【対談】Base Ball Bearをもっと語ろう~今のBase Ball Bearを語る上で押さえておきたいポイント編~

Base Ball Bearをもっと語りたい。
でも、語る上で抑えるべきポイントがあるのではないか。
その抑えるべきポイントを、まず整理しよう。
整理するために文章でまとめるのではなく、対談形式を採用した。
発起人として15年間追いかけている西村。その西村に勧められてBase Ball Bearを聴くようになった今田ずんばあらず(以下:ずんば)。
2人の会話は多岐に渡った。


プロフィール

西村:1992年生まれ。音楽はそれなりに幅広く聴く。

ずんば:1992年生まれ。西村とは大学からの友人。「旅する小説家、随筆家」として、各地のイベントに参加して小説やエッセイを頒布している。
今田ずんばあらず:note


【自己紹介~Base Ball Bearとの出会い】

西村 自己紹介がてら、Base Ball Bearとの出会いを話していこうと思うんだけど。
ずんば はいはい。
西村 俺は高校生の時に「changes」という曲を『図書館戦争』のエンディングで知るわけなんだけど。
ずんば それは何年前?
西村 2008年かな。
ずんば 高校生の時か。
西村 その時に聴いて、多少の浮き沈みはあるけど、ずっと聴いてる。
ずんば めっちゃ長い……? そもそもBase Ball Bearって、いつ結成だっけ?
西村 (資料を読みつつ)結成は2001年。インディーズデビューが2003年(『夕方ジェネレーション』)。メジャーデビューが2006年(『GIRL FRIEND』)。
ずんば めっちゃ最初期じゃないですか(笑)。
西村 でもね、当時タイアップを沢山やってた時期だから。
ずんば そうか。自分もBase Ball Bearとは知らずに、『大きく振りかぶって』とかで聴いてはいたし。
西村 だから、もしかしたらずんばの方が知ったのは早かったかもしれない。
ずんば そっかそっか。自分の場合は音楽にそもそも興味があまりなかったというのはあるから。
西村 ずんばの場合はいつからになるの? 2011年頃?
ずんば 自分の場合は大学1年の頃に西村に勧められて、『新呼吸』を借りて、そこで初めてしっかりと聴いたっていうんですかね。それが2011年か。
西村 ずんばが基本的に音楽を聴かない人ってのは知ってたんだけど、貸したんだよ。
ずんば 基本的にはクラシックとか、ジャズとか、久石譲とか、そんな感じだったから、初めてジャパニーズ・ポップに触れるっていうんですかね(笑)。
西村 まあ、そうなるね。
ずんば 初めて聴いたとき、「音うるせえな」って思ったもんね(笑)。
西村 確かに。
ずんば こんなにジャンジャカジャンジャカ鳴って、人の声がするのは、聴いたことなかったから。
西村 小出祐介ものちに言うけどね。「ギターロックは音うるせえって」。
ずんば そうなんだ(笑)。
西村 クラシックとかを普段聴いてる人はロックバンドの音を聴いて、「音うるせえ」となるのかもしれない。
ずんば ある意味でファーストコンタクトは最悪だったかもしれない(笑)。そこからしっかり聴いて、実はいいんだなと思ったのは……、大学卒業して社会人になって、ドライブするようになった時かもしれない。
西村 時間が空くんだね。
ずんば その時に、これまた西村が運転中に聴くCDを貸してくれたんだよね。ほとんどは西村がセレクションしたアーティストで作られたコンピレーションアルバムだったんだけど、その中にBase Ball Bearがいたのかな。確か『光源』だったと思う。
西村 焼いて渡した記憶があるね。
ずんば そこで久しぶりに聴いて良い! ってなって、そこからだな。

編注 西村が渡したコンピレーションアルバムは4、5枚あったが、Base Ball Bearの歌詞が良いと思った曲だけを並べたプレイリストのようなアルバムを1枚渡した。2017年頃なのでオリジナルアルバムを渡したのは『光源』から。

ずんば その後に、それも良かったっていうのが、西村が全アルバム貸してくれたんだよね。
西村 そうそう。
ずんば いきなり、ドンって渡されて、「えっ!?」とは思ったけど(笑)。
西村 (笑)。それも後述すると理由があるんだよ。
ずんば そうなんだ(笑)。その時にベボベってそんなに凄い人達なの? って思ったよ。それまで西村からそこまでBase Ball Bearの話も聞かなかったからさ。
西村 「ここまで熱心なファンなんだ」っていうことを知ったってこと?
ずんば そうだね。
西村 その熱心さも聴くきっかけになったってことなのかな。
ずんば それもあるかもしれない。渡されたのって2年くらい前だっけ?
西村 2年くらい前。
ずんば そこから全アルバム聴いて、すげーってなって、このアルバムハマるかもみたいなのも幾つかあって今に至る感じかな。

ずんばがハマった1つとして、ドライブ中に聴きやすいというのがある。『新呼吸』などはループすることを前提としている部分もあるので、運転中の時間と曲が重なる瞬間があり、そこも好きになった一因。

また、ずんばの人生初ライブが2022年の武道館ライブであり、そこも思い出深い。今では、ツアーがあるごとに一緒にライブに行くようになっている。
ずんば「ライブの楽しさをベボベで知った。MCのおもしろさや、手拍子の楽しさがある」

