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【コラム】暮らしに寄りそう仏教の言葉⑨「お蔭様(おかげさま)」

私たちの暮らしの中には、実はたくさんの仏教用語が溶け込んでいます。
その言葉たちの本来の意味を紐解いていきましょう。

今回ご紹介する言葉は「お蔭様(おかげさま)」です。お世話になった人に対して感謝の気持ちを表す言葉です。あなたが今、感謝を伝えたい人は、誰でしょうか。

「お蔭様で」は、感謝の心を表す日常語です。お蔭とは、神仏の助けや加護のことで、そこから、人から受ける恩恵や力添えをいうようになりました。

王舎城(おうしゃじょう)に住んでいたシンガーラカは、亡父の遺言によって、毎朝、東西南北と上下の六方(ろっぽう)に礼拝(らいはい)をしていましたが、意味は十分理解していませんでした。

お釈迦さまは彼に対して、こう教えました。

「東方を拝むときは、私を生み育ててくださった父母に感謝し、南方を拝むときは、私を導いてくださった師に感謝し、西方は妻や子に、北方は友人に、上方は沙門に、下方は目下のもののご苦労に感謝せよ。それが六方を礼拝する合掌(がっしょう)の意味である」

(中略)

仏教はすべてのものは相互に関係しあい、多くのものの力、お蔭、恵みを受けて生きていると説きます。
だから、当然、これらに感謝しましょう。

『くらしの仏教語豆事典(上)』(本願寺出版社/著:辻本敬順)より引用

王舎城…インドの都市名
沙門…バラモン教以外の出家修行者

<お坊さんから一言>

私という存在は、多くの人や生物、あらゆる事物に支えられて生きることができています。食事一つとっても、多くのいのちの「お蔭様」で、私たちは生きることができているのです。「お蔭様」により生かされているいのちですが、毎日生活していると、ついつい感謝の心を忘れてしまいがちです。「お蔭様」の心を忘れないように日々を過ごしていきたいものですね。

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