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プロマネは自己奉仕バイアスの罠に陥ってはならない!
はじめに
プロジェクトマネージャーはリーダーシップを発揮する立場上、無意識のうちに自己奉仕バイアスに陥るリスクがあります。
特に若くして運よく成功を収めたプロマネは、自分の成功をすべて自分の能力によるものと誤解し、メンバーの貢献や外部要因を軽視する傾向が強くなります。
本記事では、自己奉仕バイアスの特徴とそのリスク、AI時代における新たな課題に対処するための心構えを解説します。
自己奉仕バイアスとは?
自己奉仕バイアスとは、自分にとって好ましい結果を自分の能力や努力によるものと決めつけ、一方で、失敗や悪い結果を他者や環境のせいだと考える傾向のことを指します。
これは自己評価を守り、自尊心を保つために働く心理的な防衛メカニズムです。
このバイアスは一時的に自分を守ってくれますが、強くなりすぎると学びの機会を逃し、チームの信頼を損ない、プロジェクトのリスクを見落とす原因となります。
また、若くして成功したプロマネの場合、限られた成功体験に依存することで、バイアスが強化されやすいです。
自己奉仕バイアスの実例
①学びの機会を逃す
■具体例
あるプロジェクトで納期に遅れが発生したとき、プロマネがプロジェクトメンバーのスキルやのクライアントの頻繁な仕様変更が原因だと決めつけ、
自らの不十分な進捗管理を見直さなかった。これにより、同じような遅延が次のプロジェクトでも発生し、改善の機会が失われた。
■教訓
結果を正直に振り返り、自分の行動や判断の改善点を探ることが成長を促します。どんな結果も、改善のヒントを見逃さないことが重要です。
②チームの信頼を損なう
■具体例
プロジェクトが無事に成功した際、プロマネが「私の迅速な判断力のおかげだと顧客や上司にアピールし、メンバーの貢献に一切触れなかった。
これにより、メンバーは不満を抱き、次回のプロジェクトでの協力が得られなくなった。
■教訓
成功はチーム全体の成果であることを認め、メンバーへの感謝を伝えることが信頼を築く鍵です。
小さな成果であっても、一人ひとりの貢献を認めることで次のプロジェクトでも高いパフォーマンスが期待できます。
③リスクを見落とす
■具体例
メンバーが「技術的なリスクが高い」と警告したにもかかわらず、プロマネが「これまでも同じ手法で問題なかった」と聞き入れなかった。
その結果、開発の遅延と手戻りが発生し、納期に大幅な影響が出た。
■教訓
チーム内の異なる視点や批判的な意見を積極的に受け入れることが、プロジェクトの成功に不可欠です。
意見の多様性がリスクの早期発見と解決につながります。
自己奉仕バイアスが強いプロマネの特徴
成功体験への依存とチームの軽視
自己肯定感が強いプロマネは、過去の成功体験をもとに同じアプローチを繰り返し、「成功は自分の手腕によるもの」と思い込みやすいです。これにより、メンバーの努力を軽視し、不信感を招きます。
環境変化への対応力が弱い
自分が経験したやり方に固執することで、新しい環境や技術に適応することが難しくなります。その結果、問題が発生しても適切に対処できないリスクが高まります。
例えば、少人数のアジャイル型開発で成功した経験をもとに、大規模プロジェクトにも同じ手法を適用し、結果として、リソース不足に陥り、進行が大幅に遅延するなどのケースが考えられます。
AI時代における自己奉仕バイアスのリスク
今後、プロジェクトマネジメントにおいてもAI活用が盛んになることが予想されます。しかし、AIも偏った学習によりバイアスに陥るリスクがあるため、プロジェクトマネージャーがその限界を理解し、適切に使いこなす必要がでてくるでしょう。
AIが予測した結果をそのまま信じることにより失敗した場合、自己奉仕バイアスが強いプロマネは、AIの判断ミスとして責任逃れするリスクが高くなるかもしれません。
例えば、AIが予測した進捗通りに計画を進めたが、結果的に納期が遅延し、それをAIのミスと主張し、自らの判断不足を反省しないなど。
こんなプロマネは信用されなくなりますね?
自己奉仕バイアスを克服する心構え
成功も失敗も公平に振り返る
→ 自分の判断を客観的に見直し、改善点を見つける。メンバーへの感謝を欠かさない
→ 成功の要因をチーム全体の努力として評価する。柔軟な思考を養う
→ 新しい状況に対応し、常に学び続ける姿勢を持つ。心理的安全性を高める
→ メンバーが自由に意見を言える環境を作り、情報を早期に共有する。AIの結果を批判的に検証する
→ AIを活用しながらも、自らの判断と組み合わせて意思決定する。
まとめ
自己奉仕バイアスが強いプロマネは、自分の能力を過信し、チームの貢献を軽視することで、信頼関係の破綻やプロジェクトの失敗を招きやすくなります。
AI活用が盛んな時代になっても、謙虚さと柔軟な思考を持ち続け、メンバーとの連携・協力を重視することが重要です。
プロジェクトマネジメントの持続的な成功の鍵は、成果をチーム全体で共有し、学びを組織的に積み重ねることにあると考えます。AIやツールの進化を活かしながらも、最終的な判断と責任は人間であるプロマネが担うべきですし、そうでないとメンバーはついてきません。謙虚な姿勢を保ち、環境変化に対応しながらチームの力を引き出すことで、持続的な成功を実現しましょう。
いかがでしたでしょうか?
認知バイアスは様々な種類があります。拙著「プロジェクトマネージャーを支える心理学」では、自己奉仕バイアスの他、プロマネを惑わす様々な認知バイアスについて具体例を使って解説しています。
ご興味がありましたら、ぜひご一読を!