【企画の発端~3人時代の捉え方】

西村 普段、Twitter(現:X)とかで、Base Ball Bearをパブサをしたりするんだけど、そういうの調べていて、自分の中でも語りたい欲が強くなったというのがある。でも語る上で押さえておくポイントっていうのがあるんじゃないんかなと思って、今日こうしてずんばを呼んで話を聞いてもらいます。
ずんば はい。よろしくお願いします。
西村 まずね、3人時代をどう捉えるかっていうことなんだけど。
ずんば 今はBase Ball Bearって3人でやってるけど、昔は4人だったんだよね。
西村 ずんばとかは4人時代を……。
ずんば 知らないね。そもそも何人なのかすらあんまり知らずに、音の重なりとかよく分からないで聴いてたから。
西村 そうだろうね。
ずんば だから、アルバムを借りて一曲ずつ聴いてたけど、どこで断絶しているのかっていうのはあんまり知らなくて。たしか、アルバムを全部借りたときに事前情報として教えてもらったけど、自分としては違和感なく聴いてたかな。
西村 それもBase Ball Bearの凄味かもね。ずーっと聴いてると、アルバムごとに変化はあれど、貫いてる一貫性みたいなものもあるからね。
ずんば 「Base Ball Bearだな」みたいなのはあるもんね。
西村 一応、ディスコグラフィー的に言うと、『光源』から3人になってる。3人になってことで、今まで4人だけの音しか鳴らさなかったけど、色んな音数を入れるようにしたという歴史がある。ただ、正確には『C2』からじゃないかって思ってる。
ずんば 『光源』の1つ前の作品だよね、『C2』は。
西村 そう。なぜかって言うと、『C2』当時の話の中で、湯浅将平がギターのフレーズを考えてこなかった。また、持ってきたけど良くなかったっていう話を小出祐介がしてるのね。だから、ギターのフレーズを小出祐介が考えたらしいんだけど。
ずんば はいはい。

編注 「当時の話」というのは、小出祐介が担当していたネット配信番組『真夜中のニャーゴ』で「2015年の小出祐介を365日間振り返る」特集での発言。
「(小出自身が)湯浅のフレーズを考える時間を作った」、ギターの録音と歌録りの順番を逆にして「湯浅の時間を俺が稼ぐ」などと話しているが、程度の正確さは分からない。

西村 だから、あのアルバムって小出祐介の弾いてるバッキングのギターはカッティングが多いんだよ。リードギターのフレーズも考えなくてはいけない手前、自分のパートは自分がやりやすいカッティングが増えていったんだろうと思うのね。
ずんば なるほど。
西村 それに加えて、『C2』のギターの音色が今までとは違うっていうのは、湯浅将平が脱退したすぐのツアーでサポートギターとして参加して助けてくれた先輩のフルカワユタカさんが言ってるんだよね。

編注 

フルカワ:『C2』(6thフルアルバム/2015年)のギターと今までのギターは全然違うんですよ。根本が違うというか、(『C2』のギターは)まずソングライターが作るギターだし、リズムがわかる人が作るギターなんです。湯浅はメロディのオクターブ奏法でやっていて、それがいいメロディだったりして、ベボベの曲の色付けになるんです。昔の甘酸っぱい通過音みたいなテンションを、あいつはナチュラルにやっていたんです。そういうのを弾いてわかった気もしたし、『C2』のアンサンブルを聴いて、自分の乗せ方と案外近いものもあるなって気づきました。

フルカワユタカ×Base Ball Bear・小出祐介 いわくつきの出会いからサポートでの共演、互いの音楽観まで語り尽くす

ずんば 確かに『HIGH COLOR TIMES』の頃のミョーンミョーンとした音は無い気がする。
西村 (厳密には違うが)フルカワユタカさんが言う「青春の通過音みたいなギター」っていうのは名フレーズだと思うのよね。
ずんば かっこいいね。
西村 確かに『C2』にはそれはない。俺の中で最後に青春の通過音的なギターがあったのは『二十九歳』の「魔王」のアウトロ。これぞ湯浅将平のギターっていうのを感じさせてくれるのよ。
ずんば なるほどね。
西村 だから『C2』って、最初はセルフタイトルが予定だったけど、歌詞を読みなおしたときに「視点」や「視座」のことを歌っているってことに気付いて『C』の続編の『C2』っていうことになるんだけど。
ずんば 『C』がメジャー1stアルバムだっけ?
西村 そう。当時デビュー10周年に発売予定とかだったから、そういう意味合いもあったのかと思う。だから、『C2』がセルフタイトルにならなくて良かったなって。
ずんば そうだね。
西村 俺の中で『C2』は3人のアルバムという印象が強いから。だとしたら、テーマ的なのも含めて、『二十九歳』の方がセルフタイトル的なアルバムだと思う。
ずんば 確かにあそこで、ある意味一区切りだった感じがする。

