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ゲームとことば#56「太正桜に浪漫の嵐!」

セガの名作アドベンチャーゲーム『サクラ大戦』。
本作の構成はアドベンチャーパートと戦闘パート、前後のアニメムービーなどが1話1セットとなっていて、これが10話ほどのボリュームで作られている。
各話、戦闘パート後にアニメのCパートのようなムービーが挟まれ、その後おなじみの次回予告が流れる。
そこでの締めのセリフが表題のことばだ。

『サクラ大戦』は架空の年号「太正」という時代の東京を舞台にしているが、大正時代のようないわゆるモダニズムな文化・風俗を背景にして、そこにロボットや悪の組織が登場するという独特な世界観が魅力だ。
ゲームを中心としたメディアミックスも盛んで、90年代の当時としては珍しい舞台版なども人気を博したシリーズである。
表題の次回予告の話に戻るが、これがまた90年代アニメ感全開で、見ていてわくわくする。
1本で完結するゲーム作品なので、そのまま1週間も待たずに続けてプレイすればいいのだが、この「次回予告」が差し込まれることでコンテンツが完成していると表現したら少し大げさだろうか?

ところで「太正桜に浪漫の嵐!」とはどういう意味だろう。
次回予告の決め台詞は語感重視、雰囲気重視とするところが大きいだろうが、現実の日本で「大正ロマン」ということばは、大正時代に盛んとなった和洋折衷な文芸・芸術などを表現する際に使われる。
それが桜だ嵐だということは、咲き乱れ、吹きすさんでいるということなのだろう。つまり浪漫の爆発だ。(つまり?)
他のアニメ作品を例にとっても、次回予告のことばとして印象的なものはいくつもある。
「超おもしろカッコいいぜ!」(魔神英雄伝ワタル)はそのままの意味で、すごく面白くてかっこいいアニメだから見ようぜ、ということなのだろう。
「伊達にあの世は見てねえぜ!」(幽遊白書)は、伊達にあの世を見ていない、怖いもの知らずの浦飯幽助の活躍を刮目せよ、ということだろう。
だがいずれも「太正桜に浪漫の嵐!」とは趣を異にする。

「月の光は愛のメッセージ」(美少女戦士セーラームーン)

コレだ!
この感じだ。うまく言えないけれど。
なんだか意味があるような無いような、だけどすこぶるロマンチックな響きだ。
そしてなんともおさまりのいい文句ではないか。声に出して読みたくなる、というやつだ。
こういったワンフレーズで、作品の雰囲気が一気に妙趣に富んだものとなる。

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