普遍的で説得力のある悲劇。~『少女マクベス』の感想~
たしか、雑誌『ダ・ヴィンチ』での紹介記事を読んでから、気になっていた本だ。
旅先の本屋で見つけたので購入。カプセルホテルで読み始めたら止まらくなった。
降田天さんの『少女マクベス』である。
「神」とまで呼ばれた演劇学校の天才少女が、自分の作品の上演中に奈落に転落し、命を失ってしまう。
本作は、事故として片づけられたその死の謎を追う、というミステリー小説だ。
事故は、その学校の定期公演で起こった。
この学校の定期公演では毎年、生徒たち自身が手掛ける演劇が披露される。
脚本・演出・俳優は、コンペやオーディションで選ばれた生徒が行うのだが、劇はウイリアム・シェイクスピアの「マクベス」を題材とするのが慣例らしい。
主人公は、亡くなった天才の陰で万年2位に甘んじていた同級生である。
主人公と亡くなった天才少女。二人の関係性は薄かったのだが、ある日突然、妙な新入生が「真相を知りたい」と主人公に絡んでくる。
そこから、話は大きく動き出す。
ざっと、こんな感じのお話。
演劇に興味を持つ人なら、誰でも知ってるシェイクスピアの悲劇。
世界中で何度も何度も題材にされてきたが、今さらながら演劇という形で"どストレート"に扱う勇気が、まず素晴らしいと思う。
そして、そのモチーフに負けず劣らず、ちゃんと心の弱さを抱えたキャラクターたちが多数登場する。
心の弱さが、悲劇に説得力を与えている気がするのだ。
誰が天才だとか、神だとか。それに引き換え、自分は凡才だとか。
そういった憧れや傾倒、嫉妬は普遍的なテーマとは言え、きちんとストーリーに落とし込む技量に感動を覚える。
気がつくと、質の良い演劇を観ているような心持ちで、ページをめくっていた。
ちなみにシェイクスピアに興味がなくてもおすすめです。
マクベスのストーリーもだいたい分かるように書かれているので。