編注 『MUSICA』のインタビューで小出祐介は、サカナクションの『sakanaction』が先に発売したことで、「表裏一体」かつセルフタイトルのプランが破棄したことを語っている。「表裏一体」というテーマを考える中で「普通」という言葉を考えるに至り、現在の自分の思っていることや、今のバンドのあり方が、セルフタイトルではないが、現在の年齢を示すタイトルに落ち着いてよかった、と。
つまり、『二十九歳』を制作する前から、『二十九歳』をセルフタイトルにする考えはあった。
また、『C2』のインタビューでは、タイトルを『C2』に変更したことを踏まえて「うちのバンドにとってのセルフタイトルって、もう一段上の話しだと思ったんですよね」とも語っている。

西村 たしか、『C2』と『光源』はギターを二本使ってるんじゃないのかな。バッキングのギターと、リードギター。詳しくないから言い切れないけど。
ずんば 湯浅さんはいないけど、ギターは2本っていう。
西村 ギター2本時代だよね、『C2』と『光源』。そしてギター1本時代が(笑)、『C3』と『DIARY KEY』かな。装飾音も入れずにギター1本とドラムとベース。最新作の『天使だったじゃないか』は2本くらい使ってる。
ずんば ちょっとあるよね。
西村 エレキギターにアコースティックギターを重ねたりとか。今回のギターポップとかのイメージでやってるとは思うんだけど。
ずんば なるほどね。
西村 まず、3人になってからも、ギター2本時代とギター1本時代がそれぞれにあるということを踏まえないと、って思うんだよ。

編注:3人でギター1本時代は、とにかく自分たちのライブバンドとしてのフィジカルを上げたい時期でもあり、3人の音だけで鳴らせる曲を作ることは、ライブで地力を上げることを踏まえた意味合いもあるのではないか。
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小出 フィジカルの強さは僕らの中でやっぱり大事ですね。ほかのバンドを観てても、自分が「カッコいいな」って思うのは、音数どうこう以前にフィジカル面が強い人たちなんです。オーディオ的にいいものを作りたい気持ちも当然ありますけど、それよりもライブで演奏すること、お客さんの前に立つことが常に頭にある。
関根 そうだね。ライブで演奏してナンボだと思う。ライブをやって感じたことを作品に還元していくのがロックバンドじゃないかな。

Base Ball Bear「ポラリス」インタビュー

西村 『C2』の曲を引っ張り出して、「湯浅がいたころは……」っていう人もいるけど、それは違うんじゃないかと。まあ、そんな人はいないかもしれないけど。『C2』のあの頃に4人いたけど、3人時代は始まってたんじゃないかっていう考え方はあってもいいのかなと思うんだよ。
ずんば うーん。なるほど。年代だけでここまで話すとは(笑)。歴史あるよね、Base Ball Bearって。
西村 『天使だったじゃないか』はギター2本使ってる。それで、インディーズっぽいって言われる。
ずんば 分かる。凄い分かった。
西村 だけど、『HIGH COLOR TIMES』ではない。
ずんば ないね。
西村 『夕方ジェネレーション』寄り。
ずんば 確かに。
西村 『夕方ジェネレーション』の頃は小出祐介がギターを考えてたんだよ。

編注 Base Ball Bearが更新していたボクブロというブログで小出祐介が「少女と鵺」という楽曲について、「将平のソロもこの頃は僕が作っていたんですが、結構力作です。」と記している。インディーズベストアルバム『完全版「バンドB」について』は発売順に収録曲を並べていると考え、「少女と鵺」よりも前の順番にある『夕方ジェネレーション』も小出祐介がソロなどを考えていたと推測した。

ボクブロ 家鳴りが酷いなと呟いて

西村 『HIGH COLOR TIMES』って青春Base Ball Bearの極地みたいなところがあるじゃない。小出祐介の詩と湯浅将平のギターが物凄い嚙み合っていて、コンセプトアルバムとしても高いところにある作品だと思ってる。けどあれは、湯浅将平がいるBase Ball Bearっていう感じがして、色々と違うのが面白いよね。

【今のBase Ball Bearの二本柱~アルバム】

西村 Base Ball Bearの良さを実感する場所が幾つあるのかって考えると、アルバムとライブが二本柱だと思うんだよね。
ずんば 両方いいもんね。
西村 じゃあアルバムから語っていくとすると、アルバムは作品主義であると。1曲1曲聴くというよりは、まとまって聴く良さがある。
ずんば シングル的に1つの曲をループして聴くのではないってことだよね。
西村 そうだね。アルバム毎にやっていることが違うから、アルバム毎に聴く良さがあるんだと思う。だけど、それが今の時代に合うのかっていうと難しいと思う。
ずんば 難しいよね。
西村 それにシングルらしい曲はあんまり作ってないんだよね。「ドラマチック」とか「BREEEEZE GIRL」とかは今作ってない。これも、「作ってない」のか、「作れてない」のか、「作らない」のか。
ずんば 確かに。
西村 これはね、「作らない」っていうのは一個あるんじゃないのかなって。『C3』の時期に言ってたんだけど、昔は「強い曲出せ、強い曲出せ」と言われて、それに疲れてた部分があったと。『ポラリス -EP-』、『Grape -EP-』は4曲ずつのEPだけど、そこら辺から「束で聴かせる」意識が生まれたんじゃないのかなと。

