サーキュラーエコノミー:再生材が主役になる時代
前回の「未来予想図」、というコンセプトに悪乗りするわけではないのだが、先週に続いてもう少しだけ見えているものについて話してみたい。SDGsへの認知度が上がり、社会変革が進むと何が起こるのか。サーキュラーエコノミーを手掛けているから、というわけでもないのだが、今より確実に進むのは再生材の受容と普及であろうと思っている。
再生材と呼ばれる資材の多くはスクラップなどの廃材を原料としている。廃材の元となるのはその多くが資源を精製して作られた原材料、いわゆるバージン材だ。バージン材を作るには、多くの場合かなりのエネルギーが投入され、そのプロセスでCO2が排出される、と言う例が多い。
ところが、再生材は廃材を原材料としてそこからスタートするため、材料となる段階までに排出されるCO2は格段に少ないという場合が多いのだ。アルミを例に考えると、ボーキサイト鉱石を精製してアルミナを作り、そこからバージン材のアルミを作るには膨大な量の電気を使う。電気は発電所で作るのだが、今の日本では石炭火力が中心なので、ここで大量のCO2が発生する。対する再生アルミは、空き缶や古くなった電車の内装などを潰して作られるのだが、バージンアルミの製造工程に比べると、製品トン当たりのCO2排出量はごく少量で済むことになる。
これではバージン材が忌避される原因にもなりかねない、ということなのか、欧州では低カーボンアルミという商材が登場している。水力発電を使って作られたアルミ、と言う意味だ。差別性のある商材だが、バージンアルミは電気を喰うことに変わりはないため、市場全体を支配するだけの供給力は望みようもない。
再生油も同様だ。古くなってゴミの混ざった潤滑油は、遠心分離機で再生され、成分調整を経て再生重油として燃料になる。バージンで重油を作る工程に比べると、CO2の発生は約1/2と言われている。ディーゼルエンジンの燃料としての性能が同じなら、価格が安くてCO2の発生が少ない再生油を使うメリットの方が確実に大きくなる。
再生材にも弱点はある。一つは高品質の実現が難しいこと、二つ目は量的な安定供給に限界があることだ。再生重油はこのうち品質面の課題が比較的緩い品目だが、逆に安定供給が市場を拡大するうえでの課題になっている。
だからと言って、SDGsがこれだけ広まり、TCFDに賛同したり、自社のCO2削減にScience Based Targetを取り入れたりする会社が増えている中で、再生材への需要が高まることこそあれ、それが減るという変化は考えにくい。むしろ、現状ではあまり認められていない各種の規格などに「再生材」についての仕様が盛り込まれ、安定供給のためにバージン材と合わせてCO2削減に寄与するような総合的な素材供給が議論され、新しい素材ミックスの考え方が問われて行くのではないだろうか。
歴史的にも、かつてスクラップが野卑な原材料であるかのような扱いを受けた時代があったのは確かだ。でもさほど遠くない未来において、こんなふうに再生材は時代の主役の仲間入りをする。誰が何を言っても、たぶん確実にそうなる。我々はそのための準備をしておかなくてはならないと、強く思っている。
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