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ゲームとことば#87「許せん!」

古いゲームボーイのソフトなのにキャラクターの声が聞こえてくる、そんな不思議なゲーム『カエルの為に鐘は鳴る』。

1992年に発売された、初代ゲームボーイの名作『カエルの為に鐘は鳴る』は、続編やリメイクのないタイトルであるにもかかわらず、熱心なファンの多い作品である。
ストーリーはサブレ王国の王子である主人公が、大魔王に支配されたミルフィーユ王国の姫を救うため旅に出るというもの。ジャンルはアクションRPGになるのだろうか。
ライバルのリチャード王子や魔女マンドラなどの個性的なキャラクター、カエルやヘビに変身してギミックを解いて進めていくダンジョン、などが本作の魅力だ。

「魅力」と評したが、ゲームの魅力の伝え方は現代ならさまざまなアプローチがあるだろう。
美麗なグラフィックや音楽、演技力の高い声優の起用や遊びやすく工夫されたUI、などなど。
ただし本作は30年以上前の白黒ゲームボーイ作品。当然、今のような技術はない。
さらに、このゲームには敵との戦闘もあるのだが、こちらの能力は進行状況に応じて段階的に上がるため、戦略やテクニックを駆使するようなゲーム性はない。
また、ダンジョン攻略も「人間⇔カエル⇔ヘビ」の形態変化を使ったパズル的な解決が基本で、自由度はあまり高くない作品である。
それでも長年愛され続けており、『Nintendo Switch Online』での配信が決まった際には、X(旧Twitter)のトレンド1位になるほどだ。
みんなどこに惹かれたのだろう。

そんなことを考えつつ本作を久しぶりにプレイしてみて、セリフの表示方法に強い独自性があったのをすぐに思い出した。
表題の「許せん!」や「なにーっ!」といったセリフだが、これが四倍角でデカデカと表記されるのである。
この馬鹿デカ描き文字セリフは、ガガガッというSEを伴い、作中で何度か使われている。
非常にシンプルな表現でわかりやすい。コロコロコミックやコミックボンボンの漫画を読んでいるような感覚だ。
ほかにも、キャラクターが感極まっているときは、セリフ送りのスピードが遅くなるなど、会話がとてもリズミカルになる工夫が施されている。
もちろん音声などついていないのだが、プレイしているとキャラクターの声が聞こえてくるような錯覚に陥った。
セリフをただ表示するのではなく、サイズやテンポで変化をつけていくというやり方。それが、本作の色褪せない魅力のひとつであると思う。

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