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【トレードオフ】ビジネス経営の意思決定に役立つ考え方(実例紹介)

こんにちは、外資系企業2社の日本代表を務め、現在はリーダーシップコーチの西原哲夫です。

アメリカのMBAで学んだことで今でも役立っているもののひとつが、「トレードオフ」という考え方です。

トレードオフとは、「一方を選択すれば、もう一方は犠牲にしないといけない」という、二律背反の状態を指します。

要するに、「欲しいものが2つある場合でも、どちらか1つしか手にできませんよ。もうひとつはあきらめてください。」ということです。

ビジネスをしていると、このトレードオフの関係性になっていることが数多くありまして、日々その決断を迫られるわけです。

私が外資系企業の経営をしている時にも、「どちらの道を選ぶのか!?」と、至るところでトレードオフの決断を迫られました。


新製品の開発で生じたトレードオフ(プロダクトマネジメント)

私が仕事をしていて最初にトレードオフに直面したのは、MBAを卒業してアメリカ勤務中に新製品の開発をしていた時でした。

製造業で使う産業機器の担当をしていたのですが、新しい製品の成長戦略やコンセプトを打ち立てて社内で投資の承認をもらったまでは良かったものの、すぐに行き詰まりました。

何が起きていたかというと、その製品の事業責任者(プロダクトマネジャー)である私が求めたいたことにトレードオフが起きていたのです。

私は当時、

「顧客課題を解決する機能を多く搭載した最高の製品を作ろう!」

コストは最低限で利益の最大化!」

「競合他社に先がけて1日も早く新製品を市場に投入しよう!」

と、壮大なビジョンを掲げていました。

ビジョンといえば聞こえは良いのですが、はじめて取り組む仕事に興奮し過ぎて、あれもこれもと盲目でワガママになっていたのです。

そんな自分と一緒に働いていた仲間のエンジニアたちも一生懸命に開発を進めてくれていたのですが、少しずつ泣きや相談が入ってくるようになりました。

「テツ、今の計画のままだとやり切る自信が無くなってきたよ。。。」

私も悩みつつMBA時代の教科書に立ち返ってみると、「トレードオフ」という言葉が目に飛び込んできました。

はて、何のことだったか?と思って読み進めると、まさに自分が置かれている状況について明確に説明されています。



「機能・リソース(コスト)・スピードの3つは、トレードオフの関係にあるので、戦略的に意思決定するように。」と。

まさに今自分が経験していることだ!と思いました。

要するに、

「多くの機能を搭載しようにも、エンジニアや資金など、それを開発するためのリソースに限りがある。」

「機能を開発するためには時間がかかり、機能を増やせば増やすほど市場投入スピードが遅れる。」

などといったトレードオフが起きていることを理解した瞬間でした。

それを理解できたので、その後は全てを追い求めることはやめ、トレードオフの関係になっている領域については意識的に取捨選択をしてプロジェクトを前に進めるようにしました。


経営者として納期と在庫のトレードオフに向き合う

製品責任者の仕事を終えた後、日本に帰国して日本支社の経営に取り組むようになりました。

ここでもさまざまな意思決定に取り組みましたが、とくに頻繁に向き合うことになったのが、「納期と在庫のトレードオフ」です。

これは製造業や小売の世界では日常的に起きてくる課題です。

どういうことかと言いますと、

たとえば、あるお客さまが自社製品に興味を示してくれた際に、手元に在庫があればすぐに納入して売り上げることができます

短納期を武器に売上を上げるというアプローチです。

逆にその時、在庫がないとすぐに購入できない(納期が長くなる)ので、そのお客さまが競合他社に流れてしまうリスクが出てきます。

こういったリスクを避けるため、売上を上げるためには在庫を多く手元にもっておく必要があります

そのため売上に責任を持つ営業担当者は社内に対して、在庫を用意しておくことを要望します。

しかし一方で、在庫を多く持ち過ぎると、それはキャッシュフローに悪影響が出ます

そこで経理や財務の担当者はできるだけ在庫を減らそうと頑張ります

営業の正義と経理や財務の正義とがバッティングするわけですね。

こうして、納期(売上)と在庫のトレードオフの関係性が発生するのです。

私も外資系企業の経営者時代、この納期と在庫の関係性には、ほとんど毎日のように向き合っていました。

とくに半導体など特殊な製品が市場で少なくなってくると、いつもこの議論になりました

多少の品薄状態であれば、「在庫は持ち過ぎないように」と指示を出し続けないといけない一方で、売上に大きな影響が出るほどの状況になれば指示も一変し、「在庫はいくらでも積み増していいから買い集めよう!(製品が作れないことには売上が立たなくなるため)」と普段とはまったく違うメッセージを出すことがありました。


決断を重ねることで決断力が上がる

それでは、その判断基準は何かというと、こればかりはどうにも言葉で説明ができません。

影響が大きいとか小さいとか、その程度の言葉でしか表現できないのですが、その中でも私が意識していることは、

「普段からトレードオフを見つけるクセをつけておくこと」

「常に意思決定をし続けること」の2点です。

ひとつ目のトレードオフを見つけるクセをつけるという点については、

「ビジネスにはトレードオフがある。」とあらかじめ意識しておくことで、二律背反の意思決定が必要になった時でも合理的に考えることができるようになります。

ある意味、「トレードオフなんだから、一方を犠牲にしても仕方ない。」と割り切ることすらできるようになります。

もちろん、何でもかんでも割り切れば良いということを勧めているわけではありません。

納期と在庫の関係性のように、「どこにトレードオフが潜んでいるのか?」という視点で日頃からビジネスを見回しておくのです。

すると、「ああ、これとこれがトレードオフかもしれない。」と、その姿が浮かび上がってきます。

こうすることで、ただの感情的な対立や“逃げ”ではなく、合理的な意思決定として取捨選択ができるようになります

そして二つ目として、常に意思決定をし続けることも重要と考えます。

と言いますのも、意思決定をすること自体もスキルのようなもので、練習すればするほどスムーズになってくることを感じるからです。

トレードオフには正解も不正解もない世界ですが、意思決定の経験を積めば積むほど、新しい課題を目の前にした場合にも自分らしい意思決定ができるようになりました


まとめ

本記事ではトレードオフについて書きましたが、私はこの考え方に出会って、より意図的・合理的に意思決定ができるようになったと感じます。

日頃からトレードオフを探し、そして意思決定をし続けること

MBA、そして外資系企業経営から得られた大きな学びのひとつです。



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