ゲームとことば#72「えっ!・・・・ピンクタイガーよ。」
最愛の恋人を殺されたうえ、その殺人容疑までかけられてしまうエミリア。
『サガフロンティア』の主人公の一人である。
真犯人を探すため「グラディウス」という裏組織に加担する彼女は、危険な目にあいながらも殊勝に任務をこなしていく。
変装が必要となる潜入捜査では、"元スーパーモデル"らしく千変万化の才を発揮するのであった。
変装は、剣を手に舞い踊る「ソードダンサー」や、セクシーな「バニースーツ」などさまざま。
どの衣装もおしなべて似合っている。
とある任務のため「仮面"ぶとうかい"」に参加することになったエミリア。
ノリノリで会場に向かうも、渡された衣装はプロレスの覆面マスクだった。
エミリアは困惑し、仲間に文句を垂れる。
華やかな「仮面舞踏会」を期待していたのだが、どうやら血なまぐさい「仮面武闘会」に出場することになっているらしい。
しぶしぶ受付の列に並び、係員から「リングネームは?」と聞かれたると、エミリアは表題のセリフを発するのであった。
「ピンクタイガー」という名前はいつ考えたのだろう。
受付にはたくさんの人が並んでいたから、待っている間に考えたのだろうか。
いや、問いかけに対して「えっ!」と驚いているから、その可能性は低いかもしれない。
衣装のどぎつい色から「ピンク」は分かるが、タイガーはどこからきたのか。タイガーマスクのイメージだろうか。
ただ、私がこのことばの中で注目すべき個所は「よ。」という語尾にあると思っている。
決して「リングネームはピンクタイガーでお願いします」とかではないのである。
「ピンクタイガーよ。」と句点をはっきりとつけて発言している。
彼女はもう何年も前からそうであったかのように、ピンクタイガーとしてその場所にいるのだ。
どのような表情で発したのかはわからない。
驚きの後に続く4つの中黒(・・・・)は、何かの葛藤を表しているのかもしれない。
しかし彼女は最後にはっきりと名乗り、マルで締めている。
まるで自分の本名であるかのように。
不幸な境遇の彼女だが、そんな一面に惹かれる。
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