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ゲームとことば#99「星の夢の終りに」

1995年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたRPG『クロノ・トリガー』。
物語の進行状況に応じて、セーブ画面にタイトルが表示される。
「ラヴォス」の討伐前、最終盤にはこのタイトルがつけられている。

本作のストーリーは、主人公であるクロノたちが能動的に物語を動かすというより、なにか星の運命のようなものに誘われているといった印象だ。
その点をきっちり説明したものとして、終盤に「緑の夢」というイベントがある。
仲間のロボが砂漠の緑化を行うために一旦離脱し、タイムマシン「シルバード」でクロノたちが後の時代に移って回収するという話だ。
その後、何百年も緑化作業を行っていたロボをいたわるため仲間が集まった場面で、ロボは「自分たちの旅の意味」について、1つの仮説を提唱する。

要所要所に現れたゲート(時代を行き来する空間)を使って、さまざまな時代を旅してきたクロノたち。
この旅は、誰かがクロノたちに何かを見せたかったのではないか、とロボは言う。
それは、人が死ぬ間際に見る走馬灯のようなものなのだろうかと仲間たちが言葉を挟む。
そしてどの時代もラヴォスという巨大なクリーチャーが関与している。
誰が彼らに旅をさせたのか、それは人ではなくもっと大きな存在かもしれない。
といった会話が、この作品では珍しくキャラ全員集まって行われている。

クロノたちの時代を駆け巡る冒険に、なんらかの意思が働いているのだとしたら、誰が何の目的をもってやったことなのだろうか。
それが分かるとすれば、それは旅の終わりなのかもしれないとロボはこの話を締めている。
そして、表題の最後のタイトルは「星の夢の終りに」。
一説によると、走馬灯は死を回避するために過去の記憶を探る作業なのだとか。
とすれば、ラヴォスによる星の危機を回避させるため、星そのものがクロノたちを誘導したのかもしれない。
この作品には神様のような存在がおらず、いきなり天から声が聞こえるということもない。
そもそも肝心のラヴォスにしたところで、会話ができる相手ではない。
それはまるで天災のようなものとして扱われている。(ゲームとことば#15「天からふりそそぐものが世界をほろぼす」)
その場その場で、クロノは取るべき行動を判断し、最終的にラヴォスを倒すべきだと考えたのだろう。
ストーリー分岐があるような自由度の高いゲームではないが、神様にやらされている感じもしない。
こっそり旅のヒントを与えてくれる、このおしゃれなセーブタイトルが好きだ。

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