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老若男女、総動員。~野狗子: Slitterheadレビュー~

11月8日発売のアクションアドベンチャーゲーム『野狗子: Slitterhead』PS4版を購入し、3時間ほどプレイしたのでレビューを書いてみる。
『野狗子』は"やくし"と読むのだそうだ。

本作は『サイレントヒル』や『SIREN』などを手掛けた、外山圭一郎さんの作品である。
失礼ながら、外山さんのゲームは実況プレイ動画ではよく見るものの、実際に自分でプレイした経験がない。
ホラーっぽいもの自体ほとんどやらないのだ。
ただ何と言うか、最近リメイクばっかり遊んでいるので、たまには新規IP、それも苦手ジャンルを触ってみようと思い手にしたのである。

『野狗子』のストーリー概要:アジアンゴシックが魅力的なホラーアドベンチャー

舞台は九龍城砦をモデルにした、「九龍」という東アジア風繁華街。
プレイヤーは「憑鬼」という、魂のような姿をした謎の飛翔体だ。
記憶と肉体を失っているが、「野狗子」という化け物と戦わなければならないという使命感だけはあるらしい。
野狗子は漫画『寄生獣』に出てくるようなクリーチャーで、人間に擬態してほかの人間に近づき、脳みそを食べてしまうとても恐ろしい奴ら。
あまり関わりたくないタイプだ。
こいつらが人を殺してまわるという事件が、九龍で頻発しているらしい。

憑鬼は人間や犬などに憑依することで、その体や思考を操れる。
奪った体の血液を武器に変えて戦うこともできるのだが、なかでも「稀少体」と呼ばれるレアキャラは強い。
稀少体を持つ人間は憑鬼に取りつかれても思考までは奪われない。
憑鬼に体を貸して協力してくれる、ストーリーにおいて重要な存在だ。
彼らに憑依して野狗子退治と事件解明を進める、というのがざっくりとした本作の内容である。

最初に出会う稀少体「ジュリー」。スキルポイントを使った育成要素もある。

『野狗子』のゲームシステム:立ってる者はオッサンでも使え!

プレイヤーは憑鬼の視点で、野狗子が起こす事件解明を進める。
街に出て野狗子がいないか探索したり、出くわしたら抗戦したりするわけだが、その際に街を歩くモブキャラの一般人に次々と憑依していく。
これが本作の肝で、ガンガン人間を乗り継いでいくのだ。(憑依が解けたらその人は無事元に戻る)
ビルの上の階に行きたかったら、ベランダでタバコ吸ってるオッサンに憑依して進み、会員制のクラブを調査するなら、上客に憑依して堂々と入店する。

ベランダでタバコを吸っていただけなのに取り憑かれてしまった半裸の男性

その場の状況に応じて憑依を繰り返していくと、そのうちに対象が男だとか女だとか、老人だとか若者だとか関係なくなってくる。
というか気にしていられないのだ。
ある意味、命の扱いが平等なゲームである。
戦闘に関しては稀少体を持つ固定キャラを使った方が強いのだが、一般人に憑依したまま戦っても構わない。
知らんオッサンで殴るも良し。知らん姉ちゃんでとどめを刺すもよし。
新しい体に憑依するとHP上限アップなどのバフが掛かるので、戦闘時はどんどん周囲の一般人を巻き込んだほうがよい。

ここで私は映画『七人の侍』で三船敏郎演じる菊千代を思い出した。
野武士集団との戦いに備え、地面に替えの刀をあらかじめ突きさしておくシーンだ。
「一本の刀じゃ、五人と斬れん」というセリフが印象的。
刃こぼれしたら次の刀を使うように、憑依体が弱ったら別の一般人に憑依して戦う。
これが本作の戦い方なのである。

オッサンから逃げる野狗子。ここで右上で光ってる人に憑依すれば先回りできる。

『野狗子』の良い点と悪い点:爽快だけどもっと猥雑でもいいのよ

良かった点は、先述の「一般人を次々と乗り継いで戦うシステム」。
難易度ノーマルの序盤だからかもしれないが、あまり深く考えずに憑依を繰り返して殴っていけばどうにかなった。
これは爽快感があって非常によい。
数の暴力で一体の化け物と戦うというゲーム性には新鮮味を感じた。
一方、味方が多いので恐怖という意味ではやや薄味になるかもしれない。
グロいシーン、いわゆるゴア表現があるので苦手な人もいるだろうが、ゾッと寒気を感じるような怖さは今のところなさそう。

また、九龍城砦をモデルとするのなら、もっと猥雑で、ごちゃごちゃした街を歩いてみたかった。
電光掲示板がバチバチ漏電してたり、パンクな格好をした住人が路上で怪しい店開いてたりしててほしい。
もちろん、移動やバトルの妨げになるから、ある程度スッキリさせたのだろう。
欲を言えば、かつてPSで発売された『クーロンズゲート』のような、あの奇天烈さが欲しい。
悪い点とまではいわないまでも、少し残念に感じた。
ただ、まだ序盤しかプレイしていないので、これらの感想は今後変わっていく可能性もある。

勝利画面のカットインを飾る知らない人。ありがとう、知らない人。

『野狗子: Slitterhead』はかつてドリームキャストで発売された『魔剣X』のように、だれかに憑依して戦うゲームだ。
しかし、ステージ中は憑依の切り替え頻度の少ない『魔剣X』と違い、本作は街の住人を使い捨てるように、何人も切り替えていく。
老いも若きも、お兄さんもお姉さんも。
みんな等しく戦闘マシーンになってもらおう。
そんなギルティな戦法に興味を持った方にはおすすめしたい。


タイトル:『野狗子: Slitterhead』
プラットフォーム:PlayStation5/PlayStation4/Xbox Series X|S/Steam/Epic Games Store
開発:Bokeh Game Studio lnc.


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