編注 アイドルネッサンス『前髪がゆれる』も、最後の曲「前髪」は名曲であるが、束で聴かせる意識のある作品の一つだと考えている。

ずんば 自分が聴いてて好きなのは『C3』なんですよ。でもその中で、なにが好き? って言われても難しくて、全体を聴くとまとまってるなって思えるんだよね。1曲目の答えがラストにあるっていう構成が上手いなと思うんだよ。
西村 アルバムを通しての味わい深さとかっていうのは以前の作品よりは、今の作品のほうがあるんじゃないのかなって。あと、フレッシュなものを作りたいっていうのが一番先に来てると思う。
ずんば はいはい。
西村 1曲強い曲ドン! っていうよりは4曲で魅せるのが、当人にとってフレッシュだったっていう。プロデューサーが入ってなくて曲を作ることも、自分たちのフレッシュな気分が直接出せるからっていうのは一つあるのではないか。
ずんば なるほどね。
西村 逆に言うと、玉井健二さんがほとんどプロデューサーとして入ってるけど、玉井さんが来れば、シングル曲っぽくて強い曲出せるんじゃないか疑惑も俺の中にはある。今はそういう気分でないだけで。
 まあ、今はシングルっぽい曲出せば売れる時代でもないから、なんでもかんでもシングルにしていいわけでもないし。そもそも、キャッチーな曲はちゃんとあるから。
ずんば そうね。
西村 例えば、『天使だったじゃないか』だと、キャッチーな曲は「ランドリー」と「夕日、刺さる部屋」の2曲だと思う。ラジオとかでプロモーションする時に流す曲はほとんどこの2曲だった記憶があるし。それは、アルバムの中でも分かりやすくサビがあって聴きやすい曲はこの2曲であるっていう判断が自分たちでもできてるんだと思う。今はセルフプロデュースだけど、自己判断はできてるというか。
ずんば なるほどね。
西村 あと、3人になってからのBase Ball Bearは歌詞のよさもデカいかな。『二十九歳』『C2』を経て、具体さと詩的さを散りばめた歌詞の良さっていうのがある気がする。
ずんば 原点回帰してそうだけど、戻った自分は成長している自分なんだ、っていう雰囲気だよね。それ凄いよね。

【アルバムをどう勧めればいいか】

西村 ライトリスナーはアルバム単位で良さを理解できるかっていう疑問があって、俺がずんばにアルバムを全部勧めたのもそういう理由で、全部のアルバムを聴くから『天使だったじゃないか』の「良さ」が分かる。
ずんば なるほどね。
西村 『天使だったじゃないか』から入る難しさもちょっとあるのかなって思うんだよ。そこから入る人がいるかは分からないけど。
 創作の変遷の歴史を理解できるから、アルバムが二度三度美味しいみたいな。今まで発売してきたアルバムを線で聴いていくことで、それぞれのアルバムの良さをさらに理解できてさらにハマっていく。その感じがBase Ball Bearのアルバムを聴いていく面白さ。
ずんば 確かに、ベボベの初期にハマった作品で『(WHAT IS THE)LOVE & POP?』と『二十九歳』があるんだけど、共通した暗さみたいなものが好きだし、そこは繋がっていてどっちも更にハマっていく感じもあるもんね。
西村 それは小出祐介の変わっていくところと、変わらない一貫した作家性の凄さかもしれないけど。
ずんば 確かに。
西村 その流れでちょっと聴きたいんだけど、好きなアルバムはあるけれど、Base Ball Bearを知らない人に勧めるならどのアルバムを勧める?
ずんば 難しいなあ……。
西村 これが一番難しい問題。
ずんば グラデーションがあるから、お勧めする人にヒアリングしたいよね。今その状態だったら、これですねっていう処方箋として渡す感じになると思うんだよね。
西村 その人が好きなアーティスト、好きな曲、普段なに聴いてるかで決めるっていう感じ?
ずんば そうだね。あと、その人がどんな気分か。自分は沈んでるときに『LOVE&POP?』を聴いて、『二十九歳』で回復するみたいな聴き方をしてたんだけど、そういう勧め方もありかなって。
西村 うんうん。
ずんば 自分、(『LOVE&POP?』の)隠された曲好きです。
西村 「明日は明日の雨が降る」ね。サブスクないんだよね(笑)。
ずんば CDで聴いてくださいっていう(笑)。人に勧めるなら、『C2』か『C3』かな。全体を聴いてみて、自分がドライブしながらループして聴くってのもあるんだけど、『C2』と『C3』は飽きないんだよね。それはね1つデカいんですよ。『LOVE&POP?』ってループに向いてないんですよ(笑)。
西村 「明日は明日の雨が降る」聴いた後に「Stairway Generation」は確かにそうか。
ずんば 『C2』と『C3』はその辺、あんまり歌詞を読みこまない自分でもフラットにいつまでも聴いていられる。そういう意味でも良いのかなって。
西村 まあ、1枚だけっていうのは難しいよね。2枚くらい聴いてBase Ball Bearの多面性と一貫性が理解できる。
ずんば 最近よく聴くのだと『C2』かな。「ホーリーロンリーマウンテン」が好きなので。もちろん変動はします。4人時代、3人時代とかはないかな。初めて認識した時は3人だったので。
西村 俺は、『新呼吸』なのよ。『新呼吸』と『天使だったじゃないか』とか、『新呼吸』と『DIARY KEY』とか。
ずんば ははあ。
西村 コンセプトが好きっていうのはあるけど、『新呼吸』と『DIARY KEY』を比べるのも面白いかもしれない。『新呼吸』ほど背中を押してくれる感じは『DIARY KEY』にはないけど、自分の中で咀嚼しながら日々少しだけ前を向いていく感じは『DIARY KEY』にある。どっちもが響く日は無いしね。4人時代と3人時代を比較してどう感じるのか、とか。そういうのも面白いと思う。
ずんば 色んな人のおすすめを聞いてみたいね。

