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前回に引き続きTBSラジオ「東京ポッド許可局」のイベントスポンサーになったよ

その日が近づくにつれ、私は緊張していった。
空気の圧で体が潰されそうだった。
楽しみにしていることのはずなのに行く前からヘトヘトで吐き気がした。
そんな私を見て
「『結婚してくれ』って言われることはないから大丈夫」
と夫が言った。
私は考える。この緊張はどこからくるのだ?

前回に引き続き、東京ポッド許可局のイベントスポンサーになった。

今回のタイトルは…

TBSラジオ放送 10周年記念 「SWEET10 許可局」

何度も言うがスポンサー料金8万円(税抜)でござる。
決して裕福ではない、と言うか少し貧しい我が家。
「いっちゃう?」
「いっちゃうか!」
で予算が通った。異議なしであった。
私は本来通りだが、夫も案外そう言うところがある。いっちゃえ。
今年もあの御三方の脇に「ニシハラハコ」の幟を立てるのである。わーい。

ステージに幟を立ててもらえる

席は2席まで用意してもらえるとのことだったが、娘がいるので夫には娘を見ていてもらい、私一人で行くことになった。
どちらかというと「東京ポッド許可局」世代なのは夫の方だが、告知したいのは「ニシハラハコ」の方なので…と言う苦渋の決断である。しかも今回は配信チケットがないので、夫は見ることができない。夫の分まで、しかと楽しんでこなければ。
そしてさらに、今回は御三方と写真が撮れるのである。
御三方というのはもちろん、マキタスポーツさん、プチ鹿島さん、サンキュータツオさんである。
前回は会場に行けなかったので、「ニシハラハコ幟」の周りで御三方が私の書籍を持ってくれている写真を送ってもらった。それだけでも家宝なのですが、今回はそこに私も写るわけです。つまり超至近距離。何か、会話もしちゃうかもしれない。ひゃーーーー!!!!

「A君誘ったら?」

と夫の提案。
A君とは、我が家でときどき話題になる私の勤め先の同僚である。職場で「よく聞くラジオ」の話になった時に、お互い局員であることが判明した。
(東京ポッド許可局ではリスナーのことを「局員」と呼ぶ)
「なんと…局員でしたか」
「いかにも…」
というあの会話がまさかバイト先で起こるとは。
確かにA君を誘ってもいいけど、身バレするなぁ、と考えていたら、なんとA君が一身上の都合により、職場を辞めた。あれ?じゃあちょうどいいのかな…?A君が職場を辞めるのであれば、身バレしてもいいか、と言うことで安易に誘ってみた。
「めっちゃ行きたいです」
と即答のA君。かくして当日はA君と二人で行くことになった。

ここで冒頭に戻る。
その日が近づくにつれ、私はどんどん精神が落ち着かなくなっていった。
「『結婚してくれ』って言われることはないから大丈夫」
さらに続けて
「『この後飲みに行きましょう』もない」
と夫。
私は、この緊張の出どころを考える。
夫の言ったようなことを心配しているわけではもちろんない…
もっと手前だ…もっとずっとずっと手前の…
「ダサいって思われたくない」
だった。

笑ってしまう。
そうか、私ダサいって思われたくないから緊張してんだな。と思った。
となれば解決方法はただ一つ。思い込めばいいのだ。
「ダサくてもともと」
ダサくてもともと。ダサくてもともと。
それからは日々隙あらば、「ダサくてもともと」唱えながら過ごすことにした。
夫はそれを見て
「あなたがそれでいいなら、いいけど…」
と言っていた。こっちは必死なんだ。
そしたら夫が
「本にサインもらっておいでよ」
と気軽に抜かした。
ちょ、まってまってまって。私は今自分のことで精一杯だよ。空気の圧で潰れそうな気持ちなんだよ…?
「バカだなぁ…」
と夫。
ちなみにうちの夫は冗談でも人を「バカ」と言ったりしない。この「バカ」は心の底から漏れ出た本音の「バカ」だった。
バカなのかもしれない。
「何にも言わなくていいよ、本とペン持ってたら向こうは分かってくれるから」
夫の言う通りだと思う。
私は御三方の本を持っていくことにした。

さて当日。
本を携え、A君連れて、ようやく鬼ヶ島に辿り着いた。
これまでスポンサーの件でやり取りしていただいた倭文(しとり)さんにもお会いでき、ここだ!と思ってサインのことを聞いてみた。
「確認しますね」
とのこと。良かった、最大の難所はこれでクリアしたも同然である。
大丈夫。案外緊張はほぐれてきた。やっぱりA君を誘っておいて正解だった。開演までの間、A君と映画の話をしながらリラックスして過ごした。
A君は面白い人で、黙っているのも、人の話を聞くのも、苦手だと言う。ウケる。自分が話をしている時が一番楽だそうなので、思う存分喋ってもらった。

