メロディが結構コード感を持って聴こえてきます。

②SE(効果音)の構成音成り済まし

少し高度なワザです。

いつ発生するかユーザー次第のSE。しかし、発音時にその時のコードの構成音のどれかに音程を与えるのです。

さらにタイミングも音楽のリズムに合わせて少し調整して出す。

そうすると、不思議不思議。

外から聴いていると、人によって音楽が変わってくるのです。しかも破綻せず。

というのも、優先順位をつけておいて、消えても問題ない音から使っていくので。

③超高速トリル

スペックいっぱいいっぱいで高速で2つの音を連打。トレモロ奏法みたいな感じになります。ただ、8ビットの時代だとキーON、キーOFFも単純にできてしまうので、そのままではノイズだらけ。0クロス点でキーOFFするなどの実装上の小ワザは必要です。

④2音同時発音ループ

これは、PCMシンセで音を作る時。あらかじめ5度離れた音を同時にサンプリングすれば2音発音できて便利じゃね?の法則。

真ん中の音を足せば長和音も短和音も2つの発音でできる!

でも、結構波形サイズは必要になります。

⑤アルペジオ(で分散和音として)

同時に音数が出せないならバラせば良いじゃないか、と、和音の構成音をバラバラに順番に発音します。

単なるリズムに合わせた同時発音とは違うイメージにはなりますが、和声感は作れます。

鍵盤楽器やハープなどの楽器が得意とする奏法なので、その雰囲気なっても大丈夫な、或いはその雰囲気をうまく使えるところで。

そんな工夫も今は不要

メモリの価格はドッグイヤー。犬の成長並みに速いので、いつのまにか外で作った生音でもなんでも全部音声トラックに入れてしまえ、の流れが出てきたあたりで、ある意味やりたい放題になってきます。

豪華な外部音源で作った音楽そのものの波形データを持ってくればいいので、ハードシンセでリアルタイムに作らなくても良くなります。オーケストラの生音を使うことすらできます。

音作りの細かい工夫は、特に効果が「音数少ない問題」の解決のためには不要となりました。

でも、工夫が行われなくなったわけではなく。

インタラクティブに場面の要素にシンクロして楽譜が切り替わり、ちゃんとクリアのタイミングで曲がピタッと終わるような「枝分かれ進行and最適選択」などのワザも編み出され、より高度な工夫に繋がってます。

だから

ゲーム遊ぶときは音を出してあげて!


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にしけん
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