【今のBase Ball Bearの二本柱~ライブの良さ】

西村 ライブの良さはどこにあるのか。
ずんば はい。
西村 3人になった初期の方は、4人の時と比べて音少ないなって思うこともあったりしたんだけど。
ずんば 全然そんな感じしなかったな(笑)。
西村 直線的な比較はできないんだけど、イメージとして、昔よりは今の方が聴いていて違和感はないかな。こっちの耳も慣れてきたってのもあるかもしれないけど。
ずんば はいはい。
西村 アレンジの仕方を楽しむってところもあるし。
ずんば それ分かるな。字面で言うと4人から3人になるって、音が減ったってなるんだけど、全然そんなことなくて。「ホーリーロンリーマウンテン」とかやるじゃん? 曲として不完全じゃなくて、完全だなって感じがするんだよね。
西村 でもねえ、『C2』って、やっぱりさっきも言ったように3人で作ったような感じもあるから、3人の中で馴染みがあるのかなって気もするんだよね。
ずんば ああ。
西村 他の『C2』の曲、例えば、「「それって for 誰?」part.1」を武道館で聴いたときに、遜色ないなと思ったんだよね。小出祐介が仮に1人で2人分のギターを考えたとなると、そこまでリードとバッキングでハッキリとした違いを作らなかったっていう気もするし。リードギターのフレーズに馴染みがあるのかもしれないし。
ずんば なるほどね。
西村 あと、今のBase Ball Bearのライブは(アルバムだけじゃなくて)ライブも束で魅せる良さがある。
ずんば ああ、そうかもしれない。
西村 アルバムもそうだけど、ライブも今は構成が良くて、まとまりの良さが今のBase Ball Bearのライブの良さかな。
ずんば 良いっすよねえ。
西村 ここからはちょっとプロモーションに関わってくる話なんだけど。このライブの良さをどう伝えて、発信していくべきなのかを勝手に考えてるのよ。広く知ってほしいから。
ずんば はいはいはい。
西村 そうなると、武道館のライブBlu-rayを発売する前に、3曲を公開してたんだけど、この3曲で良かったのかなっていうのはあるんだよ。

編注 「DIARY KEY」、「ポラリス」、「Stairway Generation」の3曲がそれぞれYouTubeに公開された。

西村 束じゃないけど、2曲くらいをくっ付けて、1つの動画にして今のBase Ball Bearを宣伝した方が良かったんじゃないのかなって。
ずんば なるほどね(笑)。
西村 もっと細かく言うと、「「それって for 誰?」part.1」と「十字架You and I」の流れ。この流れが好きだったんだよ。
ずんば 好きだったんだ。
西村 だから、この2曲を1つの動画にして公開してほしかったのよ。3人だけど音数の減ったことを感じさせない「「それって for 誰?」part.1」と、3人のアレンジの格好良さを感じさせる「 十字架You and I」と、凄く良い流れだと思ったのよ。「十字架」のギターソロはめちゃくちゃカッコよかったし。
ずんば 良かったよねえ。
西村 束で魅せるライブをしているんだから、束で宣伝する方法もありなのかなって。
ずんば 確かに。
西村 そう考えるとベボベって、才能あるギタリストが二人いたんだよねえ。
ずんば そうだね。自分もちょっとライブの話していいですか?
西村 いいですよ。
ずんば 日比谷ノンフィクションⅩで「Endless Etude」をやった時に、その前のMCで「洋楽の話」をした後にしてたんだけど、自分はライブの時に初めて曲を聴いたんですよ。その時に、今までの自分がイメージするBase Ball Bearとは違う曲が流れてきたような、「新世界また開かれた……!」みたいなあの感じをリアルタイムで味わえたのはめっちゃ良かったんだよね。気持ちよかったんだよね。そこでルーパーっていうのも知って、そこの使い方とかもカッコよかった。
西村 俺もルーパーっていうのは知らなかったな。
ずんば 曲が始まるまでに時間がかかるじゃない? それも含めての「なにが始まるんだ?」ってワクワクがあって、「これがライブだ!」って実感したんだよね。
西村 「Endless Etude」は実験的で、ライブで魅せるカッコよさみたいなものがあったよね。
ずんば こういうのが「ライブ感」と呼ばれるものなのかもしれないと思った。
西村 「実験的」と、さっきも言った「フレッシュさ」っていうのは、Base Ball Bearの中では同じ意味なのかもしれないね。
ずんば 確かにね。実験的なことをしないとフレッシュさは保てないし。「挑戦的」だよね。

