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女子高生じゃない女の子

もう女の子じゃないのに女の子だったときのことを考えてしまうのはインターネットでいまの若者は相対性理論をどうせ聴いているのだろうという悪口の文脈で放たれた言葉を見てあたしもその若者だったけどいまもそうなのかなと素直に驚いたからだった。

住んでたのはパパの家で、一応街なかだし、あたしのかわいい部屋もある。中学生の時から働いて貯めたお金で買ったダークブラウンで統一された家具とピンクのカーテンとピンクのベッドリネンは自慢だよ。17歳のあたしは、でも女子高生じゃない。

人生詰んでると思ってて実際そうだったしいっぱいお薬も飲んでてなにがなんだかわからない。あたしはかわいいらしいからモデルをしているけどそれだけじゃぜんぜんお小遣いにしかならなくて、でもお小遣いはほしいからがんばってるけど未来は見えないな。

色んなものを大人は奪っていったからなんだかすべてがどうでもいいよ。みんながあたしをかわいいっていうならそう名乗ってもいいけどそれはあたしのせいじゃない。顔だけで生きていけるだけの顔じゃないことは知ってるよ。Photoshopで肌荒れを隠してあたしは女子高生の格好をするんだ。

パパに撮ってもらった写真の中のあたしは夢の中の女子高生だよ、本当の高校生活じゃないことはわかってるけど、東京には本当にそういう生活があるかもしれないね。インターネットで学んだよ。みんなあたしに期待するけどあたしが欲しいものはくれないね。

言葉を連ねればあたしはセックスドールのスペックでしかないのに哀れだね。あたしは幸せになるってみんな言ってたのに嘘ばっかりだね。あたしが信じやすい馬鹿なのかな、センター試験の国語の点数だけはいいんだよ、でもなんの救いにもならないよ。

昔の友だちには会いたくないからいつも断ってるよ、だってあたしは特別な女の子なはずだったのにそうじゃないから。食パンのCMに出てるあたしは地域中のスーパーのPOPに顔が出てるけど、でも本当のあたしはこんなんだから誰にも会いたくないし話すことだってないな。

17歳は人生で一番たのしいはずなのにあたしはもうおしまいだったから、どうでもよかったから、色んなものを捨てたし壊した。でも結局恥晒しのまま生きているから、過去のあたしがおばさんのあたしを追い詰めるんだ。たぶんうっすら知っていたけどどうしようもないね。

スナイデルのワンピースが死ぬほど欲しかったけど結局買わなかったのはどうしてかな、1枚くらい買っても良かったのに古着屋さんでも見つけたのに迷って迷って買わなかったよ、水色のレースがついたチュニックワンピはある種の象徴だったけどたぶん手に入れたらなにかが終わってしまっていた。

あたしが17歳のときも市販薬での自傷行為は流行ってたのに俗流若者論は相変わらずだね。あたしは「そういう女の子」にはなりたくなかったけど、外から見ればおんなじだったから、あのときの自意識は哀れだね。三年坂のTSUTAYAで相対性理論を借りてiPodにいれるよ。


どこにもいない女の子

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