【分析麻痺 Analysis Paralysis】分析や検討ばかり続けて決断や行動ができない時に私が考えること。
こんにちは、外資系企業2社の日本代表を務め、現在はリーダーシップコーチの西原哲夫です。
あなたの職場には、「分析や検討ばかりを続けて、いくら経っても行動しない」という風潮はありますか?
「悩んでばかりで決断・行動しない」と言い換えても構いません。
ドキッとした方、それはあなただけではありません。
日系・外資系を問わず、私が過去に勤めていたどこの会社でも、多かれ少なかれ、同じようなことが起きていました。
そして私自身も、いまだに、ふと気がつくと悩んでばかりで行動に移せていないことが多くあり、嫌になっちゃいます。
どこの職場でも分析麻痺が起きている
「このプロジェクトのリスクはよく検討したか?」
「競合他社の動きをより深く分析しよう!」
「前例や他社事例はチェックしたか?」
このような掛け声はどこの会社や職場でも聞かれると思います。
しかし、分析や検討ばかりを続けていても、行動しない限り一向に成果につながることはありません。当たり前ですね。
よく日本の企業文化は前例主義で極端にリスクを嫌い、いつまで経っても一歩前に踏み出さないと言われます。
その一方で、ビジネス英語の世界にも「Analysis Paralysis」という言葉があります。
文字通り翻訳をすると、「Analysis=分析」「Paralysis=麻痺」、つまり、「分析麻痺」となります。
分析や検討ばかりを続けるうちに、だんだんとその状態に麻痺してきて、いつまで経っても次の一歩に踏み出さない、という意味で、避けるべき状態として戒められています。
私が勤めていたアメリカ大企業でもこの言葉はよく使われていました。
新しい製品やサービスを企画・開発をする際に、本当に成功するかは誰にも分からないので、踏み出す前には心配や怖さが先立つもの。
すると、「追加で分析しよう」「他のリスクも検討しよう」と、底なし沼に落ちていってしまうのです。
職場だけでなく私生活でも
こういった分析麻痺の状態は、ビジネスに限ったことではありません。
職場だけでなく、私生活でも起きうることだと思います。
引っ越しをしようかとか、転職をしようかなど、少しでも複雑な案件になると、いつまで経っても悩んだりします。
私自身のどうしようもない例ですと、出張に行くための新幹線は何時のものにしようか?とか、ホテルはどこにしようか?など、ささいなものであっても悩み、情報収集ばかりを続けてしまうことがあります。
海外出張のための飛行機を予約する際、費用と時間を天秤にかけながら悶々と悩んでいるうちに、狙っていた便が売り切れてしまって、ぎゃー!となったこともあります。
分析麻痺におちいる原因
こうした分析麻痺というものは、それがビジネスであろうが私生活であろうが、人間の本能から来るものなのかもしれないですね。
その原因をいくつか考えてみると、
間違える怖さ
何かについて決断をするとき、「間違えたらどうしよう?」という怖さを感じることがあります。
しかも、その重要度や影響度が大きければ大きいほど、間違えることに一層の恐れを感じ、いつまで経っても分析や検討ばかりをし続けてしまうのです。
私なんかは、この間違いを恐れる感情が一番大きくあると思います。
完璧主義
「絶対に一番良いベストな選択肢を選びたい!」
これもまた、私たちが感じる正直な気持ちだと思います。
常に完璧な選択をし続けることなど無理なんですけどね。
それでも私たちは、完璧なものを選ぶことができると無意識に期待してしまっているのかもしれませんね。
情報が足りないと感じる
決断をするために必要な情報が足りていないと感じる時、決断を先送りにすることがあります。
そして、せっせと関連する情報を集め続けるのです。
ただ、どれだけ情報が集まれば十分かというと、そこに明確な基準はありません。
これも底なし沼ですよね。これも私はよくやってしまいます。
試してみたいこと
このように、分析麻痺(Analysis Paralysis)は私を含めて誰にでも経験があるものだと思いますが、それを乗り越えるためにいくつか試せることがあると思います。
課題・問題を細分化する
よく言われることは、「直面している課題・問題を細分化しよう」というものです。
大きな問題であっても、細分化し、ひとつひとつのステップに分けて考えることで、次の一歩が見えてくる、というアプローチです。
一度にすべてを解決しようとすると足が前に出なくなってしまうので、課題を細分化し、できることから取り組むという考え方です。
これに加えて、私自身が過去に学んで実践してみて自分に合っていると感じるものを紹介します。
自分が分析麻痺の状態にあることを認識する
これがスタート地点になりますが、まず、自分自身が分析麻痺の状態にあることを認識します。
認識したところで何の解決にもならないじゃないか!とツッコまれそうですが、
「あれ、自分は分析麻痺の状態になっていそうだ。」「そのせいで決断や行動ができていないな。」と客観的に見つめるだけで、心の状態が冷静になります。
機会損失の考え方を思い出す
心の状態が冷静になったら、次に、「機会損失」の考え方を思い出します。
機会損失とは、決断や行動をしないことで、本来得られていたはずの未来の利益(=機会)を失う(=損失)という考え方です。
要するに、「今自分が決断・行動しないことで失っている未来の利益は何だろう?」と自分自身に問いかけます。
トレードオフの考え方を思い出す
機会損失の考え方を思い出したら、合わせて「トレードオフ」の考え方についても思い出します。
トレードオフとは、ある選択肢を選ぶと、もう一方の選択肢が犠牲になるという、二律背反の状態にあることです。
たとえば、「品質を高めたいけどコストが上がる」など、ビジネスをしているとトレードオフの関係にあることが多くあります。
この視点から、今目の前の課題を見つめ直すことで、何と何とがトレードオフになっているのかが見えてくることがあります。
一歩踏みだす
ここまで来たら、私は一歩踏みだすようにしています。
もちろん、成功もあれば失敗もあるのですが、それでも前進できますし、方向転換だってすることができます。
なぜ「機会損失」や「トレードオフ」の考え方をベースにするかというと、
要するに、「正解も不正解もない」し、「やってみなければ分からない」ということを思い出すためです。
何も考えずやみくもに行動するのは勧められませんが、ひと通り頑張って分析し検討したことであれば、「あとはやってみたらいいじゃないか」と自分に許可を出してあげるようにしています。
それでも怖さはなくなりませんが、小さくなっていることを感じます。
仕事で重要な決断を下すときはもちろん、プライベートで自分のキャリア進路を決める時もそうでした。
MBA留学をした時、アメリカ現地で就職をした時、日本に帰国することを決めた時、異業種へ転職を決めた時、そして“外資系日本支社長”という肩書を手放した時。
重要な決断をする時には毎回、怖さが先立ちましたが、決断の経験を重ねれば重ねるほど、自分らしい決断ができるようになると、振り返って感じます。