【3人の活動をどう広げていくか~MV】

西村 今の活動をどう広げていくか。その流れで話したいことは『天使だったじゃないか』はMVが作られなかったのよ。アルバムの曲が作られないのは結構異例というか。

編注 You Tube shortTik Tokに『天使だったじゃないか』全6曲のショート動画が、それぞれ違う内容で発売後に公開された。

西村 MVを作ってもなかなか観られないっていうのはあると思うんだけどね。
ずんば 費用対効果って言っていいのかな。
西村 そうそう。だから、最近だとリリックビデオっていうのを見かけたりするけど、それは費用対効果が良いのかもしれない。MVと普通に聴くことの中間みたいな。
ずんば 気分は味わえるよね。
西村 MV迷子っていうのは『C3』の時期かな? 小出祐介が言ってたことはあるのよ。自分たちが芝居したりするのは苦手だったか、気恥ずかしかったかって。で、3人になってからは基本的に「自分たちが演奏するMV」が増えていくんだよね。ただ、そうしていくと大喜利的になっていくというか。今回はこれ、今回はあれ、っていう風になっていくと、あんまり幅が広がらなかったっていうのはあると思うんだよ。
ずんば 確かにね。
西村 MVが作られなかったのには、そういう理由もあったんじゃないのかなと。
ずんば 新鮮さがなくなりそうっていうのもあるかもしれないね。
西村 「short hair」はモデルの本田翼さんがMVに出ていて、(発売後に本田翼さんの知名度が上がったという話を聞いたことがあるけど)その本田翼効果もあって今も聴く人が増えている。それはMVのプロモーションの効果だと思うんだよ。
ずんば まさしくプロモーションですよね。
西村 そういう意味では役者の方を使うというのは、プロモーションの1つではあると思う。けど、「short hair」が本田翼の印象が強くなりすぎるのも、また難しい。
ずんば 「short hair」って確か再生数が一番多いんだよね?
西村 多い。話は少しずれるけど、「初恋」のMVって人が一切出ないMVなのよ。ライブに行く人の一人称視点みたいなので、朝起きて、電車に乗って、ライブ会場行って、というMV。「初恋」って初めての恋が歌われた曲なわけじゃん? だから、その初めての恋のイメージは特定の女優さんとか、アニメーションのキャラクターの絵にしたくなかったのかなって。そういう理由で曖昧なイメージのMVが作られたんだろうと思うんだよ。
ずんば 確かに今聞いてると、MVに初恋の要素はないよね。
西村 そうそうそう。だから、誰しもが体験するであろう初恋っていうのを、特定のイメージをつけてしまうと、曲の持つ作品性とか、良さが失われてしまうって考えて作られたMVなんじゃないのかな。
ずんば そうか。なるほどね。読み方いいね(笑)。
西村 「初恋」の話でもう一個言いたいのが、日比谷ノンフィクションⅨか3回目の武道館でのライブだったと思うけど。そこで「初恋」を披露してた時に思ったのは、初恋っていうのは、Base Ball Bearというバンドに恋してる感覚なのかなとも思ったんだよ。
ずんば なるほどね。
西村 「僕の想像力なんて君は 水たまりをよけるように 飛び越えてしまう」なんて、まさにBase Ball Bearじゃん! っていう。
ずんば (笑)。
西村 だから、その時にMVのバンドを観に行く一人称視点の意味が分かったんだよ。あれは、観客一人一人が持つ、Base Ball Bearとかバンドへのイメージなんだろうなって。もちろん、アイドルとかもそうだと思うし。
ずんば なるほどねえ。確かに、ライブでときめく感じ、心揺さぶられる感じは分かるなあ。

