【外資系】経営者や管理職に求められる部下とのコミュニケーション:「話す」と「聴く」のバランス
こんにちは、外資系企業2社の日本代表を務め、現在はリーダーシップコーチの西原哲夫です。
新しく管理職についた方はもちろんのこと、長年にわたって経営やマネジメントを担っている方にとって、部下や従業員とのコミュニケーションは非常に大きな悩みの種だと思います。
「こちらから伝えたいことは山ほどあるのに、なぜか上手く伝わらない。」
「どれだけ話しても、思ったように理解をしてもらえない。」
洋の東西や業界を問わず、こういった悩みの声が尽きることはありません。
かといって、コミュニケーションをないがしろにすることもできません。
なぜなら、組織やチームで一丸となって業務に取り組まないと大きな成果は生まれず、そのためにはコミュニケーションが絶対不可欠だからです。
私自身も、フォーチュン500の外資系企業2社で経営を行なっていた際に、部下やチームとのコミュニケーションに大いに悩みました。
山ほどの試行錯誤や失敗がありましたが、ようやく手にすることができた学びを紹介したいと思います。
【結論】話すことと聞くことのバランスが求められている
最初に結論から申し上げます。
それは、話すことと聞くことのバランスが求められているということです。
言われてみれば当たり前のことですが、コミュニケーションとは、相手との対話です。
対話とはいわば、双方向のキャッチボールのことです。
キャッチボールをする時に、あなただけがボールを投げて、相手がそのボールを受け続けるなんてことはありませんよね?
あなたが投げたボールを相手が受ける。
相手がボールを投げ返して、それをあなたが受ける。
これを繰り返すことがキャッチボールです。
それなのに、こと部下や社員とのコミュニケーションとなると、自分の伝えたいことばかりを一方的に話し、なんで分かってくれないんだ!とイライラする人がとても多いように感じます。(私がこのパターンでした。)
これでは相手からしてみると、コミュニケーションのキャッチボールにはなっていませんし、あなたの話を聞こうとする気持ちも生まれません。
経営者や管理職に求められているコミュニケーションとは、話すことに加えて、同じくらいに聞くことも求められていることを理解する必要があります。
経営者や管理職に求められるコミュニケーションマトリクス
経営者や管理職には話すことと聞くことの両方が必要とされます。
部下や社員からすると、経営者や上司である管理職が、上層部の考えを伝えてくれるだけでなく、自分の話も聞いてくれることで、信頼感が生まれますし、会社の方向性への理解も増すのです。
それでは、どのような場面や手段を通じて、話すことと聞くことの両方をもつことができるのか?
そのイメージとして、話すことと聞くことの手段や方法をコミュニケーションマトリクスとしてまとめました。
コミュニケーションマトリクス図
横軸:話すことと聞くこと
全社ミーティングや部門会議などは、経営者や管理職から部下や従業員へメッセージが伝えられる機会として使われることが多いと思います。
逆に聞くこととしては、タウンホールのような場をもつことがあれば、従業員意識調査や社員エンゲージメントサーベイのようなアンケート形式をとることもあります。
縦軸:1対1と1対多
全社ミーティング、従業員意識調査や社員エンゲージメントサーベイのように一度に大人数を巻き込むコミュニケーションが有効である一方で、よく1on1(ワン・オン・ワン)と呼ばれるような1対1のコミュニケーションも有効です。
あなたの組織のコミュニケーションのバランスは?
このコミュニケーションマトリクスと、あなた自身、もしくはあなたの組織の現在のコミュニケーションとを比較したとき、どのような気づきがありますか?
話すことと聞くことのバランスは取れていますか?
1対1と1対多のコミュニケーションは計画的に設計されていますか?
もしバランスが取れていないと感じる場合は、どの領域を改善したいですか?
外資系企業のコミュニケーション施策事例
ここで、私が外資系企業で経営にあたっていた時に行なっていたコミュニケーション施策の事例を紹介します。
一つ目は「話す」ことの事例、二つ目は「聴く」ことの事例です。ご参考になれば幸いです。
「話す」:四半期ごとの全社コミュニケーションミーティング
私が勤めていた会社では、定期的に全社コミュニケーションミーティングを行うことを非常に大切にしていました。
リーダーが自分の言葉で社員たちに語りかけることが重要との考えからです。
社員たちは様々な国や地域に分かれていましたから、時差も考慮しつつ複数回にわたってライブで行なっていました。
私自身は日本や東南アジア域の代表として全社コミュニケーションミーティングを行なっていましたが、やはりライブであることにこだわり、電話回線やオンライン会議ツールを駆使して取り組んでいました。
参加している方たちにとっては、リーダーの言葉づかいやその温度感などから、重要メッセージをライブで受け取ることができます。
全社員の仕事の手を止めてもらってミーティングに参加してもらうわけですから、その時間のインパクトを最大限に高めようと、メッセージを伝える側のリーダーたちにも入念な準備が求められます。
そこで、定期的にコミュニケーションプランというものも作成していました。
これはどういうものかというと、新しい年度の始めに、今年はどのような計画で全社コミュニケーションミーティングを行うか、その内容を作成するものです。
キーメッセージは何か、特に誰に聞いてほしいか、メッセージを発信する頻度はどれほどか、対面かオンラインか、など。
さらにそれを3か月ごとに見直し、人事チームとも整理・確認をしながら進めていました。
「聴く」:1on1や目標管理面談でとことん聴く
私は直接のレポートラインの方たちとは定期的に1on1ミーティングの機会を設けていました。
1on1の目的は、相手の話を聴くこと。
一般的に1on1というと、個人面談の様相で、上司が部下に対して目標や仕事の進め方を一方的に伝え、部下はそれを黙って聞くというものが想像されるかもしれません。
加えて、部下のパフォーマンスが上司の期待に沿っていない場合、逃げ場がないくらいに上司から厳しく追及が入るなどということもあります。
しかし私がやっていたことは、上司として一方的に話すのではなく、相手の方の話をひたすら聴きました。
その時に使っていたのがコーチング型マネジメントとしての「聴くスキル」です。
難しそうに聞こえるかもしれませんが、一般的なGROW(グロウ)モデルを使うことがほとんどでした。
GROW(グロウ)モデル
Goal:ゴールや目標を設定する
Reality:現状・現在の立ち位置、目標とのギャップを確認する
Options:目標を達成するためのオプション・選択肢を探索する
Will:次のステップ・アクションを決めて行動する
まず、相手の方が達成したいと考えているゴールや目標を聞き出します。
それに対して、現状や現在の立ち位置はどうであるか、そして目標とのギャップを確認します。
続けて、目標とのギャップを埋めながら前進するために活用できるオプションや選択肢を一緒に探索しつつ、アクションをとることを後押しするというものです。
このようなコミュニケーションをとることのメリットは、相手の主体性を引き出したり、自発的に行動やアクションを起こす手助けができたりすることです。
上司である自分が一方的に話したところでやる気は引き出されませんが、誰しも、自分の価値観やビジョンにもとづく目標であれば、誰に言われなくても行動するものです。
「話す」ことと「聴く」ことのバランスが重要
このように、部下や社員をマネジメントする経営者や管理職が行うコミュニケーションでは、「話す」ことと「聴く」ことのバランスをとることが重要です。
これらの実例が参考になれば幸いです。
なお、私がこういった考えに至った経緯として、リアルな試行錯誤や失敗からの学びも紹介していますので、以下の記事も読んでみてください。