そして開演。
これはもう楽しかったとしか言えない。どうしてもそれしか言えない。
けど強いて言えば、近頃少ない呼吸できる空間だったかもしれない。
いや、普段の東京ポット許可局でもそれは感じられるのだけど、生で見たあの3人のおしゃべりは、なんていうか、どんなアルコールスプレーでもってしても、消えることのない部分を思い起こさせる。分かりにくいけど感じ取ってくれ。つまり、生で見にいくっていいねってことです。

そういえばお隣は茨城買取ドットコムさんでした。もう長らくイベントスポンサーをやられている先輩です。少しお話しすることができた。どうもありがとうございました。私も後に続きたい。

そしてとうとう写真撮影の時が来た。
書籍を手にスタンバイして待った。あれ?後なんだっけ?ペンだ。あれ、ペンがないぞ…
夫に「本とペンさえ持ってればいいから」って言われていたうちの大事な片方が、ない。朝、しっかり準備して、そして忘れてきていた。
「何やってるんですか」
と小声でA君。本当何やってるんだよ、私。
倭文さんが目に映った。
「す、すいません、ぺ、ペン忘れてきてしまいました」
ペペンペンぺン。
「用意します」
すっと姿を消す倭文さん。
お忙しいところに仕事を増やしてしまった。その間に写真撮影となった。
私は、御三方の本3冊を持っている、、はずだった。あれ、タツオさんの本がない…サンキュータツオさんの書籍「これやこの」だけ鞄の中に入ったままだった。
はい、もう撮りますよ、って時に鞄の中をゴソゴソとやっている私。
すると後ろでマキタさんがA君のことを
「わかりにくい彼氏?わかりにくい彼氏?」
と聞いていた。私の書籍「ニシハラさんのわかりにくい恋」を読んでくださっていたのだ。それで、A君がわかりにくい彼氏なのかを聞いてくださっていたのである。にもかかわらず、私はとにかく急いでタツオさんの本を探さなければならない。本来ならば、このタイミングで「いや実は彼はバイト先で偶然出会った局員で…」という話をしなければならなかった。そしたらA君もマキタさんと言葉を交わすことができたかもしれないのに。ただただ
「違います、違います」
と機械のように繰り返す私。頭の中は(そんなことより本、本…)でいっぱいだ。あったあった、あ、帯が外れちゃった…
「いいですよ、もう僕の本は…」
と後ろでタツオさんの声がする。
すみませんすみませんすみません、本当ごめんなさいちょっとまってください。もはやパニック。
なんとか本をだし、3冊揃った。
で、私はどこに立てばいいんだろう?とキョロキョロしていると、
「ここ、ここ」
とスペースを開けてくれる鹿島さん。
ああ、ここか、とそのスペースに体を捩じ込ませて本を構える。

「では撮ります…(カシャ)はい、もう一枚行きます…(カシャ)はい、ありがとうございました」

あの、書いてる今も疲弊して放心状態になってます。思い出しちゃって。
ああああああああああああ。
ダサくてもともと。ダサくてもともと。

そこへ倭文さんがペンを持ってきてくれて、皆様快くサインをしてくださった。もうこれ以上悪くはならない。私の緊張とパニックはようやくピークを超えた。時間というものは、どんな時も休まずに進んでくれるので優しい。
「自意識拗らせ文学ね」
とマキタさんがおっしゃった。
染みる。染み入る。
「はい」
力一杯返事してしまった。

こうやって書き起こしながら振り返ると本当に、ああああ、だめだあああ、とまた空気圧で死にそうになるんですが、冷静になって考えるとめちゃくちゃ嬉しい時間でした。
友人のグウコちゃんはこの話を聞いて
「なんか、ティーンみたいよ」
と言ってくれました。
いや、憧れの先輩にタオルを渡す中学生だってもうちょっとうまくやるんじゃないか?38歳、見事に緊張爆発してしまった。自意識拗らせ文学。染みたなぁ!ありがとうございました…!!

そのあとはA君と新橋で飲んで帰った。
私はしばらく後悔で体調を崩したけれど、もう元気です。
2度目のスポンサー体験だったけれど、初回のアーカイブ視聴とはまた全然違う体験ができました。次回もスポンサーになれるように頑張ろー!!
長文読んでいただきありがとうございました。

↑マキタさんにも読んでいただいた書籍はこちら

↑今回こちらのZINEもお渡しすることができました!
わーいわーい!


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