【MVはどうあるべきか】

西村 Base Ball Bearのアルバムって作品主義的なわけじゃん? 作品ごとにコンセプトがあって、それを読み解く面白さがある。そして、そのアルバムという作品の中にある1曲1曲も作品という意味合いが強い。
ずんば 分かる分かる。
西村 そういうことを考えると、作品性が強い曲をMVに落とし込むっていうこと自体が難しいのかもしれない。尚更、本人たちが出ているだけではその作品性は伝わらないようも思うし。
 『C3』の「Flame」っていう曲はMVが作られているんだけど、それは本人たちは一切出てないMVとしての完成度は高いんだよ。
ずんば 観たことないなあ。
西村 昔はshort ver.しか観られなかった記憶もあるけど、今はフルで観ることができて。それが知られてないのか、再生数は低いけど。
ずんば なるほど(笑)。
西村 だけど、ああい作品だと、逆にMVとしての作品性が強くなりすぎてプロモーションにはならないのかもしれない。特定の女優さんにスポットライトを当てた作品じゃないから(そういった部分にスポットライトを当てないのが「Flame」のMVの良さでもある)。
 だから、話は逸れるけど、半分バンドメンバーが出て、もう半分はモデルさんや女優さんが出るMVっていうのは、MVの作品性とプロモーションのバランスを考えた結果なのかも。……なんか当たり前のこと言ってない?(笑)
ずんば まあまあまあ(笑)。
西村 だから、「short hair」にも当たり前だけどバンドメンバーが出る。「short hair」は作品性もあってプロモーションの効果もあるっていう、かなり高水準なMVなのかもしれない。そう考えると「不思議な夜」とか、『C2』のMVも作品性とプロモーションを担保しようとしている作品が多い気がする。
ずんば うんうん。
西村 今思い出したけど、「DIARY KEY」のMVは教会の中でメンバーが演奏してるMVだけど、曲が持つ死のイメージを伝えるために教会で演奏してるんじゃないかって言ってた人がいたわ。
ずんば へえ。凄いね(笑)。
西村 あの場所を選んだのは曲の作品性を表した結果だったんだ。だから、バンド演奏MVの中でも作品性を出そうとしてたんだ。ようやく分かった。
ずんば なるほど。
西村 そういう意味では『天使だったじゃないか』は、やっぱり難しかったのかもしれないね。
ずんば 難しいよね。
西村 詩的な歌詞だし。
ずんば 余分な情報になっちゃうよね。
西村 うん。「夕日、刺さる部屋」でMV作るなら、風景とかになっちゃうよね。景色を重ねてやるとか。バンド演奏だとしても、モチーフが難しそうだよね。
ずんば そうだね。
西村 だから、曲を広げるのは難しいんだよねえ。
ずんば 失礼すぎることかもしれないけど、色々考えられて作られてるんだなって(笑)。
西村 (笑)。

【曲やバンドを知ってもらうために~その他編】

西村 自分たちの向き不向きとかもあるだろうし。例えば、ベボベのメンバーがSNSでバズるのが上手いアーティストのようにSNSを使うとかはありえないわけじゃん? 「THE CUT」とか「「それって for 誰?」part.1」を作った人たちが、そんなSNSの使い方するわけない。
ずんば 「THE CUT」ねえ(笑)。
西村 そう考えると、SNSを沢山発信しない気持ちも分かるし、ファンもその姿勢を理解してると思うし。小出祐介がいつの間にか全く日常のこと呟かなくなったっていうのは体感で誰もが感じてると思うし(笑)。

自分たちをキャラクター化、戯画化(タレント化)するのを避けているのではないかという話。ネタっぽいことは積極的にはやらない。

西村 だから最近はラジオの出演のほうが多いのかな? でも、ラジオ向きだと思うんだよ。テレビで短い尺でどうのこうのというよりは、ラジオで長い尺の中で話す方がらしさは出るのかなって。
ずんば 昔、ラジオやってたよね。
西村 ベボベLOCKSのことかな。
ずんば それがめちゃめちゃ面白かったっていう噂だけは西村から聞いてる。ライブのトークとかおもしろいからさ、ベボベLOCKSを聞けなかった新しいファンのためにもぜひまたやってほしいなって(笑)。
西村 ファンクラブの方ではやってるんだけどね。落語のマクラみたいな感じが良いよね。
ずんば 確かにラジオっていう温度感がちょうど良さそう。自分もラジオで聞きたいなって感じがする。
西村 ラジオに関しては、今の若い人たちの状況も考えちゃう。
ずんば ほうほう。
西村 ベボベLOCKSをやっていた頃、俺は学生でラジオを聞いていたわけだけど、ラジオで掲げていたのは「AでもなくCでもなく、その狭間でモヤモヤしている、Bの生徒のためのクラス」というところなんだよね。
ずんば キャッチーだ(笑)。
西村 そういうところに惹かれたんだよ。今もだけど。じゃあ、今そういう少年少女がどんなきっかけで音楽に触れるのかなって、ふと思うんだよ。
ずんば 確かにね。
西村 ラジオから音楽を知るとか、ラジオってもうそういう場でもないのかなって。今のモヤモヤしている10代にBase Ball Bearを聴いてほしい気持ちはあるんだよ。キラキラした曲もあるし、屈折した曲もあるし。でも、今のモヤモヤを抱えた若い人が音楽をそもそも聴いているのかなって疑問もあるし、どこで触れるのかっていうのも考えていくと、難しいんだよなあ。
ずんば 繰り返すけど、どう勧めたらいいのかっていうのは難しいよね。特定の年代だとさらに。
西村 ラジオ番組が向いてるって話もしたけど、Base Ball Bearってプラットフォームになれる存在でもあると思うんだよね。だから、Base Ball Bearに限らず、そういう人たちに音楽を届けるのは難しくなるのかなって。結局、フェス向けに皆で騒げる・盛り上がる音楽を作るか、テレビに出るために戯画化・キャラクター化するかしかないのかなって。でも、ロックってそうだったかなって。
ずんば 確かに、なるほどね。
西村 もっと暗かったりとか、もっとマイノリティの存在だと思うから。ベボベのファンってそういう人多いだろうし。
ずんば 分かるなあ。
西村 Base Ball Bearのファンがそういう人たちだと仮定して、でも、そういう人だと新しいアルバム買って、聴いて、自分の中で消化(昇華)することも多いのかなって気もするんだよ。俺含めて(笑)。
ずんば はいはいはい(笑)。
西村 アルバムが良かった、曲が良かったから喧伝・宣伝しようっていう風にはならないんじゃないか。
ずんば 誰かに広めるんじゃなくてね。
西村 そうそう。自分の中で嚙み砕いて、飲み込んで、消化して、ライブに行って、ライブの感想も自分たちの中で消化する。そういうリスナーが増えていってると思う。だから、それは俺も反省すべきなのかもしれない。
ずんば (笑)
西村 だからもっと草の根運動をしていくしかないのかもしれない。
ずんば 頑張りましょう。
西村 最後にまとめに入ろうと思うんだけど。今のBase Ball Bearで注目すべきところは「こだわり」だと思う。
ずんば はい。
西村 3人だけの音を出すとか、3人だけでアレンジやっちゃうとか。その「こだわり」を愛するというか。昔、日比谷ノンフィクションⅣの有名なMCで「僕らは同期を入れません。なぜなら、僕らはロックバンドだからです」っていう名MCがあるけど、その精神は今も続いてると思うんだよ。
ずんば 確かに。武道館の時に4人でやってた上に今の3人がある、みたいなことは言ってたよね。
西村 日比谷ノンフィクションⅤをBDで観たときに、ショーとしては面白いけど、やっぱりサポートギターの人がいると直線的に比較してしまう感覚があったんだよね。
ずんば 湯浅さんのギターと?
西村 そう。だから今の3人でやっている方が馴染みやすい。湯浅将平のパートを一番よく弾けるのは小出祐介だけなんじゃないかって思う時もあるよ。あの2人でBase Ball Bearのギターサウンドは作ってきたんだなって。
ずんば なるほど。
西村 だから、橋本絵莉子との対談で音数について多少言及していたけど、腹くくってこだわってやってるんだろうなって。その潔さを愛するのでもいいんじゃないかなって。今のBase Ball Bearを聴けてない人は。

編注

小出:けど、僕は、うちが一人抜けた時に、チャットが二人でやっていることにすごい励まされましたよ。
橋本:ほんとですか? 良かった。
小出:ただじゃ転ばん感じというか。だって、うちは4から3だけど、そちらは3から2じゃん。最小編成からさらに最小編成になるから、どうするんだろう?って思ってたけど、そのまんまやっちゃってて。常識を覆された感じがしたし、二人のバンドマンとしての根性にびっくりしたという経験があったから。うちも一人抜けることになって、感覚的には片腕をもがれたような気持ちだったけど、その状態でどうやってまた生命体になっていくか?みたいなことをすごい考えたし。あと、サポートが入ってもらうとさ、オリジナルの演奏のニュアンスとは当然違うじゃない?
橋本:違うね。
小出:こっちは新しいミュージシャンの人と演奏するのが楽しいから、オリジナル通りやってくれともお願いしないし。でも「元のニュアンスを聴きたい」みたいな声もあったりするじゃん。それで「うーん」となっていた時があったんだけど、あっこに相談したら、「そんなん一生言われるから」って(笑)。
橋本:あはは。言われてる人たちだから。
小出:そうそう(笑)。
橋本:面白いね、あっこちゃん。
小出:って言われて、「そうだわ」って思った。それで開き直った。スリーピースになってからも5年経って、だいぶスリーピースっぽくなってきましたよ。

Base Ball Bear・小出祐介×橋本絵莉子 互いの近況から共通項のある新譜、知られざるルーツまで。とことん語り合う

西村 だから一番良さを知るにはライブに行くことで、ライブに来てもらいたいから最近は配信とかもしてないんだと思うのよ。
ずんば ああ。閉鎖的っちゃ閉鎖的かもしれないけど。ライブ良いもんね。
西村 配信しないのも「こだわり」だと思ってる。年始に「新春ベースボールベアーちゃん祭り2024」があって、チケット売り切れてて配信しなかったのは「そうなの?」とは思ったけど(笑)。
ずんば (笑)。
西村 だから、今度9月にある「SHIBUYA NONFICTION」は、これも即完だから配信になるかは見物です。こだわりならやらないけど、シリーズ化するなら配信して多くの人に観てもらった方がいいし。

編注 後日、U-NEXTで独占配信することが決定した。また、2023年に行われた日比谷ノンフィクションⅩも配信中。

西村 もちろん配信で聴くのと、生で聴くのは全然違うから、できればツアーとか回っているときに近くでライブやってたら行ってほしいよね。今のBase Ball Bearの良さを全身で体感してほしい。
ずんば 自分も日比谷ノンフィクションⅩで、暑い日中にライブが始まって、徐々に日が暮れてって、ステージがどんどん明るくなる。あのグラデーションというか、あのちょっとずつ変わる感じが日比谷だよなあって。あれも体験してよかったね。ライブハウスはライブハウスの空間の良さがあるし。ぎゅうぎゅうになる楽しさもあるし。
西村 そうだよね。
ずんば そう思いますね。
西村 はい。……以上です。
ずんば 以上?
西村 言いたいこと言えたんで終わりです。
ずんば そんなに唐突なの?(笑)
西村 (笑)。まあ、またアルバム全作品感想対談とかやるかもしれないし。
ずんば それも良いね。まだまだ語りたいです。
西村 ありがとうございました。
ずんば ありがとうございました。


構成:西村  対談日:2024年8月17日



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